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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
23章 孤独な世界と絆された世界

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 炎王はユールクスに会いに行ってくると言って、転移で去っていった。シェリーが頼んだお米の件でダンジョン産の米を出してくれるように口添えをしてくれるのだろう。


「ダンジョンマスターは鳥なのか?」


 シェリーの隣で黒い鳥を肩に乗せたオルクスが話している。始め、黒い鳥はシェリーの肩に止まろうとしたのだが、5人のツガイの視線を受けて急遽オルクスの方に方向転換したのだ。賢明な判断だ。


『鳥じゃないよロロだよ』


 姿は鳥なのに鳥であることを否定しているダンジョンマスターは翼で方向を指しながら道案内をしてくれている。


「あ!マスター様、こんにちは」

『コンニチハ』

「マスター様、今日は良い天気ですね」

『そうだねー』


 町の人々は黒い鳥とすれ違う度に声を掛けていっている。人々の生活の中にこのダンジョンマスターは混じって過ごしているのだ。


 そもそもだ。ダンジョンマスターがダンジョンの外に出てウロウロしているのがおかしい。

 ただ、この姿を見るとシェリーは無性になんとも言えない衝動に駆られた。陽子はこの姿を目にすればどうするだろうかと。


「町の皆さんと仲がいいのですね」


 シェリーは思わずそんな言葉が出ていた。その言葉に黒い鳥は首を傾げている。


『仲がいい?んーちょっと違うかなー。僕と町の人々は持ちつ持たれつっていう関係かなー?』


 黒い鳥は翼をバタバタとして周りを見るように示した。


『見て貰えばわかるけど、ここは魚人の町なんだよー』


 確かに、すれ違う人々は肌に薄い鱗を纏い、手には水かきが在るのが伺える。


『町の人にダンジョンで漁をしてもらって、僕はダンジョンを維持していく。そして、この町がダンジョンだから、ダンジョンの中にいる人は守ってあげる。ただ、それだけの関係だよー』


 ダンジョンマスターはまるで希薄な関係だと言わんばかりだ。人々は生きる為にダンジョンを利用し、ダンジョンマスターはダンジョンを維持していくために、人々を守る。だたそれだけだと。


「海が目の前にあるのにダンジョンで漁をするのか?」


 グレイが不思議そうに聞いてきた。ラース公国は東側にしか海がなく、グレイは恐らく海というものをよくわかっていないのだろう。


「海で漁をしようとすれば色々大変だからだろ?」


 四方を海に囲まれた炎国の王太子だったリオンが言う。


「グレイは船に乗ったことはないのか?」


 オルクスが不思議そうに聞いている。

 西側から北にかけて海に面しているギラン共和国は帝国の動きを注視するために海運にも注視しているとフェクトス総統から聞いたことがあるとシェリーは船が浮かぶ湾に視線を向ける。


「無いけど?」


 グレイはそう答えるが、そもそもラース公国は海運に力を入れてはいないので、国が所有している船はない。グレイが無いと答えるのは当たり前なのかもしれない。


 そんな話を横で聞きながら、シェリーは湾に入って来る船を眺める。帆はなく、外洋船のフェリーを連想させる形に見える。

 それ程大きくはなく100メル(メートル)程の長さで、魔石を動力源をした船だと一度説明を受けたことがあるなとシェリーが思っていると、その船の横に波が沸き立ち、船を丸呑みできるほどの大きさのサメの姿をしたモノが船に襲いかかろうと海から飛び上がった。が、そのすぐ背後に現れたサメの魔物よりも巨大なヒレの付いた蛇に頭から咥えられ海に沈んでいった。


 確かにあんな物がいる海で安全には漁はできないだろう。


「船の上で戦うのは中々骨が折れるからな」


 その光景を遠目で見ていたオルクスが言った。グレイも同じ方向を見ており、『ああ』と声をもらして納得している。百聞は一見に如かずと言うことだ。


『ここの海は深いからね。大きなモノが寝床にしようとよく入り込むんだよー。悪さをしなければ、放置するけど、ああやって悪さをするヤツは食っちゃうんだー』


 ダンジョンマスターは本当にこの町の人を守っているようだ。あの蛇のような魔物がダンジョンマスターの手の物だったのだろう。


 あのユールクスでさえ、ここまでのことをして、己のダンジョンと言うべき国で暮らす人々を守ろうとはしていない。彼が動くとすればきっと人々が対処の難しい脅威に対してのみだろう。


「なぜ、あなたはそこまでして人々を守るのですか?」


 これはダンジョンとしては歪な在り方ではないのだろうか。ダンジョンとは餌を用意し、獲物が食いつくのを待つが如く、人を獲物と見るのが普通だろう。でなければ、ダンジョンを維持することはできない。


『え?なぜかー?』


 黒い鳥は考えたことも無かったと言わんばかりに首を傾げている。


『それは僕が生きていくためだ。徐々に死に向かって行くのは気が狂いそうになる』


 その言葉はダンジョンマスターの本心なのだろう。今までと声質が違っていた。


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