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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-2 冬期休暇-旅行先の不穏な空気

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「あの、姉はいつもあのような感じなのでしょうか」


 ルークからは見慣れないシェリーの態度に思わず聞いてしまった。


「え?シェリーが笑う事はないけど?笑うとかわいいかったなぁ」


 グレイは滅多にというか、ルークのことでしか笑わないシェリーを間近で堪能して、ごきげんだ。


 そのグレイの言葉にスーウェンもオルクスもリオンも同意を示すように頷いている。その中にカイルの姿が無いことにルークは気がついた。


「あれ?カイルさんは?」


「カイルか?いつもシェリーに邪魔だと言われながら、シェリーが料理をしているところを手伝っているぞ」


 オルクスがキッチンの方に視線を向けて言う。グレイの言葉とオルクスの言葉を聞いてルークは本当に姉であるシェリーはカイルが言っていたように、番という存在を嫌っているのだと、信じられないと思った。


「そう言えば、さっき銀のムカつく野郎の話していたよな」


「あ、その話私も気になったのです」


 オルクスが、先程ルークがシェリーと暴君レイアルティス王とが戦っていたことを話していたのを聞いて、何か気になったようだ。それに対しスーウェンも話に乗ってきた。その後ろではリオンが誰のことだとグレイに聞いており、グレイがその説明をしている。


 ルークはあの姉の態度も気にせず、自分にも気軽に接してくれる彼らに、おおらかな人たちで良かったと安堵するのだった。


 彼らの本質はルークの前では隠されており、またしてもルークは都合の良いものを見せつけられているとも思いもしないことだった。






「それでルーちゃんは、どういうところに行きたい?」


 シェリーがルークの為にルークが好きなものをこれでもかと詰め込んで作った夕食を食べながら、シェリーはルークに尋ねた。


 それを聞かれたルークはしばし考える。以前ギラン共和国に行ったときは、剣の師であるライターが住んでいた首都ミレーテの西地区を少し見て回っただけなので、これと言って何処にと言われても困る。


「うーん?ライターさんに付いて行ったところしか知らないから、よくわからないよ」


「ミレーテには旨いメシ屋がいっぱいあるけど、シェリーのご飯に比べたらわざわざ行くほどのことじゃないしなぁ」


 ルークの前には綺麗に盛られた夕食があるが、ダイニングテーブルには何処の食べ放題の店だと言わんばかりの大皿に盛られた食事が所狭しと並べてある。そこから次々と取って行きながらオルクスが言うが、そこには『番である』という言葉が付け加えられるのだろう。


「あ、ミレーテに行くなら、もう一度ダンジョンに潜りたい。ヨーコは全然経験値をくれないから全くレベルが上がらないし」


 オルクスに負けじとグレイも大皿から自分の分を確保しながら、自分の希望を言っている。ルークの希望を聞いているのであって、グレイの希望を聞いているのではない。


「あの女あれだけやらせておいて、全然駄目とか抜かしやがるからな」


 リオンも黙々と食事をしていたが、陽子に対して溜まりに溜まった文句は出てくるようだ。


「ダンジョン?姉さん。そのダンジョンに行ってみたい。僕、ダンジョンって話に聞いただけで、行ったことない」


 その言葉にシェリーは困ったような顔をする。


「ルーちゃん。ギラン共和国のダンジョンは冒険者のBランク以上じゃないと潜れないの」


「そうなんだ」


 ルークはとても残念そうに言う。その姿にシェリーは慌てて陽子のダンジョンに連れて行こうかと思案したが、陽子がダンジョンを改装すると言っていたので、それは諦める。ならば。


「『深淵の庭園』の方に····それともユールクスと交渉した方が早い?」


 『王の嘆き』のダンジョンマスターに交渉する時点で普通ではない。


「ルーちゃん。腐乱死体と水妖生物のどちらが良い?」


 シェリーは恐ろしい選択をルークに迫った。それも真剣な目をして。


「姉さん、いきなり良くわからない質問されても答えられない」


 ルークはシェリーより常識人だった。姉が時々、意味がわからない言葉を話す事は知っているので、自分に理解できないことは極力聞くようにしているのだ。


「大陸最大のダンジョンはゾンビとかグールとかレイスとかがメインで、西の端にあるダンジョンは水妖生物がメインらしいの。西のダンジョンには裏道しか通ってないから知らないけれど、ダンジョンマスターがピーチクパーチク自慢していたから、程々に楽しめると思うの」


「ダンジョンマスター···ピーチクパーチク····?楽しむ?」


 ルークは余計にわからなくなってしまった。ダンジョンを語るには不適切な単語に頭の中にハテナが飛んでしまっている。


「シェリー。それなら『王の嘆き』のダンジョンの方がいいと思うよ。あそこの上層階は休憩(リゾート)施設もあることだし、ゆっくりできるだろうから」


 カイルは元々の旅行の目的だったシェリーに課せられた役目の事など忘れてゆっくり過ごしてもらおうと、ユールクスのダンジョンを勧めた。


休憩(リゾート)施設?」


 カイルからもダンジョンと呼ばれるものからは出てくるはずのない言葉にルークはダンジョンとは何かと考え込んでしまった。



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