表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
24章-2 魔の大陸-魔人が治める国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

350/861

342

 シェリーは目の前のナオフミに本気の一撃を繰り出そうとしたところで、ミゲルロディアから声を掛けられる。


「ここは戦いの場ではない。話し合いをするなら席につくがよい」


 その言葉にシェリーはナオフミの眉間に突き刺そうとしていた刀を皮一枚で止める。


「佐々木さん。これはあかんで、死んでしまうやないか」


 シェリーの最後の攻撃に対してナオフミは文句を言っているが、その顔はやはり笑顔である。


「ちっ!私の攻撃など、蚊に刺されたぐらいにしか思わないですよね」


「イヤイヤ、これは死んでしまうなぁ。コワイコワイ」


 その言葉聞いたシェリーは奥歯を噛み締めて、ナオフミを殴りたい衝動を耐える。ミゲルロディアに注意されたばかりだ。手を出すべきじゃないと、刀を鞘に収め鞄に収納した。


「それにしても佐々木さん。えらい男を侍らし···うぉ!」


 シェリーはナオフミを殴り付けていた。しかし、ナオフミは紙一重でシェリーの拳を避けている。その二人の姿に後ろにいたオーウィルディアは片手で頭を抱えて、ため息を吐く。

 ナオフミはシェリーが構ってくれることに嬉しそうにしているが、シェリーはと言うと嫌悪感が目に見えそうなほど、醸し出されていた。



 日は完全に沈み外は闇に包まれていた。それとは裏腹に煌々と明るい光に満ちた室内で、シェリーはミゲルロディアと夕食を囲っている。

 正確にはシェリーとシェリーのツガイ達、勇者ナオフミとその家族、オーウィルディアと魔人と成ったミゲルロディア。この世界でナディアから名を名乗る事を許された者たちが揃ったのだ。表に出せないルークシルディア以外。


 食事の場は和やかな雰囲気とは言い難い。ナオフミとビアンカの幼い男の子の子供二人は楽しそうに食事をしている。両親と食事を共にするのは久方ぶりだからか、キャハキャハと笑い声を出して楽しそうに食事をしている。


 その上の双子の姉妹はビクビクとしており、あまり食事が進んでいないようだ。その隣に座っている姉のエリーは怒っているかのように乱雑に食べ物を口に運んでいる。


 ビアンカはと言うと、何かを言いたいようだが、黙々と食事を取り、ナオフミはどうでもいいことを話している。

 それを向かい側で座っているオーウィルディアが相槌を打っているが、聞こえてくる声だけでもイライラが募ってくるシェリーからすれば、皿ごと喋っている口に突っ込みたい衝動に襲われていた。


「初めて勇者という者を見たが、なんというか、らしくないな」


 リオンがこのなんとも言えない空気の中、オーウィルディアの隣にいるグレイに話しかけている。リオンに言われた言葉に苦笑いを浮かべ、答えるグレイ。


「昔からあんな感じで、楽しい人だ」


 楽しい?人をおちょくって楽しんでいるだけだろうと、増々シェリーの機嫌が悪くなりながら、カトラリーを動かすが、その手にしたカトラリーがシェリーの口元に行くことはない。なぜなら、シェリーが切り分けた肉料理は両側の席についているカイルかオルクスの口元に持っていかれ、シェリーが口にするものは彼らから差し出されていた。


 シェリーの目の前は幼い二人が楽しく食事をしており、機嫌が悪いものの二人のツガイから食べさせられているシェリー。その一角だけが場違いな雰囲気…いや、本来の晩餐の風景だった。

 そして、使用人たちから生暖かい視線を感じてシェリーは気がつく。


 何故に普通に食べさせられている状況を受け入れられているのかと。


 この数ヶ月でこの状況に慣れてしまっている自分に気づいてしまい、カトラリーを置いて、唖然とする。



 さて、気がついているだろうか、この座席の順番がおかしいことに。


 幼い子供たちの前にシェリーがいるということは、シェリーは末席にいるということだ。本当なら、グレイより上座のオーウィルディアの隣に座るべきなのだ。

 この場に来た時には座るべき場所に座席を用意されていた。一番上座であるミゲルロディアとオーウィルディアの間に席を設けられていたのだが、その席はビアンカの向かい側であり、ナオフミの斜め前の席でもあった。

 この席に着くことにシェリーは嫌がり、ここに座らなければならないのであれば、帰るとまで言ったため、ナオフミと離れた末席に座っているのだった。




「シェリー、もうお腹いっぱい?」


 カイルがシェリーの様子がおかしいことに気が付き声をかける。


「この状況に頭痛がしてきました」


 この状況に頭が痛くなってきたと、シェリーは手で頭を押さえる。


「勇者と一緒にいるのは嫌だよね。別の部屋で休ませてもらう?」

「やっぱり、あの白い御方と会ったのが悪かったのか?」


 カイルはナオフミの所為でシェリーが調子が悪くなったと思い、別の部屋に行くことを勧め、オルクスは白き神と会ったことが悪影響しているのかと問うてきた。


 しかし、シェリーは彼らの行動を普通に受け入れている自分がいることに頭痛がしていきているのだった。


____________


補足

えらい男を侍らせとうな→たくさんの男性を侍らせている


誤字報告ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ