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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影

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 我関せずのシェリー。シェリーをニコニコと眺めるカイル。頭を抱えている陽子。突然呼び出され、お茶を飲んでいる炎王。

 とても異様な空間だ。


 そこに割入ってくるものがいた。

 リビングの扉が勢いよく開け放たれ、入って来るものがいる。


「人が寝ているところを叩き起こしたのだ誰だね!」


 オリバーだった。別にオリバーを叩き起こしたわけじゃないが、無理やり結界を通り抜けてくれば、オリバーにとっては叩き起こされたことに等しいのだ。


 そのオリバーの登場に頭を抱え項垂れていた陽子はシャキッと立ち上がり、入り口の方に向き、体を90度に折り曲げた。


「すみませんでした!!」


 陽子はオリバーに素直に謝った。いや、ここで謝っておかないとあとが怖いからだ。


「引き込んだのはヨーコで侵入者は炎王か」


 オリバーは陽子の奥にいる炎王に視線を向けた。


「いや、侵入したくて侵入したわけじゃない。死ぬかと思ったし」


 そこはきちんと否定しておかないといけない。そこで、ふと炎王が口にした。


「陽子さん。彼に頼んだ方が一番早いんじゃないのか?」


 炎王は機嫌の悪いオリバーに視線を向けて言った。その言葉に陽子はビクリと肩を揺らす。


「え····エンエン。陽子さんに悪魔より恐ろしい魔導師様に頼めと?陽子さんを殺す気?」


 悪魔より恐ろしい。間違いではないだろうが、本人の目の前で言うのはどうかと思う。


「ほう。ヨーコ、俺を叩き起こしたばかりか、頼み事をしようというのか?」


 相当、オリバーの機嫌が悪いようだ。目を細め陽子を見る。美人と言っていいオリバーが凄むと迫力がありすぎる。


「ひっ!」


 陽子は思わずシェリーとカイルの後ろに素早く移動し、オリバーからの盾とした。

 シェリーはため息を吐き、オリバーに座るように促す。


「オリバー。珈琲がいるなら入れるけど?」


 シェリーは陽子が座っていた向かい側のソファを指し示す。シェリーの言葉にオリバーは無言で座るが、イライラした感じが無くなったわけではない。

 シェリーは立ち上がり、珈琲を入れて戻って来るまで、部屋の空気は異様だった。呼び出された炎王は帰っていいだろうかと思う程に。


 珈琲を飲んで落ち着いたオリバーに、シェリーは陽子の代わりに話をする。陽子は未だにシェリーとカイルの座っているソファの影に隠れてしまっている。


「ということで、悪魔との戦いを再現しようと陽子さんが言い出したの」


「ササっち!それ陽子さんが全面的に悪い事になっちゃうよ!」


 シェリーの後ろの方から抗議の声が聞こえてくるが、シェリーはそれを無視をしてオリバーに視線を向ける。

 オリバーはというと、足を組んで考えるように目を瞑っている。····寝ている?

 そして、何かしらの答えが出たのかシェリーと炎王を見て口を開いた。


「面白い。戦いの再現とは面白い考え方だ」


 どうやら、オリバーの気を引くことはできたようだ。


「炎王。その魔術を使ってみてくれたまえ。そうだな、炎王が強者と思った者との戦いを写してくれたまえ」


 その言葉に炎王は少し考えた後に呪を唱える。


「『空中楼閣の幻夢』」


 室内だったはずが、いつの間にか崩れた瓦礫が散乱し、空には2つの月が浮かんでいる。その建物の上には一人の人物が立っているが、月光を背にしているので何者かがわからない。

 そんな風景の中、シェリー達はソファに座っている。異様な空間ができあがっていた。


「シェリー」


 オリバーに名を呼ばれたシェリーもスキルを使う。


「『夢の残像』」


 シェリーがスキルを使った瞬間にただの映像を空間に写したものに命が吹き込まれたかのように、風が頬を撫ぜ、乾いた空気が鼻の奥を抜け、ザワザワと体の奥を締め付ける感覚が生まれた。


「ほう、これは面白い」


 オリバーがそう言った瞬間に情景が変化した。重苦しい空気に包まれたような感覚。肌を嘗めるように恐怖、憎悪、死、そんなモノがまとわりついたような感覚に陥った。


 街だ。どこの街かはわからないが、人が見当たらない無人の街。そこに異形なモノが立っていた。姿は人の形をしている。しかし、肌も髪も目も黒く。その黒い肌に異様に目立つのは浮き出た青白い血管のようなモノが体中に走っている。そして、頭から生えた歪んだ赤黒い角。

 これが、完全体の悪魔か。


「もう、よい。解除したまえ」


 そのオリバーの言葉にシェリーと炎王は術を解いた。


「いやー!気持ち悪い!陽子さん。久しぶりだけど。この感覚は耐えられないよー!!」


 シェリーの後ろで陽子が騒ぎだした。炎王も腕をさすっていることから、今回は炎王も陽子が言っていた嫌悪感というものを感じたのだろう。


「中々、興味深い。同じように情景を写す術を合わせると、ここまで再現できるとは、これはどこまでできるか検証するのもいいだろう」


 オリバーの機嫌は完全に戻り、研究者の目線で考えことを始めた。協力を得られるようだ。



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