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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-2 冬期休暇-旅行先の不穏な空気

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 シェリーは約束のモノを渡すために、フィーディス商会の本店を尋ねた。以前訪ねたときはひと悶着あったが、今回は白髪の初老の男性に迎えられ、何事もなく店に入ることができた。

 髪は白いが年齢による白髪ではなく、彼らの種族は元から白髪であり、髪の隙間からは三角の耳が見えている。背後からは白く長い尻尾がゆらゆらと見えることから、白い猫獣人の種族だということが見て取れる。


「いらっしゃいませ。カークス様」


 ここの支配人である初老の男性にはこの首都のミレーテのフィーディス商会に来るたびに顔を合わせている。凛とした立ち姿には以前会ったやる気のなさそうな斑の猫獣人とは大違いだ。


「この度はどのようなものをご所望でしょうか?」


 一個人にしては大量の取り引きをしているシェリーを上客して扱っているだけだろう。

 しかし、フードを被り以前とは容姿が変わってしまった怪しい人物をシェリーと判断できるのは獣人族というものだからだろうか。


「以前、炎王とキョウさんから、マルス帝国から船が攻撃されていると聞きまして、いつもお世話になっているフィーディス商会さんにコレをお渡ししようと思いまして」


 そう言いながらシェリーは外套の中にある腰の鞄から片手で持てる程の足がついたゴブレットの様な形のモノを差し出した。ただ、そのゴブレットの中にはみっちりと赤い何かが詰まっている。

 遠目から見れば、大きめの盃にワインでも入っているかのようだ。


「これは?」


 初老の猫獣人の男性は不思議そうな顔をしながら赤い何が詰められたゴブレットを見ていたが、何かを思い出したかのようにシェリーに少し待つように言葉を残してこの場を去っていく。




「姉さん。ここっていつも来てくれるドースさんのお店?」


 ドースという人物はフィーディス商会の商品を各地に運んでいる人物の名であり、シェリーが家を留守にしている間に屋敷にいる偶発的産物に食われかけた人物の名でもある。


「そうよ」


 その言葉にルークは物珍しい物を見るように辺りを見渡している。ここは主に食料品を扱っている店舗で所狭しと食材が陳列されている。そして、その商品を買うために頻繁に人の出入りが見られた。

 その沢山の品物を買ったお客に対し、ドアを開けて見送っている人物は以前問題を起こした人ではなさそうだ。やはり、彼はあの時以外も問題を起こしたのだろう。


 しかし、とシェリーは改めて陳列された商品を一瞥する。相変わらず過去の記憶を刺激する商品の陳列の仕方だと視線を外し、人の流れを眺めるように視線を戻した。

 きっと、ここの理事である炎王の手が入っているため、この様な頭の奥をチリチリとさせる店構えになっているのだろうと、思っていると、見覚えのある色が視界の端に映った。


 白に黒の斑模に入り混じったような髪に、同じ様な三角の耳が見える目つきの悪い猫獣人の青年がこちらに向かって来ている。


「よう!」


 気軽い感じで声を掛けたのは、普段は西のエルトか炎国にいるはずのキョウだ。


「首都の方にいるなんて、キョウさん暇なのですか?」


「暇じゃない!わざわざ来てやったんだ」


 恐らくキョウの先見の能力でシェリーがここに来ることがわかっていたのだろう。


「で、それが魔武器か?」


 キョウがシェリーが持っている怪しいゴブレットを見て言った。魔武器···正確には武器ではないので、名称としては結界発生装置というべきものだろうか。


「ええ、船が襲われているとのことでしたので、運航中の船を覆う結界を張る魔道具になります」


「見た目はこんな感じだったが、結界?うーん?」


 キョウとしては何か不満のようだ。以前先見でみた形とは同じようだが、使用方法が違うようだ。


「この赤いモノは『アルテリカの火』を使っていまして、半径100メル(メートル)の結界を張れると聞いています。下の台座を半回転させると起動するそうですが、実際には使ってはいませんので、後で試しに広いところで使ってみてください。そして、コレをザックさんに忘れずに渡してください」


 シェリーは説明しながらゴブレットもどきを渡し、最後に念押しをしてユーフィアが書いた説明書をザックに渡すように言った。ザックとはキョウの三つ子の兄弟で炎国との間を航行している商船の船長をしている人物のことだ。


「ん。わかった。あと、これを危険極まりない公爵夫人に渡しておいてくれ」


 そう言って差し出してきたのは、スケートボードだった。長さは80セルメル(cm)程だろうか。足を置くところとボードの裏側に日本語で書かれた陣が刻まれていた。 


 シェリーが読み解くに、足場の固定と浮遊の陣が刻まれているようだ。


「船に侵入されたのですか?」


「ああ、船の足の速さを船本体ではなく、奴隷を使って特攻を仕掛けて来ることで補ってきた。が、これ以外は爆発して船にたどり着く前に海の藻屑になったから問題はなかった。しかし、俺たちも人の命を預かっている身だ。下手に出港できなくなっていたんだ。助かった」


 シェリーはユーフィアに作ってもらった魔道具を渡すだけに寄ったフィーディス商会だったが、思わぬ物と情報をもらって商会を後にするのだった。


_____________


 シェリーは知りませんが、実はフィーディス商会の倉庫の地下にダンジョンに繋がる扉があるのでした。支配人のおじぃちゃんに頼めばダンジョンに行けたかも?



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