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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-2 冬期休暇-旅行先の不穏な空気

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 フィーディス商会を後にした3人はそのまま西の街の外れまで足をすすめる。もちろんシェリーは傭兵団の本部のダンジョンの入り口を使おうとしているのだ。


「姉さん。姉さんはいつもあんな感じなの?」


 ルークは隣で歩いているシェリーに聞いた。自分には話の内容など、殆ど理解できなかった。ただ、いくら商品を購入している商会の船が帝国に襲われたからと言って、魔道具を渡すほどのことなのかと、シェリーに思わず聞いてしまったのだ。


「いつも?ルーちゃん。いつもはキョウさんはこのミレーテにはいないのよ?いつもは支配人さんが応対してくれるもの」


 普通は一個人に支配人が店内に出てきて応対することはない。しかし、それはルークの聞きたい答えではなかった。

 だが、この言葉でこの国に来てから起こった出来事は姉のシェリーの日常的なことだったのだろうとルークは思うことにした。それに、シェリーの隣にいたカイルの態度も変わらないことから、確信に繋がった。


 これでは確かにカイルから言われてしまうと内心ルークは苦虫を噛み潰す思いだった。


『君は知識を手に入れる為にどういう行動を起こしたのだ?』と。


 特に先程のことは、シェリーが別に情報を求めてはいなかったが、シェリーが渡した物の代わりに、相手は何かしらの情報を渡していたのだ。


 そして、取り引きを成立させた。


 こういうことかと、ルークは納得してしまった。人脈というものを築けば知りたい情報は集まってくるものだと。


 そのシェリーは一軒の建物の前で足を止める。三階建の石造りの建物だ。玄関扉の前に行き、ドアノッカーを手に取り、扉を叩く。


 暫し待つ。


 暫し待ってみる。


 ルークの前なので、もう少し待ってみる。


 一向に人が出てくる気配がないので、扉のノブを手に取りそのまま開ける。今回は扉を吹き飛ばさすに、勝手知る我が家の如く扉を開けたのだ。シェリーは大きく息を吸い声を出す。


「たのもうー!!」


 しかし、掛け声は変わらなかった。


 しばし待ってみると、ドタバタと足音が近づいてきた。


「朝っぱらから、でかい声でどこのどいつだ!」


 出てきたのは腰に剣を佩いた金狼獣人の青年だった。


「お犬様。シド総帥閣下はいらっしゃいますか?」


 それは以前シド総帥の息子と名乗った青年だった。彼の後ろには数人の傭兵の者たちが付き従っている。


「ぶっ!あ、やべっ」


 その一人が思わずシェリーの言葉に反応してしまい、口を思わず押さえていた。


「ああ゛?!誰だテメー!!」


 フードを深く被った姿では以前ここに来たシェリーだとわからないらしい。


「おい、アレって」

「やばいぞ、誰かリルラファール様を止めろよ」

「俺、また骸骨にやられるのはいやだぞ」


 いや、他の者達はフード被った人物が以前ここで暴れた金髪の少女と同一人物と認識しているようだ。


 金狼獣人の青年はズカズカとシェリーに近づいてくる。


「それで、シド総帥はいらっしゃいますか?」


 再度同じことをシェリーは尋ねる。しかし、金狼獣人の青年はシェリーのことが気に入らないのか


「お前のような奴に親父が会うわけないだろ!ああ゛?!」


 以前聞いたようなセリフだ。そして、金狼獣人のリルラファールは近づいていって、覗き込んでシェリーのフードの中の顔を見てしまった。


 目を瞠るリルラファール。しかし、次の瞬間、突如としてシェリーの前から消え去る。そのリルラファールは玄関ホールの壁に埋もれていた。


「カイルさん。お犬様は一応シド総帥閣下の息子さんなのですから、暴力は駄目です」


 リルラファールをぶっ飛ばしたのはシェリーの横でニコニコと笑っているカイルだったようだ。


「シェリーに近づくのは駄目だよね」


 カイルは当然の様に言い切った。

 シェリーの隣にいたルークは一体何が起こったのか理解できなかった。近づいてきたと思っていた狼獣人の青年が一瞬にして目の前から消え去ったのだ。

 カイルがSランクとは聞いていたが、その実力を見ることは今までなかったのだ。次元の違いというものを垣間見たような気がした。



「ったく。朝っぱらからうるせーなぁ」


 面倒くさそうな声が聞こえ、2階の階段から頭をバリバリと掻きながら上半身裸の眠そうな金髪の少年が降りてくる。


「シド総帥閣下。ギルドマスターは来ていないのですか?」


「ん?リュエルか?来てないぞ」


 寝癖の酷い金髪からはぴょこぴょこと動く三角の耳が見える。


「ってか、なんだ?フードなんて被って」


「色々あったのですよ」


 シェリーの神の祝福の影響を一言ですましたが、シドは別の事と思ったようだ。


「んー?あれか?おかしな情報が入ってきたんだが、ミゲルが戻って来たってやつか」


「それ、何処からの情報ですか?」


 ミゲルロディアの第三夫人はギラン共和国に戻ったはずだ。シドに情報を与える存在はラース公国に居ないはず。


「はははは。秘密だ。っということは、マジなのか」


 シドはシェリーの前に立つ。笑ってはいるがその目は真剣だった。



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