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 *今回、カイルの口調がシェリーの前ではないのと、イラついているので、強い口調になってますが間違いではありません。




 時は少し戻り、隣に座り何とも言えない雰囲気の男二人が残された部屋に戻る。


 カイルは失敗したと思った。はっきり言って、シェリーとナオフミの関係に嫉妬していた。

 ナオフミがシェリーの父親だろうとメイルーンで知り得なかったシェリーの姿を知っていることに、シェリーを子供としてではなく一人の女性と接していることに、それに、シェリー自身の話し方はいつもと変わらないが昔からの知己のように心を許していることに嫉妬した。


「なあ。(シェリー)のこと聞いていいか。俺さ番ってもっとなんかこう互が互を惹き付け合うと思っていたんだが違うのか?」


 グレイは項垂れたように下を向きどのような表情かは伺いしれないが、落ち込んだような声でカイルに訪ねる。


 カイルはソファーにもたれ天井を仰ぎ見る。シェリーの気配を探ると外に出たようだ。カイルは防音の結界を張る。この話はビアンカにもナオフミにも聞かせるべきではなく、もし、二人の耳に入れるのであればシェリーが直接話すべきだと思ったからだ。


「この話はここにいる者たちには耳に入れないことが前提だ。」


「わかった。」


「シェリーには溺愛している弟がいる。」


「あのユウマと言った生意気なガキか?」


「いや。直接言われてはいないが、予想では聖女ビアンカと魔導師オリバーの子だ。」


「なっ。」


「その弟のことだけには全身全霊といっていいほど心を傾けるが、それ以外のことは全くもって無関心だ。だから番に対しても関心がない。と思っていたが・・・、ここでの様子を見る限り、そうでは無いのかもしれない。」


「番に関心がない?」


「番を感知した時どう思った?突如として存在が現れたと思わなかったか?」


「ああそうだ。突然存在を突き付けられた。なぜ、今まで気付けなかったのか不甲斐なく思ったほどだ。」


「普段シェリーは自分の存在を番に分からない様に認識阻害を掛けている。隣にいても全く番の認識ができないほど完璧にだ。」


「そこまでする必要があるのか」


「シェリーは勇者の番狂いのニの舞を恐れている。」


「何の関係があるんだ?」


「聖女ビアンカの番は勇者ナオフミと魔導師オリバーと賢者ユーリウスの3人だったと。」


「あ?三人?」


「そして、勇者ナオフミはオリバーとユーリウスを殺して聖女ビアンカを手に入れた。シェリーの番の5人は異種族の強者ばかりだというが、どこの誰とも聞いていない。本気で殺り合ったら、勇者の比ではないのは明白だ。」


「マジか。」


「シェリーは番というものは呪いだと言っていた。隣にいる者が番だと認識されなければ、それは番ではない。番と認識するから側にいなければいけなくなる。そして、番が1人という常識が邪魔をする。」


「そもそも本当に5人なのか、お前が間違いで・・・・おぅ。」


 カイルの殺気が増す。「すまん。」すぐに謝罪が帰って来た。ため息と共に怒りを抑える。


「シェリーは聖女だ。聖女には聖女の役割がある。役目を果すためには5人必要なんだろう。だから番同士で争うことはシェリーの為にはならない。」


 カイルはまるで自分自身に言い聞かせるように話す。


「頭では分かってはいるんだ。心はそうじゃない。」


 カイルは心の折り合いをどうつけるべきか・・・。そのとき、シェリーの魔力が動いた。それもうねりをあげる様に


「シェリー!」

「番に何か!」


 カイルとグレイは部屋を飛び出した。

 月夜の草原を走り抜けると、そこは人が立ち入ることを拒むほど幻想的で畏怖感を感じる月夜の宴が存在した。

 満月の月光を浴びた白く淡い花が大木に咲き誇り、風が吹くと花びらが舞い上がる。その下には、黒い髪に見たこともない黒い変わった服をきたシェリー。それに対になるかのように白い髪に白い服を着た人物が赤い敷物の上で存在している。まるで一枚の絵であるかのように存在している。


 ただ、これ以上は近づけない、膝をおり、こうべを垂れ存在そのものに敬意を払う何かがシェリーの前にいる。


 二人は淡々と何かを話している。声は聞こえるが何を話しているかは認識できない。シェリーがどこかにこのまま連れ去られるのではないかという焦燥感に掻き立てられる。あの白い人物にとっては己など虫けらと同じ価値しかないだろう。


 グレイを確認すると片ヒザを地面に付け、左手の爪で土を掻き白い人物をにらみ付け唸っている。そう、己と変わらない状況だ。


 一陣の風が吹き上げ、月の光を吸い込んだかのような白い花びらが景色全体を覆い尽くす。

 花びらの幕が散り、そこには月下の中、空を見上げたたずむシェリーの姿だけがあった。

来ていただいきましてありがとうございます。

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