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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
24章-2 魔の大陸-魔人が治める国

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「ハハハ、最も良い未来か。笑わせてくれる!このように成った私に誰が仕えると言うのだ!」


 魔人ミゲルロディアはシェリーを威圧する。それもラース特有の魔眼の解放を伴った威圧だ。

 見た目は黒く濁った目をしているが、魔眼を失ったわけではないようだ。


 それに対し、シェリーのツガイたちが動こうとした。しかし、その前にグレイがミゲルロディアの前に出る。


「父上。お願いします。お戻りになってくださいませんか」


 そう言って、魔眼の威圧を放ち続けているミゲルロディアに対して頭を下げる。


「おれ····私も父上がこちらの大陸に来られてから城の方に戻ってなかったのですが、久しぶりに戻った城の雰囲気は全く異なっておりました。皆、口には出しておりませんが、今の状況に不満があるように感じられました」


 生まれ育った場所に久しぶりに戻れば、以前と雰囲気が異なっていた事をグレイは口にした。

 今まで仕えていた大公一家がある日突然、城から居なくなってしまったのだ。それは城で働く者は不安にもなるだろう。

 大公一家と入れ替わるようにきたのが、ラースではあるが出ていって久しいオーウィルディアと問題のある勇者一家だ。国を乗っ取るつもりなのではと思案してもおかしくはない状況ではあった。


「じぃも父上のお帰りを待っています。どの様なお姿になられようとも、父上であることには変わりありません」


 その言葉にミゲルロディアから発する威圧が収まった。そして、おもむろに立ち上がって、グレイの方に向かって行く。


「どの様な姿でもか。久方ぶりにお前に会ったが、変わったな。愛し子ということで、随分甘やかされているように思えたが、この私に意見するまでになったとは。そこの従姉妹のおかげか?」


 ミゲルロディアの中でのグレイの評価はとても低かったようだ。グレイに色々不足があるのはどうやら甘やかされていたという事実。

 その言葉にグレイは頭を上げ、顔を歪め答える。


「はい」


 己の不足を父親がわかっていたのかという事。そこに口出しはする気はなかったという事。

 ミゲルロディアにとってグレイはそれ程、目をかける子供ではなかったという事実。

 従姉妹であるシェリーの方を己の息子より評価していた感じだ。


「ナディア様から愛し子のことには口出しをするなと言われていたが、きっとそれで良かったのだろうな」


 そう言って、ミゲルロディアはグレイの頭を撫でた。女神ナディアと同じ赤い髪を。

 ミゲルロディアの口から語られた事実。ミゲルロディアは別にグレイに無関心ではなかったのだ。

 ミゲルロディアの行動に目を見開くグレイ。このようなことは一度もなかったのだろう。


「さて」


 ミゲルロディアはシェリーの方に視線を向ける。


「ナディア様が言われた言葉をこれ以上否定することはないが、ラフテリア様の許可は貰っているのか?我々は勝手な行動を許されてはいない」


 ラフテリアの許可。人とは逸脱した存在をまとめているのだ。何かしらの制限がかけられているのだろう。


「ええ、それは報告してあります」


 軽い感じで了承を得ているので、許可かどうかはわからないため、シェリーは報告という言葉を使った。

 シェリーの言葉にミゲルロディアはニヤリと笑う。


「それは問題はないのか?」


 ニヤリ。恐らく、シェリーの言葉の意味に気がついて笑ったのだろうが、如何せん魔人となり黒を纏ったミゲルロディアは悪どく見えてしまう。


「問題があってもロビン様がお止めになるでしょう」


 ラフテリアの性格は少々問題があるが、ロビンが支えているため、その当たりの制御はしてくれるであろう。


「では、戻ろうか。我が国に」


 黒き髪にタールを流し込んだ目を持った青年が両手を広げ、シェリーとその周りにいる者達を見る。


「その前に彼らは誰だね?」


 ずっとシェリーの後ろに居て話を聞いていたにも関わらず、今いることに気がついたと言わんばかりの態度だった。


「いや、誰かは知っている。これでも一国を治めた者だ。だが、なぜこの場にいる」


 その言葉にシェリーは思わず舌打ちをした。シェリーの口から言うのは癪に障る。この者たちが自分のツガイだと。


「答える前に、ご意見を確認しても宜しいでしょうか?母の番は勇者ということは誰しもが知っている事実。伯父様は魔導師オリバーの奇行についてどうお思いでしょうか?勇者の番狂いの発端となった事柄です」


 だから、シェリーは敢えて別の事を尋ねた。ラース公国の3分の1を焦土化した勇者の番狂いの発端だ。


「ああ、魔導師オリバーの聖女誘拐事件か。あれは本当に意味がわからない事件だった。しかし、新たなラースを授かったのも事実。我々にとっては意味がある結果ではあった。それが、どうした?」


「聖女ビアンカの番は勇者ナオフミ。魔導師オリバー。賢者ユーリウス。オリバーとユーリウスは勇者に殺されて今があります。それが番狂いの発端であり、結末です」


 ミゲルロディアはシェリーは何を言っているのかと、不快な表情をしながら聞いていたが、勇者に殺されたという言葉で、何かがわかったのか『あれのことか』と言葉を漏らした。



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