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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影

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 ひとしきり笑い終わったクロードにシェリーは紙の束をカバンから取り出して、差し出す。そして、テーブルの上に菓子の山を積み上げた。


「クロードさんがここで書けばよろしいのでは?破壊力だけが取り柄の赤猿(ギルドマスター)に頼むのは馬鹿でも無理だとわかりますよね」


「いやー。フォルはそこまで酷くないと思うが」


 と言いつつ、クロードはお菓子の小袋を破き、中の菓子を口に放り込んでいる。先程ユーフィアが座っていたシェリーの目の前に席でだ。


 そして、ユーフィアはというと、クロードにボコボコにされたクストの治療とクロードがまたしても怒気を振りまいたことで、エルフの女性が気絶してしまったので、別の部屋に移すためにここには居ない。


「っていうか、俺、扱き使われ過ぎじゃないか?この前もガキの相手をさせられたしなぁ。ん?そう言えばあのガキ共はどうした?」


 扱き使われ過ぎと言いつつも報酬の菓子をバリバリと口にしているクロードからシェリーの周りに人が足りない事の疑問が投じられた。

 しかし、シェリーからすればどうでもいいことなので、紙とペンをクロードの前に突き出し、テーブルの上をトントンと指で叩き、早く書くように促す。


 答えないシェリーの代わりにクロードの質問にはカイルが答えた。


「彼らはダンジョンで鍛えてもらっている。将軍如きに跪くヤツなんて必要ないからな」


「将軍?ああ、もしかして、めちゃくちゃな戦い方をするエルフか!」


 クロードからすれば、プラエフェクト将軍は戦い方がなってないということなのだろうか。


「いやー、あのエルフの前に出る勇気は流石にないなぁ。前に出るとあの魔剣の餌食になるのが、目に見えるからな。それをお構いなしに前に出る奴って、あのウサギぐらいだろう?」


 クロードはプラエフェクト将軍の戦いが普通よりも逸脱していると言いたかったようだ。

 苦笑いを浮かべながらもシェリーが用意した紙とペンを手に取り、何かを書き出している。


「あのウサギも頭おかしいよな。魔術と剣戟の嵐の中を平然と駆け出すって普通しないよな。それも綺麗に避けているし。あれは本能か何かか?」


 誰に問いかけるでも無く、独り言のようにボソボソと話しながらペンを走らすクロード。

 どうやら筋肉ウサギの祖先であるグアトールの事を言っているのだろう。確かにシェリーが5人の強者を呼び出したときに、一番に動いたのがプラエフェクト将軍と筋肉ウサギだった。そして、他の三人は遠巻きに見ていた。それは他の三人はプラエフェクト将軍の攻撃に巻き込まれないように遠巻きに見ていただけだったのだろう。


「ああ、それはクロードさんと同じ変革者の水龍アマツさんの影響でしょう」


 クロードのなんでも無い独り言にシェリーは答える。


「水龍?ああ、あのエゲツのない技を使うねぇちゃんな。龍化ってスゲーよな。俺の爪でもあの鎧を突き通させるかどうかってところだよな」


 クロードはわくわくとさせた視線をシェリーに向ける。強い者と戦いたい。そんな意志の現れだ。


「クロードさん手が止まってます」


「はい。はい。でも、将軍かー。あいつ本当に頭イッてるよな。あの魔剣に魔力喰わせて、魔術を乱発して平然として顔してるって正に化け物だよな。で、最終形態があれだろう?普通なら尻尾巻いて逃げるってぇの」


 逃げると言いながらも、ニヤニヤしながら文字を書いている。傍から見ればニヤニヤしながら物を書いている怪しい人にしか見えない。


「爺様。質問をいいでしょうか」


 エルフの女性が座っていたところに腰を降ろして、お茶を飲んでいるルジオーネが質問をしていいかとクロードに問いかけてきた。


「ああ」


先程まで饒舌に話していたクロードが、一言だけで返事をする。


「将軍とは誰のことでしょうか?爺様が化け物だと褒めるなんて相当ですよね」


 クロードの化け物発言は褒め言葉のようだ。


「あ?そんなもの決まっているだろう?猛将プラエフェクト将軍だ」


「ゴッフォ!!ゴホッゴホッ····」


 クロードに問い詰められてから、鳴りを潜めるように気配まで消していたイーリスクロムがお茶を吹き出してむせだした。


「お兄様汚いですぅー」


 マリアはユーフィアについて行ってしまったので、代わりにこの場に控えていたセーラに突っ込まれ、拭われているイーリスクロム。そんな国王の姿にルジオーネに苦笑いを浮かべながら、質問を続ける。


「確か、初代聖女の番の方ですよね。亡くられて随分経つと思うのですが、会われたことがあるのですか?」


「ああ」


 肯定を意味する返事だけが返ってきた。しかし、ルジオーネは気分を害することもなく言葉を続ける。


「何処ででしょうか」


 その質問にはペンでシェリーを指したのみに留める。先程まで機嫌よく話していたクロードとは別人のように、態度が違っていた。


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