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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影

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【25章は他の視点の話がポロポロと入って来ます。うざすっと感じてしまったらすみません。一応、本編の一部です。】

 夜遅くにメイルーンの家に戻ってきたシェリーは、すぐさま部屋に引きこもろうとしたところにカイルから引き止められた。


「何ですか?」


 さっさと休みたいのに呼び止められたシェリーは幾分か機嫌が悪い。


「シェリー。疲れているところ悪いけど、ヨーコさんを呼んでくれないかな?」


「陽子さんならこの屋敷の敷地の内なら呼びかければ答えてくれます」


 シェリーは勝手に陽子と話せばいいと言わんばかりの対応だ。


「確かにそうかもしれないけど、俺から呼びかけるよりシェリーからの方がいいと思うんだ」


 それもそうかもしれないけど、今でなければならないのだろうかと、シェリーはカイルを見る。


「明日では駄目ですか?」


「駄目だ」


 カイルが強い口調で言った。シェリーはため息を吐き、どこともなく呼びかける。


「はぁ。陽子さん、来てもらえますか?」


『いいよー』


 陽子の返事と共に床からニョキっと黒髪のショートカットの女性が現れた。


「呼ばれて飛び出てジャ「陽子さん!」…最後まで言わせてよー」


 陽子のセリフをシェリーはぶった切った。最後まで言わせないと言わんばかりに。それに対し陽子は口を尖らせて文句を言う。

 その陽子が着ているTシャツには口が細く下ぶくれのツボに怪しい顔がついている絵柄が描かれていた。

 相変わらず陽子の趣味がわからない。


「ササっち!お帰りー!どうだった?魔人をバシバシ殴ってきた?」


「陽子さん。私は喧嘩を売りに行ったわけではありません。カイルさんが用があるそうなので聞いて下さい」


 シェリーはそう言って、自分の部屋に帰ろうと踵を返すが、カイルに腕を掴まれ、留まるように促された。

 その行為にシェリーは舌打ちをする。

 そんな二人を見て陽子は苦笑いを浮かべながら、カイルに尋ねる。


「竜の兄ちゃん。この陽子さんに何の用かな?」


「ああ、彼らをヨーコさんのダンジョンで鍛えで欲しい」


 カイルの目線で示された方を見て、陽子は思わず『うっ』と声が漏れた。一番に目に行ったのが、頬を紫色に腫らしたオルクスだった。次いで、顔を青くしながらお腹を押さえているグレイだった。リオンとスーウェンは見た目は普通だが、一様に顔色が悪い。

 そして、4人が四人とも気配が感じさせないほど落ち込んでいた。

 その姿に陽子は思わずシェリーを見る。


「ササっち。何だか酷いことになっているよ」


「ええ。私がヤッたわけではないですよ。ヤッたのはカイルさんです」


 そのシェリーの言葉に陽子は一歩、カイルから距離を取る。


「えーっと····竜の兄ちゃん、どうしたのかな?」


 陽子はいつもと雰囲気が違うように感じられたカイルにオズオズと理由を聞いてみるが。


「ヨーコさんが彼らに及第点を与えるまで、ダンジョンからださなくていいから」


 理由ではなく要望を言ってきた。この事から陽子はカイルの機嫌を損ねる何かがあったらしいと判断した。そして、一応確認の為に聞いてみる。


「及第点ってことは、普通にダンジョンをクリアしただけじゃ駄目ってことでいいのかな?本当に私の采配で決めていいのかな?」


 それは、ダンジョンを普通にクリアしただけでは陽子は合格を与えないと言っているのだ。


「構わないよ」


 カイル()言い切った。他の誰でもなく、カイルがだ。


「そうかー。わかった!この陽子さんに任せておきなさい!」


 そう言って陽子が指をパチンっと鳴らすと、陽子の姿は消えてなかった。別に床から出入りしなくてもダンジョンとシェリーの屋敷の間を移動できるようだ。

 そして、項垂れていたシェリーのツガイである4人の姿も消えていた。


 ただ、この場にはシェリーとカイル、そして、この部屋の出来事を見ていた四つ目の黒猫だけが存在していた。



______________


ダンジョン Side


 薄暗く、茶色い岩の壁に囲まれた大きな空洞に、陽子は立っていた。その前には一瞬にして場所が変わったことで、ここはどこだろうと辺りを見回す4人の姿があった。


「エルフの兄ちゃん。そこの怪我人治してもらえる?出来るよね」


 その言葉にスーウェンは頷き、腹を押さえているグレイのところに向かっていった。

 スーウェンを見届けた陽子は今度はリアンの方に向き尋ねる。


「鬼くん。何があってあんなに竜の兄ちゃんが怒っているか説明してもらえる?」


 見た目では怪我を負っていなさそうなリオンに陽子は説明を求めた。


「俺達が不甲斐なかったからだ」


 リオンは端的に答えた。その答えに陽子は腰に手を当て言い切った。


「···それは始めから、わかっているし」


「うっ」


 グレイの次に頬の腫れを治されていたオルクスから声がもれた。それは、陽子の言葉に傷ついた声なのか、それとも傷が痛んだのか。


「竜の兄ちゃんが怒っている理由だよー?それによって陽子さんの合格点が変わってくるんだよ?」


 合格点。それはダンジョンの攻略点数のことだろうか。陽子のダンジョンを攻略したことにより点数が与えられ、それが経験値として反映される独自のシステム。


「猛将プラエフェクト将軍の前で無様に動けなくなっていたからだ」


 グレイが悔しそうに答えた。それに対し陽子は『ふーん』と言葉を返し、少し考えて彼らの方に向き合った。そして、陽子の雰囲気が一変した。


「ああ、あのエルフの将軍?それも一人ってこと?君たちの番が誰かわかっていて、そんな事を言っているの?ササっちは聖女なの!君たちその意味わかってないでしょ!」


 陽子はプラエフェクト将軍の前で膝を付き動けなくなった彼らにカイル同様に怒りを顕にした。シェリーが聖女である事を理解していないのかと。


「決めたよ。君たちの合格点」


 そう言って、陽子はニコリと笑った。




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