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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影

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「な、何が起こった!」


 シェリーがカイルに抱きしめられているなか、そんな叫び声が響いた。未だに聖結界が施されているこの場には多くの人が地面の上に倒れている。そこで起き上がった人物が上げた叫び声だった。


「第7師団長さん。起きましたか?」


 シェリーが起き上がった人物に声を掛ける。そのシェリーにカイルは慌ててフードを深く被らせた。


「ああ゛?テメー誰だ?」


 そのシェリーの言葉に第7師団長と呼ばれた人物が反応する。しかし、カイルがシェリーの姿を背で隠し、答えた。


「ギルドから依頼を受けた者だ」


「ぎ、銀爪!あ、何だ····何があったか教えてくれないか?途中から記憶が曖昧なんだ」


 カイルの姿を見た第7師団長は慌てて低姿勢になった。たかが蛇人でしか無い自分では竜人に敵わぬことは明白。ここで事を構えることは避けなければならない。


「どうやら、奴隷の制御石で操られていたようだな。街の中央にある貴族の屋敷のようなところに帝国の者と思われる奴らを捉えてある。詳しくはそいつらから聞け」


 カイルから事を起こした人物を捉えていあると聞いた第7師団長は周りに倒れている軍人を叩き起こして、慌てて街の中に駆けていった。


 それの背中を見送ったカイルが、ふと思い出したかのようにシェリーに言う。


「シェリー。実は捉えた者達のところに奴隷がいてね。酷い怪我をしていたから、治してあげてくれないかな?」


 そう言ってカイルは地面に置かれている白いシーツに包まれた物を指さした。

 カイルの言葉にシェリーは白いシーツに近づいていき、シーツをめくる。

 そこには薄い青い髪に美しい容姿、種族を示す特徴的な長い耳だったのだろう、その耳の先が切り取られているエルフ族の女性だった。

 しかし、美しい顔は殴られたのか頬が青くなっており、口からも血が出ているが、口元が不自然な感じだったので、シェリーは口の中を開けてみる。


「ちっ!」


 さっきのカイルと同じ反応だ。歯が全て抜かれていた。美しい女の奴隷などその用途は決まっている。


「はぁ。傷は治せても心までは治せませんよ」


「それは仕方がないよ。その辺りは家族に任せるしかないよ」


 シェリーは女性に手をかざし、癒やしの術を掛ける。


「『聖女の癒やし』『呪術浄化』」


 と、同時の浄化を施し、額の禍々しい人を制御する奴隷石を解除する。きれいな顔になった女性額から青い石が液体となって流れ落ちた。



 その頃には街の住人達が起き出して、何故ここにいるか首を捻りながら街の中に戻って行っていた。

 全ての住人が無事灰色の石から解放され、街の方に戻って行った頃に、シェリーとカイルの元に近づいてくる人物がいた。


「銀爪と貴女が噂のラースのお嬢さんなのかしら?私はここのギルドマスターのカーラよ」


 声をかけていた人物は大柄な女性でその白い髪からは特徴的な白く長い耳が出ていた。


 大柄な筋肉質なうさぎ獣人。これはどう見ても、この国で繁殖しすぎの統括師団長閣下の家系ではないのだろうか。

 しかし、ニールからは『カーラ・シャルール』という名だと教えられていた。決して筋肉ウサギのグアトールの名ではなかった。



「ちょっと詳しく聞きたいのだけど、ギルドに足を運んでくれないかしら?」


「この女性を預かってくるのなら構わないですよ」


 そう言って、シェリーは綺麗な姿で寝息を立てているエルフの女性を指した。それに対して、カーラは怪訝な表情をする。


「エルフ族ってプライドが高いから好きじゃないわ」


 エルフ族に嫌な思い出でもあるのだろうか、すごく嫌そうな顔をカーラはした。


「この女性はマルス帝国の奴隷でしたので、おそらく今回のことでも被害者なのはないのでしょうか?」


「奴隷。まぁ、そいうことなら一時的に保護をしてあげるわ。ロルフ、ギルドに運んであげて」


 カーラが後ろの人物に声をかける。これもまた大柄な人物が出てきた。頭の上には茶色い髪の隙間から小さな丸みを帯びた耳が出ている。熊獣人だろうか。


 その人物がシーツを纏ったエルフの女性を抱え街の中に入っていく。


「さぁ。こっちよ」


 カーラも続いて背を向けて街の方に向かっていく。シェリーもカイルに促され、街の中に入っていった。

 そこは街の賑わいが戻っていた。しかし、約1ヶ月という期間が空いたのだ。それは街の人からすれば戸惑いも生まれるだろう。現状の把握に走るもの。日常に戻そうとするもの。

 人々からは困惑の気配が感じ取られた。


「銀爪!ちょっと待ってくれ」


 ギルドマスターの後について行っている所に声を掛けられた。先程の第7師団長からだった。


「なんだ?」


 カイルは不機嫌に答える。


「あ、いや。あの状況は何があったのかと思ってな」


 第7師団長はカイルに言われて中央の領主の屋敷に行って、捕獲されている者達の姿を見たのだろう。しかし、カイルは状況に対して答えずただ一言。


「クズはさっさと王都に連行しろ!目障りだ!」


 怒気を発しながら言い切った。しかし、もしマルス帝国の者を連れてきたのであれば、シェリーが白き炎で肉体ごと浄化していることだろう。


 カイルの隣にいるフードを被った者からも殺気を向けられた第7師団長のエミリオはブルリと震え『わかった』と返事をして、慌てて背を向けて来た方向に戻って行った。




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