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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
24章-2 魔の大陸-魔人が治める国

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「恨むなんて。クスッ。わたくしはあの方が、エフィアルティス様がお幸せなら、それでいいのです」


 とても、嬉しそうに微笑むマリートゥヴァ。


「千年もの間苦しんだのですもの。わたくしではどうすることも出来なかった。代わりに呪いを受け取ろうとも、すでにわたくしは穢れた身。わたくしではお幸せに出来なかった。ですから、とても貴女に感謝しているのですよ」


 自分ではどうすることも出来なかったと。魔人である者が愛した者の為に呪いを代わりに受けようとする。その行動は人のそれと変わりはなかった。

 マリートゥヴァのエフィアルティスに対する愛の在り方だった。


「あの方の幸せがわたくしの幸せです」


「マリーちゃん良かったね」


 魔人ラフテリアも嬉しそうに話している。姿と巨大な魔力を気にしなければ、彼女達はただの人族の長年の友人にしか見えない。


「でさぁ。黒の6番目は何をしにここに来たの?」


 魔人ラフテリアがシェリーにすずっと近づいて聞いてきた。目と目を合わせるように近づいてきた。


「実は魔人を一人あちらの大陸に連れて行きたいのです」


 シェリーの言葉に魔人ラフテリアの口が裂けた。


「アハハハ!流石。6番目!いいよ。いいよ。連れて行くといいよ。やっぱ今までの子達と違うね。神様との約束は守らないといけないよね。アハハハ」


 魔人ラフテリアは楽しそうに笑っている。その姿は気味が悪いほど美しかった。


「リアが楽しそう。僕も嬉しいよ。連れて行くというのは、最近来た子かな?」


 どれぐらいの割合で魔人に転身するかはわからないが、最近と言われれば最近なのだが、その言葉は曖昧過ぎる。


「ラフテリア様が態々確認しに来られた方です」


「うん。うん。彼はここから西の町に住んでいるよ」


 ロビンはここから西の町に居ると言うが、土地勘のないシェリーには困る言葉だ。いや、マップ機能を使えば町があることはわかる。しかし、魔人ではないただの人がウロウロできる場所ではない。 


 だから、シェリーはロビンに提案する。


「ロビン様がそこまで案内をしてくださるのであれば、その間だけ体の構築をしてさしげるというのはどうでしょうか?」


 その言葉にロビンの青い目が光る。首だけのロビン。その首には茨の痣がぐるりと巡っていた。そう、オリバーと同じく聖女に隷属された聖人。ただ、魔人ラフテリアの元にはロビンの首だけしか残されなかった。だから、首だけのロビン。


「それは、夜の稽古と同じ姿になれるってことかな?」


「ええ、そうです」


「リアの前で、その姿になれるなんて嬉しいな」


 首だけのロビンはとても嬉しそうに笑った。




「『亡者招来(死者の召喚)』」


 今現在、目の前にいる首だけのロビンが死者かと問われれば疑問に思わざる得ない。


 人は首だけでは生きてはいけない。

 死んだ人は普通生き返えらない。


 死者は言葉を発しない。

 思考することもない。


 そして、体は別の者として生きている。


 とても奇っ怪な存在だ。それが、聖剣ロビンである。その存在が二本の足で立ち首と体の付け根を撫でている。その皮膚には茨の紋様が刻まれたままだ。


「あれ?あれ?ロビンが居ない?また、一人でどこかに行ったのかな?」


 お腹を抱えるほど笑っていた魔人ラフテリアが、腕から重みが無くなった事に気が付き、ロビンを探しているが、その口から恐ろしい言葉が聞こえてきた。首だけでロビンが時々いなくなっているという事実。


 首を傾げている魔人ラフテリアの体がふわりと地を離れた。ロビンによってラフテリアの脇に手を添えられ、掲げ上げられ宙に浮いている姿が魔人マリートゥヴァの目に映る。

 その姿がにじみよく見えなくなっていたが、マリートゥヴァが心から望んでいた姿が目の前にあった。

 己の贖罪。聖女様とその番を引き離し、死に追いやった国の罪。これが夢であっても、己が望んで見せた幻でもよかった。


 己も魔人となり、ラフテリアに仕えることで報いようとも、償うことの出来ない罪。それが報われたような気がした。



「あれ?ロビンが人だ」


 ラフテリアのロビンに対する感想は少しズレていた。


「人だね」


 そんなラフテリアを愛おしそうに見つめるロビン。


「なんで?わたしロビンを人に出来なかったよ?」


「シェリーちゃんが少しの間だけ、人にしてくれたんだ」


 ロビンのその言葉にラフテリアは、ロビンの手から離れ地面に降り立ち、シェリーに詰め寄る。


「ずるい。ずるい。ずるい。わたしじゃロビンを人に出来なかったのに!なんで6番目はできるの!」


 強大な魔力がシェリーに覆いかぶさる。シェリーのツガイたちが動きだそうとしたのをシェリーは止める。シェリーは心得ていた。ラフテリアを止める言葉は何か。


「ラフテリア様、私は白い神様にお力を戴いていますので」


「え?そうなの?」


 瞬時に黒く重い力が霧散する。そして、ラフテリアは濁った目を細めてシェリーを見て笑った。


「そうなんだ。神様から貰った力なんだぁ。6番目は凄いね。神様から貰ったのかぁ。わたしは神様との約束を守れなかったからダメだったのかなぁ」


 そして、悲しそうに笑う。ラフテリアの口癖だ。神との約束を守れなかったと。

 ラフテリアも己を責めていたのだ。


 世界の浄化という役目を与えられたというのに、欲を出してしまったが為に番であるロビンを死なせ、聖女と真逆の存在である魔人というものに成ってしまったと。



脱字報告ありがとうございました

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