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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-2 冬期休暇-旅行先の不穏な空気

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「約束どおり来ましたよ」


 薄い青い瞳を細めながら、青年がニコリと微笑む。その姿に普通なら見惚れるところだが、彼らから発せられる気配にその微笑みすら恐怖を感じてしまう。初めて遭遇する存在にルークは呼吸すらままならない。


 しかし、シェリーはカイルの膝の上から降り、いつもどおり二人に向けて頭を下げる。


「ようこそお越しくださいました。ラフテリア様。ロビン様」


 見た目は人族だが、決して人族とは言えない二人に向かって頭を下げるシェリーにルークは目を見開く。命の危険しか感じない存在に対して何故頭を下げるのか。そもそも父親であるオリバーはこの様な者達を何故屋敷に入れたのか。


 自分が学園に行っていた半年の間に何が起こったのか。ルークは空間に満ちる狂気と愛してやまない姉が知らない人物に見えてしまい。頭の中が再びぐちゃぐちゃになっていた。 


「リアが朝から早く行こう行こうと言われてしまったんだけど、ほら、朝に訪問するとこっちじゃお昼だからね。約束の時間より早くなってしまうから、なだめるのに本当に大変だったんだよ」


 『約束』。彼らにとって約束とはとても大事な言葉だ。違えることは己の罪を重ねてしまうことに繋がると考えているのだ。


「そうですか」


 シェリーはそう答えながら、彼らにお茶とお菓子を差し出す。ルークは目の前に腰を下ろした脅威的な存在に身を固くし、チラチラと視線を向ける。気になるが視線を向けると恐ろしく視線を外すということを繰り返している。

 オリバーはというと彼らを屋敷に招き入れたあとからダイニングに姿を現していない。恐らくそのまま地下室に戻っていったのだろう。


「ねぇねぇ。この子ってあのときの子だよね」


 ラフテリアがルークの方に体をズズッと前のめりにして聞いてきた。この言い方だとラフテリアとルークは一度会っているようだ。


「ええ。そうです」


 シェリーもラフテリアの質問に肯定である返事を返したので、会ったことがあるようだが、ルークには全く記憶はない。


「あのときのちっちゃい赤ちゃんが、もうこんなに大きくなったんだね」


 どうやら、ルークが赤子のときに会った事があるようだ。それだとルークの記憶にないのも頷ける。頷けるが、彼らがどのような存在か全くわからない。今現在も部屋に満ちた何とも言えない狂気が存在し続けている。


「ね、ねえさん。このヒトたちは?」


 なんとか声を振り絞ってルークはシェリーに尋ねる。


「ルーちゃん。この方たちは初代聖女様と剣聖様よ」


 その言葉にルークは目の前の存在に再び視線を向ける。しかし、シェリーの言葉に疑問を覚えたのか首を傾げている。


「初代?聖女さま?初代聖女さまはエルフ族と習ったのですが?」


 ルークが言っているのは2代目の聖女であるスピリトゥーリのことだろう。やはり、一般的には2代目が初代と言われているようだ。


「あ!銀の2番目のこと?神様たちに殺された子だよね。やっぱり、神様との約束は守らないと駄目だよね」


 ラフテリアはルークの言葉に『アハハハ』と笑いながら答えている。彼女からすれば、聖女としての役目を果たさないのであれば、神々から殺されても文句は言えないと言いたいのだろう。例えその原因が番であるプラエフェクト将軍であったとしても。


「神様たちに殺された?」


 ルークは目の前の何とも言えない存在から言われた言葉が理解できないのか首を傾げている。シェリーはルークにこの話に関わらせたくないと思い、ロビンに声をかける。


「ロビン様、今からでもよろしいでしょうか?ルーちゃん。今日はもう疲れたでしょ?先に休んでね」


 シェリーはそう言って立ち上がる。しかし、シェリーの手はルークによって握られ、引き止められてしまった。


「姉さんは僕に何を隠しているの?」


 ルークは姉であるシェリーに困惑の目を向ける。今日だけで自分の姉が知らない人物に見えてしまっているのだ。オリバーからの話。番であるカイルの存在。そして、とどめが人外と思われれる二人の訪問。


「ふふふ。かわいい弟くんはお姉ちゃんを取られてたと思っているのかなぁ?でも、つがいだから仕方がないよ?」


 ラフテリアは楽しそうに笑いながら言う。ラフテリアには姉に番ができて弟がだだをこねているように見えているのだろうか。ラフテリアの思考は少しズレている。いや、かなりズレている。

 だけど、そのまま楽しそうに言葉を紡ぐ。


「だって、6番目は特別な聖女だもの。わたしのロビンを人にしてくれたもの。それは神様が特別だって、つがいをたくさん用意してくれるよね。つがいといれば幸せなの。ここに居ない4人は6番目の為に頑張っているんだよ。金色の神様が楽しそうにしているから、頑張っているんだねぇ」


 相変わらず要領を得ない話し方だ。きっと思った事が口から出ているのだろう。そして、その口から神の存在が出てきた。金色の神とは、あの白き神とは違う存在なのだろう。


「弟くん。6番目は神様との約束を果たすために頑張っているの。だから、引き止めるのは駄目」


 ラフテリアはルークが握っているシェリーの手を指して言った。




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