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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-2 冬期休暇-旅行先の不穏な空気

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 一方、ユールクスに国境付近に飛ばされてしまった4人はというと。一人の女性から説明を受けていた。


「だからぁ、この辺りで戦って欲しいのよー」


 その女性には足がなかった。その代わり蛇のような尾が下半身であった。どうやら、ユールクスと同じナーガのようだ。


「あたしは、見ているだけだからぁー。頑張ってよねー」


 そして、堂々と見物人宣言をしている。手伝う気は全く見られない。


「いや、ここに来るとは限らないよな」


 リオンが最もなことを言った。彼らがいる場所は海側の街から離れ、山裾沿いと言っていい国境だった。しかし、ナーガの女性がここに存在できるということは、この場はダンジョンということなのだろう。


「ダイジョーブ。マスター様の言うことに間違いはないからー」


 適当だった。ユールクスをマスターと呼ぶ彼女もダンジョンの住人だ。主であるユールクスの言葉は絶対だろう。彼の言葉に逆らおうだなんて思いもしない。


「来なかったらどうするつもりだ?」


 リオンはダンジョンマスターにもナーガの女性にも信頼はおけないと、もう一度同じこと確認する。ここに次元の悪魔が来るという確率の方が低いからだ。


「ダイジョーブ」


 ユールクスを信じて疑わない態度のナーガの女性。その姿に4人が苛立ちを顕にしたときに、ナーガの女性が東の方に顔を向けた。


「来るよ!」


 その言葉に4人も東の方向をみるが、ただの平野が広がっているだけで、何も見当たらない。

 と、その時地面から何かが出現した。4メル(メートル)はあろうかという大きな筋肉質の体躯。その皮膚は黒く青い血管のような物が黒い皮膚全体に這っている。その大きな躯体にはあるべきところに頭部がなかった。そう、武力型の次元の悪魔だった。

 その背後には1メル(メートル)ほどの小柄の体に手がある部分がコウモリのような翼が生えている黒い飛行型の次元の悪魔が飛んでいた。その飛行する悪魔にもあるべきところに頭部は見当たらなかった。


「こういうことですか」


 スーウェンが何かを納得したようだ。

 そう、ナーガの女性が言っていることに間違いは無かったということだ。

 ダンジョンマスターであるユールクスの言うとおりにこの場に待機をしていることで、どこからかの国境から侵入してきた『次元の悪魔』をダンジョンの中に引きずり込み、指定の場所に吐き出したのだ。

 流石、大陸最大のダンジョンを作り上げたダンジョンマスターというべきか。いや、アリスが神の威に歯向かうために、育てたユールクスだからこそ、というべきか。


 スーウェンがナーガの女性の意図に理解を示したところで、その横を一陣の風が吹き抜けた。


「あれを倒せばいいんだろ?」


 雷撃をまとったオルクスが突っ込んで行った。シド総帥が懸念していたとおり、オスクスは先陣を切って次元の悪魔に斬り込んで行ったのだ。


 オルクスは腰に佩いている剣を抜き、鈍色(にびいろ)の剣身が青い血管が這う黒い皮膚を捉えた。その刃が頭部がない左肩に食い込····いや、鈍色の剣身は黒い皮膚に食い込むことすなく、受け止められた。


 そして、太い右腕に殴りつけられ、ぶっ飛んでいくオルクス。


「え?オルクス?」


 グレイは信じられないものを見たという感じだ。その間にリオンが青黒い鞘から刀を抜く。が、その刀身はない。いや、無いように見えるほど青く透明な刀身だった。

 オルクスをふっとばした太い腕に対し、その刀を上段から思いっきり振るう。

 透明な刃は黒い皮膚を切り込んでいくが、途中でカツンとその刃が止まった。


 太い左腕がリオンを捉えようとしたが、リオンは途中まで切り込んだ腕を足蹴にし、刀の刀身を太い腕から抜き距離をとり、太い右腕の攻撃から身をかわした。


 鬼族であるリオンの力をもってしても腕すら切り落とすことができなかったのだ。


「これは思っていた以上に手強そうだ」


 リオンは衝撃で痺れる右腕を振るい、痺れを取ろうとしている。それはそうだろう。リオンよりレベルが高い『シェリー』のスキルで力を上乗せした拳でさえ一撃を入れることが適わなかったのだ。


 と、その時、黒い巨体の肩が爆ぜた。そして、その背後で翼を広げていた頭部のない黒い個体が爆散した。辺りに熱風が吹き荒れる。あまりにもの衝撃に肩が爆ぜた巨体はバランス崩し、膝を付く。


 グレイとリオンもその衝撃に地面に押し倒された。


 そして、グレイとリオンが驚きの視線を向ける。そこには己の身長ほどの杖を次元の悪魔に向けているスーウェンがいた。


 スーウェンの魔導術が強固な巨体の肉体を貫通して背後の飛行物体を捉え、その肉体を破壊したのだった。


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