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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
2章 闇と勇者と聖女

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 先ほど出たばかりのナオフミの家にシェリーは再び戻ってきた。

 そのまま、立ち去ろうとしたが、グレイに足を掴まれ、それを蹴り倒し、頭を足で踏みつければ、「ありがとうございます。」と言われ、ナオフミとユウマに「可哀想だから捨てないであげて」と言われるしまつ。

 ビアンカに一晩泊まっていけばいいと言われ、戻って来てしまった。戻れば、ユウマ以外の子供たちには全く違う黒髪の美少女に驚かれ、その姿なら姉と認めてもいいと3人の幼女の突進を受けた。

 その上、シェリーはもう疲れてしまったのに、ビアンカに久しぶりにシェリーの作ったご飯が食べたいわと言われ、人様の家の台所に立っている。そう、シェリーは家事能力が皆無のビアンカに代わり、3歳から台所に立っていた。

 この大人数は面倒だ。この前のダンジョン産のミノタウロスで牛丼でいいか。一番下も3歳だというから細かく切れば食べやすくなるだろう。

 米を1升分炊き、牛丼のもとを作れば出来上がりだ。◯野家の牛丼風汁だくだ。

 大鍋とおひつごとドンとテーブルに置き、各自で好きなだけよそってもらうことにする。


「なんだこれ変な食事だな。」


 ユウマが眉をひそめる。逆にビアンカは笑顔で


「このご飯とてもおいしいですのよ。このお米も懐かしいわ。」


 ナオフミに至っては、シェリーを拝んでいた。


「佐々木さん天才や。牛丼や牛丼。この世界にお米なんてあったんかいな。」


「普通に炎国で食べられています。これはトウヤ君とライ君の分です。赤身の細かい肉を入れています。」


 黒髪にサクラ色の目のトウヤとサクラ色の髪に黒い目の一番下のライの前に幼児用の肉丼を置く。

 各自がそれぞれ好きなだけ肉丼をよそい、食べていく。


「吉◯や◯牛の牛丼やまた食べれるなんて思わんかった。」


 ナオフミは泣きながら食べていた。ユウマは無言でガツガツとスプーンで食べていた。ビアンカはシェリーの食事が一番おいしいですわと言いながら、上品に肉丼を食べていた。

 シェリーはマイ箸をもっていたのにスプーンに持ち替えさせられ、カイルの膝の上で食べさせられていた。隣からはチラチラとグレイの視線を感じる。

シェリーの胸はもういっぱいだった。


 1升の米と大鍋いっぱいの牛丼のもとは綺麗になくなった。最後はナオフミとユウマとグレイとで取り合いになっていた。足りなかったのか・・・。


 食後のお茶を用意し、ナオフミとビアンカ、シェリーとカイル、そしてグレイが別室で顔を合わせ、ソファーに座っていた。


「叔母上にお願いがあって訪ねて参りました。父上の病を治して欲しいのです。今の父上は意識が無い状態が一月程続いており、後継者の指名をしないまま病に倒れたことで、兄上と叔父上が後継者争いを起こそうとしているのです。どうか叔母上、父上の病を治して下さい。」


 グレイはビアンカに頭をさげて頼み込む。


「無理ですわ。」


「なっ。」


 ビアンカはグレイの願いを否定する。


「わたくし、あと三年で国中を浄化しなければなりませんの。ですから、今代の聖女でもあるシェリーに頼むとよろしいですわ。」


「無理。」


 ビアンカから役割を委託されたシェリーは即座に否定をする。因みに、シェリーは2人掛けのソファーには座っておらず、カイルの膝の上である。


「わたしはこれからマルス帝国に行きますので、無理です。」


「あら、シェリーの番でもあるのでしょう?」


「わたしは認めません。それに先ほどから母さんに話ながらも、カイルさんのこと睨んでいますよね。母さんの隣にいる俺関係ないしっていう顔をしている人を作り出したくないのですよ。」


「俺に飛び火して来たー。」


「それから母さん 、私に嫉妬しても 小嶋さんとは顔見知り程度でしたので、名前と仕事は何をしていたかと噂程度のことしか知りませんよ。」


「あら、わたくし嫉妬なんて」


「俺はビアンカ一筋やでー。佐々木さんには旦那さんいてたけど。」


 ピキッとその場の空気が凍った。


「シェリーどういうことかな?俺は聞いていないよ。」


「この男以外にも夫がいるのか。」


 カイルとグレイの地を這うような声が重なる。


「小嶋さん、これ以上ややこしくしないで下さい。何ですか。先程の仕返しですか、心が小さい男ですね。」


「それもあるけどな。一生勝てん男がいるっちゅうのはある意味共通の敵や。仲良うできんのちゃうか。魔物と浄化は任されたから、大公閣下のことはまかしたで。んじゃ、おやすみ。」


 ナオフミはビアンカを連れて、話し合いはこれで終わりと言わんばかりに立ち上がった。


「最後に母さん。小嶋さんは良くもててました。私が知るだけで3人は恋人いましたよ。」


 シェリーは美人が笑うと怖いなぁと思いながらビアンカに連れられ部屋を出ていくナオフミを見送った。廊下から「そんな殺生な。もう、過去のことや。」ナオフミの声が響いている。


「シェリーどういうことか教えてくれるかな?」


「どこの誰なんだ。」


 まだ問題が残っていた。グレイがいつの間にか横に移動してきている。シェリーは頭が痛くなってきた、やはり小嶋さんと関わるのは鬼門だ。なぜ、いまさら過去の記憶を引っ張りださなくてはいけないくなるのだろう。


「シェリーとしては関わりのない人物です。話すことはありません。」


「でも、勇者 ナオフミが知っているということは存在しているんだよね。」


「ここではない地球という星の日本という国に住んでいた佐々木という人物には夫と子供がいましたが、家族を残して死にました。もう、これでいいですよね。今のわたしには関係のないことです。」


 シェリーはそう言って部屋を出ていった。

 部屋には呆然としたカイルとグレイが残されたのだった。




______________________

補足

 家事がダメなビアンカのため、ナオフミが家事、洗濯、子育てをしてきた。最近は上の子供が育って来たので大分助かっている。


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