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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
24章-2 魔の大陸-魔人が治める国

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「リア?どうかした?」


 ロビンが不思議そうにリアに声を掛ける。神に願いを言ったと思ったら感謝の言葉を述べたのだ。知らない者からすれば、不思議な光景だ。しかし、シェリーのツガイ達はこの光景をよく見ていた。シェリーが突然意味がわからない事を呟く光景を。


 カイルはすぐさまシェリーの横に行き、抱き寄せる。ラフテリアに答えたと思われる存在に警戒感を顕にしたのだ。


「神様が、答えてくれたの」


 ラフテリアが泣きそうな顔で笑った。いや、本来なら泣いていたのだろう。しかし、人と異なる存在となったラフテリアの目は黒く濁っていた。


『でも、条件があるよ』


 シェリーとラフテリアにしか聞こえない声はやはりラフテリアに条件を出してきた。


『まず、君の聖女の力を今の聖女に渡してほしいな』


「はい!」


 その言葉を聞いたラフテリアは直ぐに返事をして、シェリーのところに来た。そして、シェリーに向かって手を差し出す。


「わたしの力をあげる」


「ラフテリア様、本当に宜しいのでしょうか?多少は使えるでしょうが、聖女の力を使えないとなると、奇跡の力も浄化の力も使えなくなりますよ」


 シェリーはラフテリアに聖女の力である聖魔術が使えなくなるということを言っているのだ。わずかに残り香のような力は使えるだろうが、今までのように無尽蔵には使えない。


「いいの。わたしの望む事は一つだから」


 ラフテリアの望み。それは、番であったロビンと共に生きること。


『君は今が幸せだよね?番と共に暮らせればいいよね?それ以上のこだわりはないよね?』

 白き神がラフテリアに言った言葉。


 それ以上を求めてしまったが故に大切な番を失ってしまった。だから、これがラフテリアの望みであり、全てなのだ。


 シェリーはラフテリアの手を取る。ラフテリアから膨大な力の塊が流れ込んでくる。これで、シェリーは全ての聖女としての力を手に入れたことになった。


 5代目の聖女であり、母親であるビアンカの魔王と戦う聖女としての力。


 初代聖女であるラフテリアの浄化に特化した聖女の力。


 そして、元からシェリーの中にあった回復と結界に特化した力。


 これで、この世界で唯一、世界が認めた聖女とシェリーはなったのだ。


『それから』


 シェリーに聖女としての力が行き渡ったことを確認したのか、白き神はさらなる条件を出してきた。


『首だけしか無い、君の大切な者の体となる、生きているモノを用意してくれるかな?』


 ラフテリアの望みのために生きた人を犠牲にしろと言ってきたのだ。神である者が言う言葉ではない。普通なら否定することだが、ラフテリアはその神の言葉に笑顔で答えた。


「わかりました神様。生きた人を連れてくればロビンを人にしてくれるのね」


 その言葉にロビンの方が狼狽えた。


「駄目だ。リア!僕のために人を犠牲にするなんて!そんな事をするぐらいなら、僕はこのままでいい!」


「でも、神様の言うことは絶対だもの」


 その二人の姿を見てシェリーはやはりこのような事になったかと思った。あの謎の生命体は意地が悪い。女神ルーチェも意地が悪いが、あの存在ほどではない。


 優しいようで優しくない。意地が悪いが、結論から言えば意味がある。あの謎の生命体とは関わらない方が一番いいのだが、一番力を持っているのも事実だ。

 頼りたくはなかったが、ラフテリアの望みが叶う可能性があるのなら、あの存在に頼るしかなかったというのも事実だ。


 だが、普通は受け入れがたい条件だ。人を完全な姿に戻すのに、生きた人を犠牲にしろというのは。


「それは」


 今までラフテリアの側で控えていたマリートゥヴァが言葉を放つ。


「それはわたくしでは駄目でしょうか?」


 生きた人とラフテリアは言ったが、正確には体となる生きたモノだ。人とは指定をしてきていない。


『いいよ』


 やはり、人であることに拘りはない。


「マリーちゃん、いいよって」


「駄目だ!リア!マリーを犠牲にするなんて!」


 ロビンは誰かを犠牲することに反対のようだ。確かに、己が生きるために誰かの命を奪ってまで生き続けるというのは、心の重荷になるだろう。


「ロビン様。良いのです」


 マリートゥヴァは晴れやかに笑った。


「わたくしはもう心残りはないのです。エフィアルティス様がお幸せに暮らしていけるとわかったのですもの。長年の苦しみから解放され、今では番も傍らにおられる。····ふふふ、でも本音を言えば、例えエフィアルティス様のお姿がモルテ王になられているとしても、わたくし以外の者と幸せになることに嫉妬を覚えます。きっとこのままでは、その番をこの手にかけてしまうでしょう」


 例え、番としての繋がりは切れてしまったとしても、愛し愛された存在が、自分ではない者と共に幸せになる姿に殺意を覚える。マリートゥヴァのエフィアルティスへの愛は未だに心の内に燻っているようだ。


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