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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影

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愚者の常闇ダンジョン Side


「帰りたい!シェリーに会いたい!」


 駄々をこねるように冷たい地面に寝そべって、文句を言っているのは、豹獣人のオルクスである。


「えー?今のままじゃ陽子さんは及第点をあげられないよ?」


 陽子はそんなオルクスを呆れたように見下ろしている。


「シェリーのご飯が食べたい。ここの出されるご飯も美味しいけど、シェリーのご飯が食べたい」


 そう言いながら、陽子とオルクスがいる空間に入ってきたのは、疲れたようにふらふらしている金狼獣人のグレイだった。


「基本的には陽子さんが出すごはんとササっちの料理も変わらないよ?ササっちはルークくん好みの味付けだから、多少は違うけどね」


 陽子もシェリーと同じく魂の故郷の料理を好んでいた。しかし、ダンジョンマスターに食事が必要かと問われれば必要ではない。必要ではないが、炎王から簡単に以前食べていた物が手に入ると分かれば食べたいという衝動が勝ってしまう。


「違う。全然違う。シェリーに会いたい。シェリーのご飯が食べたい」


 そんな事を言いながら、オルクスは冷たい地面の上を転がりだした。


「はぁ。流石にここまでとなると頭が痛くなってきましたよ」


 次にエルフ族のスーウェンが陽子たちがいる空間にやってきた。頭が本当に痛いのだろうか。片手で頭を押さえながら3人がいるところに近づいてきた。


「えー?最初は何事もなくやってのけたじゃない?陽子さん、最初と何も変えていないよ?」


 陽子は3人に何かをやらせていたようだ。いや、ここにリオンがいないということは、リオンも何かしら陽子に言われてやらされているのだろう。


4半刻(30分)で5階層をクリアしろって無理ですよ。そんなに集中力がもちません」


「なんだ?スーウェンは5階層だったのか?俺は13階層だぞ。4半刻(30分)っていうのが無茶だよな」


 グレイがスーウェンの言葉に同意を示す。


「俺は8階層だったー。4半刻(30分)かからずにクリアした!」


 ぐだぐだ言っていたオルクスはむくりと起き上がり、自慢げに言うが


「だから、あれを攻略したと陽子さんは認めないよ!」


 陽子が認められない攻略の仕方でオルクスは階層をクリアして一番に戻って来たようだ。


「だからね。君たちの苦手とするものを陽子さんは敢えて突き付けているんだよ?豹の兄ちゃんは直ぐに突っ走ってしまうから、それができない階層だったのに、なんで天井を足場にして行くのかなぁ?」


「え?真っ直ぐ行けば一番早いだろう?」


 オルクスは早ければいいと思っているようだ。


「はぁ。狼くんの行動には問題ないけど、自分の能力の全てを出し切っていないよね?なんで出し惜しみみたいにしているのか、陽子さん聞きたいのだけど?」


「····???」


 グレイは首を傾げて陽子の言葉の意味を考えているようだが、思い当たることがないようだ。


「エルフの兄ちゃん。魔術以外の戦いかたも必要なんだよ?まずは瞬発力を鍛えようとしたのに、なんで魔術で全部たたき落としちゃうのかなぁ?」


「非効率ですよね。最初のときは属性攻撃が効かないから、自力で避けましたけど、無属性で攻撃が通るなら、使いますよ」


 どうやら、陽子はスーウェンに魔術を頼らない戦い方をさせたかったのだが、スーウェンは魔術と魔導術でどうにか解決をしてしまったようだ。


「ああもう!やる気あるの?陽子さん知らないよ?ササっちは来週からルークくんと旅行に行く予定をたててるよ。このままだと置いていかれちゃうよね」


「なんだって!!」

「何でそんなことになっているんだ?」

「それなら、さっさと此処から出してください!」

「置いていくなんて許されないよな」


 !!!!


「鬼くんやっときたの?遅いよ。遅すぎる。その突拍子もないことが起きると思考を停止させるクセはやめたほうがいいよ」


「ここが異常すぎるんだ」


 鬼族のリオンが陽子たちのいる空間にやっとたどり着いた。


「で、さっきの話は本当なのか?」


 リオンが近づいていき陽子を見下しなが言った。その時、リオンと陽子の間に飛び出してくる者がいた。


『マスター様に近づくな!!』


 海の様な青い髪に金色の目を持つ、見た目は人族のような少年が飛び出してきたのだ。


『プライドだけは高い鬼族が!!もっとへりくだってマスター様を敬いやがれ!!』


 恐らく陽子のダンジョンの配下の者なのだろう。このダンジョンで一番上位あたるマスターを守る行為なのだろうが、リオンの悪口も含まれていた。


「青龍くん。青龍くんにかばわれなくても、陽子さんはレベル100ちょっとぐらいじゃ傷つかないよ?」


『しかしのぅ。マスターさま。マスターさまが直々にこの者たちを鍛える必要はあるのかのぅ?』


 深い緑の髪に黄色い目を持った、これも見た目は人族にみえる少女が陽子の背後から現れた。


「玄武ちゃん。これはササっちが困っていたことからね!陽子さんはササっちを支えてあげるのが、本当の心友だと思うんだよ」


 どうやら、陽子の配下の者たちは、ダンジョンマスターである陽子が直々に彼等をかまっていることが不満のようだ。


『『これからは我ら四獣が鍛えてやろう』ぞ』


 見た目が幼い人族に見える少年と少女から言われ、シェリーのツガイである彼等は呆然としていた。

 こんな子供に何を教えられる事があるのかと。


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