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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
23章 孤独な世界と絆された世界

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 空と海の境界線が遠くに見え、傾斜地に家々が建ち並び、開けた海側にも多くの建物が建っている。そして、半円状になった湾内には桟橋があり、漁船だと思われる小さな船から、商船と思われる大きな船も海に浮かんでいるのが見られる。


 転移してきたところは港町が見渡せる高台のようなところだった。


「ここが町の入り口だ」


 そう言って炎王は港町に向かって坂を降りていく。


「不思議な形の町だな」


 グレイが眼下に見える港町を眺めながら言う。確かにおかしな地形だ。炎王が町の入り口だといったところはまるで山の上から港町を見下ろしているかのような坂道が続いているのだが、その形が湾に沿って続いているのだ。強いて言うなら巨大カルデラを連想させる地形だ。

 そして、この世界では常に魔物という外敵が存在しているため、大抵は町を囲むように外壁が存在しているのだが、それが見当たらない。


「確かに普通はこんな所に町は作らないよな」


 グレイの独り言に炎王が答えた。


「元々はこの辺りは山だったらしい。この湾は暴君レイアルティス王とエルフの王との戦いの跡だ」


 何気ないように炎王は口にしたが、目の前に広がる巨大カルデラのような湾が、たった2人の戦いによる戦闘の傷跡だというのだ。


「ここもそうなのですか」


 スーウェンは王と王の戦いの跡がこのようになっていることを普通のように受け入れている。それも、ここ以外にもこれ程の規模の戦闘の跡だあるかのように言っている。


「え?マジで王同士の戦いでこんな事が起こるのか?すごいなぁ。エルトには来たことはあったけど知らなかったな」


 シェリーに抱きついたままだと睨まれたため、仕方がなく手を繋いで歩いているオルクスが目を輝かせながら眼下に広がる湾を見つめている。


「まぁ。俺もこの話を聞いた時は驚いたが、エルフの王と対抗するにはこれほどの力が必要だったということだ」


 炎王は何かを懐かしむように目を細め遠くを見ていた。千年という長き時の中に埋もれた風景を思い出しているのだろう。


「それでその戦いの所為で元々ここにあったダンジョンの入り口が海に沈んでしまった」


 その言葉にシェリーは目を見開いて炎王を見る。ダンジョンの入口が封じられてしまったダンジョンは、ダンジョンマスターの未来は閉ざされてしまったに等しい。


「200年という時をダンジョンマスターが試行錯誤してダンジョンを維持いていたときに俺は出会ったんだ。ロロ、久しぶりだな」


 炎王は斜め上を見て誰かに呼びかけた。その方向には建物の屋根があり、一羽の黒い鳥が止まっているだけだった。


 その一羽の黒い鳥は羽を広げ、滑空するようにこちらに向かって来て、炎王の肩に止まった。


『エン。百年ぶりか?』


「いや、2ヶ月前に会ったし」


 炎王が親しく話す鳥を見てシェリーは思った。黒い羽に黄色い嘴。目の横に黄色い模様が入っている鳥って九官鳥?見た目は九官鳥だ。これがダンジョンマスターなのだろうか。シェリーは先程炎王が呼んだ“ロロ”という名を思いながら視た。



ロロ(憑依中)


HP 2000

MP 689490


STR 5500

VIT 680

AGI 3800

DEX 1000

INT 30000

MND 5000

LUK 400



 ·············ダンジョンマスターではない。ロロという鳥に何かが憑依をしているようだ。


「という事だから、裏ダンジョンの最下層に案内してやってくれないか?」


『いいよー。君も来るのかい?出来れば来ないでほしいなー』


 ロロと呼ばれた鳥は炎王に一緒に行動するなと言っている。それに対し炎王は苦笑いをしながら答えた。


「俺はいかない。別の事を頼まれているからな」


『ははは、君はいつも忙しそうだね。ダンジョンを荒らされるのは好きじゃないから良かったよ』


 黒い羽を大きく広げた黒い鳥は炎王から離れ、道に立てかけられた看板に止まった。


『さて、黒のエルフと同じモノは誰かな?』


 黒い鳥は首を傾げながら、そう尋ねてきた。アリスと同じ存在。シェリーは黒い鳥に視線を向け答える。


「私ですが?」


『へー。やっぱり黒いね。強い力。うんうん。ダンジョンを無闇に荒らさないって言うなら、案内してあげるよ。友達からの頼みだからねー』


 黒い鳥は先程から同じ言葉を繰り返して言っている。ダンジョンを荒らすことを嫌う言葉をだ。余程の事があったのだろう。しかし、ダンジョンに関わるモノは同じ思考を持つものなのだろうか。

 陽子もダンジョンを壊された事を未だにグチグチと言い続けている。ダンジョンに対する愛ゆえか。それとも己のこだわりを穢された事への怒りだろうか。


 恐らく後者のような気がする。



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