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食事が終わりお茶を飲んでいる間に、カイルが片付けまでしてくれた。前世も含め一人立ちしてから今まで家事をしてくれる人はいなかったので、シェリーは感動していた。
このままいけばシェリーがカイルに落ちるのは時間の問題になりそうだ。
「シェリー、今日の次元の悪魔について知っている事を教えてくれないかな。」
カイルは保管庫から自分用にワインを持ってシェリーの隣に座った。
「すべてオリバーから聞いた話だから、嘘か本当かは確証がない話です。」
「それで構わないよ。セイルーン竜王国では聞いた事がないからね。」
「次元の悪魔は魔物の凶暴化と同じように魔王出現の予兆として言われています。」
「魔王?20年前に倒されたというあの魔王?」
「そう、あと5年から10年程で復活するそうです。」
「え?いきなりそこいっちゃう?それもオリバーさんが言っていたの?」
「この情報は謎の生命体からの提供です。」
「絶対的な情報源だね。」
「30年前から大陸の所々で出現がみられたそうです。外皮が固く剣が通らない。魔術の効力が見られない。まさに人外な化け物ですね。豪腕な種族が外皮を切り、魔導に長けた者が肉体を焼く。それ以外のものたちが陽動に動く。それでやっと倒せるのです。」
「もしかしてトーセイのギルドマスターってその時活躍した人?」
「元々はシーラン王国の統括副師団長だったらしいです。騎士としても実力があって人々から慕われ、国の防衛ラインのギルドマスターなんて、擂り潰すほどこき使われそうな人員配置ですよね。」
酷い言われようである。
「あと、魔導に長けたエルフ族にも協力を仰いだそうですが、あそこはエルフ族以外は滅んでもいいと主張したそうで、魔導王国のグローリア国に頼んだのが運のツキでしたね。」
「異界からの勇者召喚か。」
「多種族混合のシーラン王国、勇者率いる魔導部隊のグローリア国、聖女率いる補助魔術部隊のラース公国、軍国主義の魔道具攻撃部隊のマルス帝国、商業国の補給部隊のギラン共和国。以上の大陸の北部の国で構成された討伐部隊が、次元の悪魔と戦いで100分の1にまで減りました。」
「100分の1。」
「敗戦それも瀕死レベルです。残ったのは100人程です。魔王の戦いでは半数が亡くなり、そのたくさんの犠牲から次元の悪魔の特性がわかったそうです。
まず、今回のように頭部がない者はザコです。知能が無いので体系の特徴にあった攻撃しかしません。今回の者は武力特化です。
次に翼が有る者は空中戦になります。機動力特化です。
その次は体のどこかに目が有る者は魔眼を使います。一番厄介だったのが石化の能力だったそうです。
最終形体は頭部がそれぞれに付随する者です。知能があり、人の心に付け入り同士打ちをさせたり、精神汚染で狂気化を誘発させたり、亡くなった方の8割の原因がこれに当たるそうです。」
「ねえ。シェリーは聖女として、全部一人で背負うつもりだったの。」
「そうですね。今回、凶暴化した魔物との戦闘は考えていましたが、次元の悪魔との戦いは想定外でした。聖女が2人存在している現在、わたしの力が万全ではないことは確かです。が、ザコを一発で仕留める事が出来なかったのも事実。あの人をおちょくる謎の生命体の思う通り行くのも癪です。色々考え直さないといけないようです。」
少し考えます。と言ってシェリーは部屋を出た。
ソファに残されたカイルは今後を考える。
ここの大陸とは遠く海を渡ったところにあるセイルーン竜王国では聞いた事がない話ばかりだった。
カイルがこの大陸に来たのは魔王討伐の2年後だった。大陸の南側に上陸したため魔王とは噂話か吟遊詩人が歌う勇者の物語ぐらいで平和そのものだった。
北に行けば行くほど戦いの跡は濃くなって行ったが、脅威が去ったあとの人々は笑顔が溢れていた。だから、このような話は噂にすら不思議なぐらい聞いたことがなかった。
次元の狭間の話は聞いたことがある、突如として空が割れるのだと。だが、次元の悪魔については何もなかった。見たものが生きていないのか、口をつぐんだのか。その両方なのだろう。
そして 、シェリーを聖女にしたこの世界の高位な存在はシェリーに凶暴化した魔物、次元の悪魔と魔王を討伐するように神託を示した。
己を含めシェリーの番がシェリーを支えるために存在する。
番が一人というのが常識のこの世界で受け入れられるかと言えば、無理だ。それが分かっているからシェリーは一人で背負う事を決めたのだ。
他の番を受け入れられるか。
受け入れなければならないのだろう。
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