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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影

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 カイルは気がついていた。シェリーは第3師団長のツヴェークと交渉という名のツヴェークにとって選択肢の無い話し合いをしながら、シェリーは魔術で写真機を隠蔽して、ツヴェークに向けてシャッターを切っていたことを。


 しかし、問われたシェリーはそれがどうしたかと言わんばかりの態度で、カイルに横目で視線を向けてそのまま歩みを進める。だが、カイルはシェリーの手を取り、シェリーの歩みを止めた。


「何故だ?」


 カイルからしてみれば面白くないことだろう。何かしらでもシェリーから関心を向けられるツヴェークのことが。


「はぁ。ルーちゃんに会うための交渉材料です」


 そう言ってシェリーはため息を吐きながら答えた。今からルークに会いにいくのだ。それも個人的な話をするために。

 会いにいくところはイーリスクロムから情報を得た広報部であり、広報といえば、イケメン大好きサリーが所属しているところだ。


 しかし、カイルは何故ルークに会いにいくために、ツヴェークの写真がいるのかがわからない。


「広報なら第3師団長をわざわざシェリーが撮らなくても、そんなものいつでも撮れるだろう?」


 確かに広報なら仕事だと頼めばいくらでも写真なんて撮ることができる。当たり前のことを言うカイルにシェリーはポラロイドカメラを取り出し、レンズを向ける。

 するとカイルはシェリーらしくない突然の行動に困惑し身構えてしまった。


「というふうに、写真機を向けると身構えてしまいますよね。それはおねぇ様方には見慣れている姿なので交渉材料にはならないのですよ」


 おねぇ様方。それは勿論、写真の裏取引に参加をしているサリーの仲間の事を指している。


「ですから、写真機を見えなくして、普段の姿を撮ることで交渉権を得るのです」


 と、シェリーは言うものの普段の姿というより、シェリーの行動によって引き起こされる事柄によって普段見られない姿が彼女たちにとって、シェリーの撮る写真に価値を見いだしているのだった。


 ポラロイドカメラをしまおうとするシェリーの手をカイルは取り、反対の手でポラロイドカメラカメラを奪い取ってしまった。

 これにはシェリーも慌てだす。

 このカメラはその場でルークの写真が欲しい為にユーフィアに作ってもらった一点物だ。他のカメラもあるが、このポラロイドカメラはこの一つしか存在しない。


 ポラロイドカメラを取り返そうとシェリーは手を伸ばすが、カイルは更に高くかかげ、シャッターをきる。そして、一枚の写真がポラロイドカメラから出されてきた。


 それには、カメラに視線を向けるシェリーとカイルが写っていた。


 カイルは出されていた写真を抜き取り、ポラロイドカメラをシェリーに返した。

 カメラを受け取ったシェリーはすぐさま鞄にしまい、カイルを睨みつけるが、カイルはというとシェリーと二人だけが写った写真が手に入ってご満悦だ。


「もう、暗くなり始めているから、早くルークの所に行こう」


 カイルはシェリーの手を取って歩き始める。手を繋がれたシェリーはカイルの行動が理解できずにカイルを睨み続けていた。




 カイルに手を繋がれたまま広報部がある騎士団本部の建物にやってきた。その建物の中にいつもどおり、そのまま扉を開けて入っていく。

 そして、広報部の扉をノックする。


「はーい!」


 中から声が聞こえ、扉が開けられた。そこからは顔見知りの女性が顔を出す。


「サリーさんはいらっしゃいますか?」


 シェリーのその言葉に女性がシェリーとカイルに視線を向けて、顔を引っ込め勢いよく扉が閉まっていく。


「ぐんそー!!メロメロシェリーちゃんの襲来です!!コルト!美少女ルークくんに連絡!!」


 どうやら、ルークを預かっている部署としての対策が練られてはいたようだ。しかし、ルークの事を美少女とは美少年の間違いではないのだろうか。


「シェリーちゃんが?!思っていたより早すぎるわ!」


 確かにルークを預かって2日目の夕刻だ。あと5日は預かる予定であり、辺境にいるはずのシェリーが2日で往復するなんて普通ではありえないことだ。


「シェリーちゃんどうしたのかしら?ルークくんなら近衛騎士団の広報の仕事に付き合ってもらっているから今日は会えないわよ」


 上層部からか、もしくはニールからシェリーとルークを会わすなと言われいるのかもしれない。広報部の部屋から出てきたサリーは冷や汗を流しながら、ルークとは会えないとシェリーに言う。

 しかし、今は夕刻だ。学生をこの時間まで仕事として連れ回すことはいかがなものか。


 恐らく、サリーは嘘をついている。目を左右に動かし、冷や汗がダラダラと流れている。サリーとしては珍しい姿だ。


「サリーさん。少しルーちゃんとお話できませんか?少しでいいのです。別に今回の軍の見学を邪魔しに来たわけではないですよ」


 そう言いながら、シェリーは一枚の写真をサリーに見せつける。その写真を見たサリーは青いウサギの耳をピンと立たせ、プルプルと震え出した。



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