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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
23章 孤独な世界と絆された世界

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「リリーナ、俺は別にリリーナに不満があるわけじゃない。ただ、なんというか···うーん。難しいなぁ」


 リリーナに向ける感情とシェリーや陽子に向ける感情は別のものだと言いたいのだろうが、いざ己の感情を言葉にするというのは難しいものだ。


「私達は異質なのです」


 シェリーがポツリと言葉を落とした。


「魂自体が異質なのです。普通では受け入れられないのです。だから、黒のエルフは同族に殺された」


 スーウェンがビクリとシェリーの言葉に反応した。


「水龍アマツは誰にも真実を告げすに孤独な死を選んだ」


 炎王が目を見開いてシェリーを見つめる。


「世界はこれではいけないと思ったのでしょう。この世界の為に喚んだ者達が、世界の思惑から外れて死んでしまうことに」


 シェリーは目の前の二人を見る。千年という長き時を共に生きた二人に。


「だから、異質な魂を番という楔でこの世界に縛りつけた」


 シェリーは歪んだ笑みを目の前の二人に見せる。


「だから、炎国はここまでの国に至ることができた。黒狼は世界の思惑通りに事を成し、最後まで戦い抜き番と共に命を落とした。勇者は聖女と共に世界を守る事ができた」


 本当に世界の思惑通りに事が運んだのだろう。勇者が別者だった以外は。


「ただ、異質は魂はどれぐらい時が過ぎようと異質なのです。その異質な者が同じ異質の者を見つけて一時の時間を共有する。この世界に一人ではないという認識の確認でしょうか。別に特別な感情という物のは無いのです」


「感情がない?」


 リリーナがシェリーの言葉を繰り返した。


「まぁ、感情がないというのは気持ちが悪いものかもしれませんが、そこに在るという認識。存在の認識のために理由をつけて会うという感じでしょうか?炎王?」


「ああ、そんな感じに近いな。」


「だから、リリーナさんが気にされることは何もないのです」


 そう締めくくりシェリーは緑茶を一口飲む。炎王はシェリーの話の途中から何か言いたげな表情していたので、シェリーは視線を向け話すように促した。


「天津は孤独だったのか?」


「私は天津さんではありませんから、知りませんよ。ただ、楽しかったけど後悔はしているとは言っていました」


「天津に番が居れば過去は変わっていただろうか」


 天津に番という者がいたとは聞いていない。しかし、変革者は世界から逸脱した存在のため番の絆は認識できない。だが、大切な者はいたと聞いてはいた。


「はぁ。だから、過去は変えることはできません」


「わかってはいるが、ルギアが天津の番だったら天津は死を選ばなかったかと思ってしまったんだ」


 ルギアが誰かは知らないが、恐らく英雄グラシアールのことだろう。


「エン・グラシアールとしてリリーナさんが居なければどうなっていたと思いますか?」


「え?そんなこと思った事なかったな」


 炎王は首を傾げている。考えもよらない事を問われたのだろう。だから、シェリーは一つのありえた道を呈した。


「自分のやるべきことを突っ走って、そのままエン・グラシアールとして生き抜いたのではないのでしょうか?」


「その言い方だと俺はここに居ない?ああ、世界に繋がれるとはそういう事か」


「そうですね。こうやって私がここで足止めをされているように」


 そう、本当ならシェリーは今頃エルトのダンジョンに向かっているはずだった。しかし、二人のツガイが己の得物が壊れたと言い始め、一人のツガイが二人を擁護し、ダンジョンに向かおうとするシェリーを説得しようとした。終いには神までもが口出しをしてきたのだ。

 先走るシェリーを引き止めるように


「確かにリリーナが居なければ、俺はアリスの予言通りに殺されていたんだろうな。今になってようやく予言の意味が解った気がする。もう少し普通に言ってくれよ。あれじゃ、解りにくいんだよ。」


「世界の覇者と言ってもいい者たちを敵に回して一人で戦っていたのですからマトモではなかったと思いますよ」


「いや····。わかっている。まともで有ればユールクスをあそこ迄の者にはしなかっただろう」


 己の死という未来しか視えなくなってしまったアリスが生き足掻いた証を見せつけられた者たちは理解していた。彼女は狂っていたのだろうと。


「はぁ。そのようにお二人だけでお話をしているのを見せつけられると、どのような理由があろうと嫉妬してしまいます」


 リリーナはどの様な理由が並べられようと、目の前の二人の姿を見てしまえば、自分の入る隙間などないと、理解させられてしまった。


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