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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影

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「なに?なに?方法って!」


 陽子は前のめりになってシェリーに聞いてくる。


「ただ、問題がありまして、私にはその次元の悪魔に対する嫌悪感というものがわかりません。あの中にある核は気持ち悪いとは思いましたが、次元の悪魔自身に何か感情を持つことはありませんでした」


「え?そうなの?」

「えー!!陽子さん悪魔を見た時ガクガクブルブルだったよ?」


 今まで口を挟まずに二人の会話を聞いていたカイルと陽子の驚きの声が重なる。


「じゃ、それはいいから、どういう方法?」


「一つは私のスキル『夢の残像』。ただ、これは情景を再現するだけです。ですが、第3者の介入により神らしき物体を威圧もそのまま再現できました」


 神らしき物体。勿論それはシェリー曰く謎の生命体であり、この世界では白き神と言われる存在だ。


「もう一つ、炎王の魔術『空中楼閣の幻夢』。これも情景を再現するものです」


「ん?ササっち、同じ術を2つ使うって事?」


「確証はないのですが、炎王は完全体の悪魔と戦ったことがあると言っていましたので、その情景は再現できると思います。その魔術の干渉を受ければ私のスキルで嫌悪感でしたか?再現できるのではと考えたのですが?」


 2つは同じようなスキルと魔術だ。互いが互いに干渉しあえば、相乗効果が生まれ、より現実味を帯びた情景ができるのではとシェリーは考えたのだ。しかし、考えただけなので、正に絵に描いた餅。現実味のない話だ。


「できるかわからないけど、やってみようってことだね!オーケー!じゃ、緊急連絡『エンエン!至急陽子さんのところに転移をお願いします!』」


 陽子は何らかの方法で炎王に連絡をとっているようだ。


「『····えー?今すぐだよ?』――――『急ぎ、急ぎ』」


 どうやら、連絡を取っている炎王は渋っているようだ。それはそうだろう。いきなり連絡をしてきて、来いと言われても『はい、そうですか』とはならない。


「『え?何の用って?陽子さんがすっごく困っているから、エンエンの力が必要なんだよ』····来てくれるって!ササっち!」


 そう言って陽子は立ち上がって、リビングの周りに何も物が置いていない場所まで移動する。

 しかし、陽子のあの言い方だと、とても緊急性のある用だと勘違いしてしまう言い方だったのではないのだろうか。

 この件に関して緊急性があるかと問われれば全くない。シェリーは炎王が用件の内容を聞いて、きっと陽子は怒られるのだろうと思っていると、陽子の側に転移の陣が展開された。


「あっ」


 思わずシェリーの声が漏れる。それは駄目だと。

 その時、転移陣が歪みキャンセリングされたように、たち消えようとしたところで、空間が割れ黒髪の人物が転がり出てきた。


「あっぶねぇー。あ?ってここ佐々木さんの家じゃねぇーか!」


 転がり出ていた人物が周りを見渡し、シェリーの姿を捉え、文句を言っている。


「およ?エンエン。何かあった?」


 空間を割るように出てきた人物は勿論、先程陽子と連絡を取っていた炎王である。その炎王の姿に陽子は不思議そうな顔をして尋ねた。


「陽子さん!この家は結界が張ってあるから、転移は出来ないと前に言っていたよな!さっき本当に死ぬかと思ったぞ!」


 この屋敷の全体にオリバーが作った結界が張り巡らせてある。これはオリバーが許可を出していない者の侵入を拒むものだ。その結界を炎王は転移で侵入して来ようとしたところで、転移陣ごと跳ね返されそうになり、力技で結界を通り抜け滑り込んできたのだ。


 炎王に文句を言われた陽子はあっと声を漏らし軽い感じで謝る。


「ごめん。ごめん。忘れてたよ」


 全く謝っているように聞こえない。


「で。用件はなんだ?くだらないことだったら怒るぞ」


「炎王。お茶を入れるので座ってください」


 イライラした感じで言葉を放つ炎王にシェリーは座るように促し、カイルの膝の上から立ち上がり、キッチンに向かって行った。



リビング side


 炎王はふと周りを見渡して首を傾げる。そして、一人掛けのソファに腰を下ろしながら、カイルに尋ねた。


「なぁ、リオンはどこに行ったんだ?」


 最もな質問だ。番であるシェリーの側に己の血族であるリオンの姿が見えないとすれば、何かあったのではと思うのは当然のこと。

 その炎王の質問に対し、カイルはため息を吐きながら答える。


「はぁ、彼女のダンジョンで鍛えてもらっているが、あまり良くないらしい」


 カイルの言葉に『ああ』と声を漏らし、陽子を見る炎王。


「もしかして、その事で呼ばれた?」


「そうだよ。陽子さん、困っているんだよ」


「で、具体的に何が駄目なんだ?」


 炎王はこのようなことになることを、予想していたのだろう。己が鍛えたリオンをかばう言葉もなく陽子の行動に理解を示したのだった。

 

 

___________________


補足

 炎王と陽子の連絡は念話で行われています。

 そして、炎王は場所ではなく、人の魔力を目印にして転移をしています。外交官の青鳥族のメリナの横に転移陣が現れたり、今回陽子の隣に転移陣が現れたのは、その人物を目印にしていたからです。



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