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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-2 冬期休暇-旅行先の不穏な空気

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 カイルがルークと話し込んでいる頃、陽子のダンジョンでは問題が起こっていた。

 陽子は仁王立ちになり、地面に押し付けられた4人に向かって言葉を放つ。


「だから!落ち着けって陽子さんが言っているのがわからないの!」


 4人が無様に地面に押し付けている存在は、いずれも、少年少女という姿の者達だ。


「サッサっちが泣いているぐらいで、大の大人がオロオロ、イライラしない!」


 仁王立ちしている陽子の背後には三角座りをして、意気消沈のシェリーの姿があった。先程までシェリーはルークの元に帰ろうとして、陽子が必死で引き止めていたのだ。


『10代の反抗期は色々大変だからね。今、竜の兄ちゃんが切々と語っているから、大丈····多分大丈夫だよ』


 陽子には極寒の室内で話をしているカイルとルークの姿を確認することができるが、ルークが無事という確証は持つことはできなかった。


 陽子がシェリーを引き止めている間、目を腫らしたシェリーが、ポロポロと涙をこぼすものだから、この場は混乱をきたした。


「シェリー、何があった?」

「何かカイルに言われたのですか!」

「そこの強引なダンジョンマスターの所為か!」

「その女が悪いのか!」


 シェリーを引き止めていた陽子に殺気を向けたために、陽子の部下というべき四獣に動きを押さえられ地面に落ち着けられているのだ。正確には陽子に殺気を向けたのは2人だったが、何故か危険を判断され、全員の動きを押さえられてしまっている。


 そして、冒頭に戻るわけだが。


「鬼君。どこが、陽子さんが悪いことになるのかなぁ。陽子さんはササっちをここで預かっているだけだよ?よく聞きなさい!ササっちは、今愛しのルーク君に大嫌いと言われ「うっ!」意気消沈中なの!ササっちを慰めるならまだしも、陽子さんが悪いだなんて異議申し立てるよ!!」


 陽子はシェリーの傷に塩を塗りつけた。心友と自称しながらも酷いものだ。

 思わず、三角座りをしてうつむいているシェリーから声が漏れた。


「朱雀ちゃんと玄武ちゃん。狼くんとエルフの兄ちゃんは解放していいよ」


 どこにそんな力があるのだろうかと、不思議に思うほど華奢な体つきに赤い髪の着物の様な衣服を着た少女は、自分よりも遥かに体が大きなグレイの押さえつけていた頭から手を離し、陽子の元にテトテトと戻っていく。

 深い緑の髪の少女は、腰を下ろしていたスーウェンの背中から降り、立ち上がる。少女は古代中国で着られていた深衣のように見える衣服を纏っていた。どう見てもその身にはスーウェンが動けなくなるほどの体重があるとは思えない。深い緑の髪の少女はしずしずと陽子の元に向かっていく。


 体の自由が戻ったグレイとスーウェンは放たれた矢のようにシェリーの元に駆けつけた。


「なんであの二人は解放されるんだ!っていうか、このガキなんて力だ」


 オルクスは文句を言いつつ、押さえつけられた体を起こそうとしているも、全く動くことができないようだ。


「マスター様を悪くゆーからだよー。ふぁーぅ」


 白髪の少年が眠そうにあくびをしながら、答える。オルクスが必死にもがいているが、力の差は歴然のようだ。


「また、お前か!いい加減に離せ!」


「嫌だね。プライドだけはクソ高い鬼族が!マスター様を敬いやがれと言っているんだ!」


 リオンは己を押さえつけいる青い髪の少年と口喧嘩を始めている。その姿を見て陽子はため息を一つ吐く。


「はぁ。陽子さん、君たちの相手疲れてきたよ。本当に神様っていうのに文句言いたいね」


 陽子の背後では、今まで見たことのないシェリーの姿にオロオロとしながら、声を掛けている二人に、目の前には地面に押し付けられた二人が抵抗を試みるも、虚しい結果になっている姿が見える。

 彼らを本当に悪魔と戦えるまでにすることができるだろうかと、思ってしまった。


 遠い目をしている陽子が突然『わかったよー』と言葉を発した。すると、少し離れたところに光が現れ、その中からカイルが姿を現す。


「竜の兄ちゃん、お疲れー」


 陽子のその言葉にはっと顔を上げたシェリー。カイルの姿を確認するとすぐさま側に駆けつける。


「ルーちゃんは?」


 ルークの事で頭がいっぱいのシェリーはカイルにルークの無事を確認するべく詰め寄った。そのシェリーの姿にカイルはニコニコと答える。


「少し話をしてきただけだから、心配することはないよ」


 カイルはそう言っていてはいるが、やはりシェリーとしてはルークの無事を確認しておきたい。人族と竜人族とでは持っている力が大きく違うのだ。カイルの腕の軽い一振りでルークの命など簡単に吹き飛んでしまう。


 シェリーはくるりと身を反転して今度は陽子に向き合う。


「陽子さん今度は止めないでくださいね」


 シェリーは魔石を片手に転移をしようとするが、その魔石をもっている右手を深い緑の髪の少女に押さえられた。


「待つのじゃ。しばしで良い。待つのじゃ」


「玄武さん、何故です!」


 一刻も早くルークの姿を確認したいシェリーは玄武と呼んだ少女を睨みつける。


男子(おのこ)には考える時間が必要ぞ。姫の大事な男子(おのこ)はダンジョン内におる。その間は我らが守ると。その約束を違える事は、我ら四神にはありえぬことぞ」


 神との契約は絶対に守られる。少女はそう言って、シェリーの手を優しく撫でた。


__________


補足

 玄武ちゃんの力はシェリーでも振り払えないほど馬鹿力。



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