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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影

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リビング side


「元々は竜の兄ちゃんが彼らに怒って、陽子さんが鍛えているんだけどね。全く駄目ってことはないよ。ただ、真剣味が足りない。陽子さんが言っている意味を理解してくれない。陽子さんの言葉を都合のいいように解釈してくる。お手上げだね」


 陽子は呆れたように首を横に振り愚痴る。その姿に炎王は陽子を一瞥して、カイルの方に視線を向ける。


「何があったんだ?」


「何があったというわけではないが、超越者の威圧に耐えきれずに動けなくなる奴らに、俺のシェリーの側にいて欲しくないだけだ」


 カイルは独占欲丸出しの答えを言った。しかし、足手まといが番の側に居てほしくないという本心でもあった。


「超越者の威圧?それは君のことか?」


 超越者という存在はそこまで多くないが、一番身近な存在といえばカイルということになる。しかし、カイルは首を横に振る。


「俺は彼らの前で本気になったことなどない。彼らを威圧したのは猛将プラエフェクト将軍だ」


「は?その名前は歴史上の人物のだろ?いや、佐々木さんか。天津の時と同じか」


 流石の炎王もありえない名前に驚きはしたものの、直ぐにシェリーが何かしたのだろうと理解した。

 そして、ため息を吐きながら天井を見上げる。


「猛将プラエフェクト将軍か。歴史で記されたものしか知らないから、俺は何とも言えないな。しかし、言うことを聞かないと言われても、俺にはリオンに小言を言うぐらいしか出来ないぞ。あとはガナートの倅ぐらいか」


 炎王の言うことは最もだ。陽子の言うこと聞かないからと言って、言葉をかけるとしても血族であるリオンと豹獣人をまとめる者としてオルクスぐらいだと。それ以外の者達に口出しをすることは、種族という枠組みを超えることとなり、問題となるのだ。


「違う。違う。そうじゃなくて、やる気を出させようと思っているんだよ」


「やる気?無いのか?」


「うーん?無いわけじゃないんだろうけど、中途半端に強いってことが邪魔をしているんだと陽子さんは思うんだよ」


「ん?俺は愚痴を聞かされるために呼ばれたのか?」


 炎王もまた陽子の愚痴をよく聞かされているのだろう。陽子の困っているという愚痴を。


「いやいや違うよ。エンエンの力を借りようと思ってね。えーっと何だっけ?」


 陽子は首を捻り何かを思い出そうとしているが、言葉が出てこないようだ。


「『空中楼閣の幻夢』の魔術を使ってほしいのです」


 そこにシェリーが炎王にお茶と茶菓子を差し出して答えた。


「は?なんで俺の魔術を知っているんだ?」

「あ、それ!それ!」


 炎王は驚き、陽子はうんうんと頷いている。シェリーは陽子の前にもお茶と茶菓子を置いて離れようとしたところで、再びカイルに摑まってしまった。そう、カイルの膝の上に。


「はぁ。お互いステータスを見れますよね」


 シェリーは定位置に戻ってしまったことにため息を吐き、炎王に何を言っているんだという視線を投げかける。それに対し炎王は『あっ!』と声を上げた。


「それで幻影の魔術で何をするつもりだ?」


 とシェリーに尋ねる。


「炎王は完全体の悪魔と戦ったと言っていましたので、その再現をお願いしたいのです」


「え?ごめん。それをする意味が全くわからない。陽子さんはやる気を出させたいのだろう?それなら、佐々木さんが猛将プラエフェクト将軍を喚び出した方がいいよな」


 炎王は幻影の魔術で悪魔との戦いを再現する意味がわからないといい、強者と戦う方が意味があるのではと言う。それも一理ある。しかし


「猛将プラエフェクト将軍には断られましたから無理ですよ」


「で、竜の兄ちゃんと話し合って悪魔と戦えば危機感というか真剣味が出てくるんじゃないかと結論になったんだけど、悪魔ってその辺に転がっていないから、幻影で創り出そうとしてるんだよ」


 シェリーは将軍に断られたことを炎王にいい、陽子は炎王に力を貸してほしい理由を説明した。


「だから、なんで悪魔なんだ?」


 本当に意味がわからないらしい。


「だって悪魔を見たら嫌悪感が沸き起こるよね」


「は?嫌悪感?」


 炎王は首を傾げている。陽子の言っている事が理解できないようだ。


「ササっち!エンエンもササっちと一緒だった!どうしよう?」


「そもそもだが、悪魔と戦ったと言っても魔眼が恐ろしいと聞いていたから、さっさと目潰しをしたら、全身に目が現れてキモくて、全力で燃やし尽くした。だから、その再現と言われても困る」


 どうやら瞬殺だったようだ。陽子は行き詰まってしまったと項垂れてしまった。炎王はこんなことで呼ばれたのかと呆れた顔をしながらお茶と茶菓子を口にしている。その二人の姿をシェリーは我関せずと冷めた紅茶を飲み干す。


 三人寄れば文殊の知恵という言葉はあるものの転生者が3人がいてもこればかりは無理なようだ。


 いや、やる気があるのが一人だけという問題だった。


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