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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影

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 広報部のミルティーと呼ばれた女性に連れていかれたところは、王城内の食堂だった。夕食にはまだ早いように思えるが、王城で働く人とかぶらないように早目の夕食を取らされているのだろうか。


 シェリーの目にルークの姿が映る。その姿を見つけたシェリーは前を進むミルティーを追い越し、ルークの側に····側にいた緑の髪の少年の髪を持ち、ルークから引き離す。


「いつぞやかの少年。また私が目を離した隙にルーちゃんを虐めているの?」


 年はルークと変わらないように思える。緑の髪に獣相はみられないが、どこかでみた顔つきである。


「え?い、いじめ」


 少年は意味がわからないと言わんばかりに困惑している。


「姉さん。メルス君とは今日会ったばかりだから、いじめられたとかではないよ?」


 ルークが慌ててシェリーの腕を掴んでメルスと呼んだ少年からシェリーを引き剥がそうとする。


「あら?ルーちゃん忘れてしまったの?西区で買い物中に私が目を離した隙に髪を引っ張られて固い石畳に頭をぶつけたことを。オーウィルディア様の邪魔が入らなければ、生きていることを後悔させることができたのに」


 何気にシェリーは恐ろしいことを言っている。ルークに何かあればそれが子供でも容赦はしないと。


 シェリーの言葉に二人の少年がハッと息を呑んでお互いを見る。本人たちはお互いを認識していなかったが、どうらや以前に会ったことがあったようだ。


「何をしているのですか!」


 少年の髪を掴んだシェリーの手を払い除け、少年をかばうものが現れた。緑の髪に金色の目をシェリーに向けているのは近衛騎士団長のレイモンド・スラーヴァルだ。


「弟が何か?」


 どうやら、少年はレイモンドの弟だったようだ。


「近衛騎士団長さん。以前、私のルーちゃんの髪を引っ張って地面に叩きつけた少年がルーちゃんの側にいたので、またルーを泣かせているのかと思ったのです」


 その言葉にレイモンドは弟を見る。視線を向けられた少年は視線を合わせないように、下を向いている。


「メルス、今のは本当のことですか?」


 レイモンドは弟に問いかける。少年は下を向いたまま口を尖らせ答えた。


「ずーっと前の話だ。今日のことじゃない」


 随分前の話だから別にいいだろうという態度だ。しかし、その言葉を聞いたレイモンドは弟を殴った。


「メルス!スラーヴァルの者として、その態度はいただけません!」


 何だか怒っている論点が違うような気がする。しかし、保護者が出てきたのなら、シェリーは保護者に叱ってもらう方がいいだろうと拳を収める。


「5年前の事です。それ程前ではありません」


 シェリーからすれば昨日の事のように覚えているのかも知れないが、5年の月日というのは互いが互いを忘れるほどの年月でもあるのだ。


「近衛騎士団長さん。ついでにクソ狐に伝言をお願いできますか?」


 シェリーはレイモンドがこの場に居ることをいいことに、イーリスクロムの伝言をお願いしようとしていた。


「陛下への伝言ですか?」


 レイモンドはシェリーの言葉を正確に理解していた。近衛騎士団長という立場である彼が『クソ狐』という言葉を国王陛下であるイーリスクロムのことを指しているいうことに。それもシェリーに言葉の訂正をさせることもない。

 もしかしたらレイモンドも内心思っていることなのかもしれない。普通なら護衛を連れていくべき王が一人でふらふらとしていることに、思うことがあるのだろう。


 近衛である我々の立場をわかっているのかと。


「ええ。伝言です。一つは」


 シェリーはイーリスクロムの一筆とサインが書かれた紙をレイモンドに見せる。


「クソ狐のサインが全く役に立たないと。国王の癖に偽造だと言われるし、クロードさんの文字の方が効果あるではないですか。クソ狐より上の立場の人のサインで書き直してくださいと言っておいてください」


 イーリスクロムは国王なので実質彼より上の立場の者はいないのだが、それを言いたくなるほど今回は全くイーリスクロムのサインが役に立たなかったのだ。


 書面を見たレイモンドはため息を吐く。彼には理解できた。何か面倒なことを投げ出したなと。


「これは恐らく権限が上位過ぎて信憑性がないと判断されたのでしょうね。せめて、軍曹相当なら受け入れられたのではないのでしょうか?」


 レイモンドの指摘は最もだ。師団長という立場は簡単に成れるものではない。そんな権限を外部の小娘に与えるという書面では偽造を疑われても仕方がない。


「それは新たな師団の編成する権限は与えられる地位ですか?」


 軍曹が師団を編成できる立場か。それは勿論。


「それは師団長や統括師団長閣下の仕事です」


 だから、イーリスクロムはシェリーに師団長と同じ権限を与えたのだ。そこまで聞いたレイモンドはふと首を傾げる。


「師団の編成?それは第7師団のことですか?」


 第7師団。確かに今半数にまで減った師団といえばモルディールで連絡が途切れた第7師団の事を思い浮かべるだろう。


「いいえ、第0師団です」


 シェリーの言葉にレイモンドが呻くような声が漏れた。


「第0師団の再編に踏み切るというのですか?上層部は第0師団の廃止を決定したはずです。それを覆すのですか?」


 レイモンドは知っていた。イーリスクロムが知らなかった第0師団を知っていたのだ。


 シェリーは蛇人であるレイモンドに別の紙を見せる。


「そ、それはクロード閣下の指示書!!」


 やはりレイモンドはクロードの事を知っていた。それもこの箇条書きで書かれた日本語の文字を指示書と言った。


「読めるのですか?」




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