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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
22章 獣人たちの騒がしい大祭

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「ちょっと待て!そんな話聞いていない!」


 グレイが立ち上がってカイルに詰め寄るが、そのカイルの膝上に座っているシェリーにどうでもいいような虚ろな目線を向けられた。


「シェリーは知っていたのか?」


「はぁ。他国では高ランクの冒険者の間で有名な話のようです。この国の冒険者にとっては常識だそうですが?」


 ギラン共和国が出来る前から存在しているダンジョンだけあって、この国の人達にとっては常識の範囲のようだ。

 しかし、ダンジョンに入ることが許される者が限られてくるので、『王の嘆き』に入ることが出来るということはギラン共和国の冒険者にとって一種のステータスになるのだ。


「しかし、先日ダンジョンに入った時は罠などありませんでしたよ。かなり、行動範囲がひろかったですが、一度も罠などに足止めを食らうことはありませんでした」


 スーウェンがおかしいと言わんばかりに首を捻っている。グレイも頷くように首を縦に振っている。


「そのようなものダンジョンマスターの采配でどうにでもなります。前回はダンジョンマスターからの依頼でダンジョンに潜ったのに罠で足止めされてしまったら意味がないですよね」


 シェリーは何を言っているんだと言わんばかりに呆れた目をしてる。


「それじゃ、最短距離を進んで罠に足止めされなかったから、早かったと?」


 リオンがあまり納得していないのか、不服そうに聞いてきた。


「あ、その話は表ダンジョンの事だから、裏ダンジョンは魔物の猛襲と致死的な罠が至る所にある。だから、魔物に囲まれる前に、進行方向の魔物のみ排除して、罠に足を取られる前に走り切る。ただそれだけ」


 カイルが事も無げに答える。ただ前に進むのみだと。


「普通に進むのもありだと思うけど、常時結界展開でもすれば行けるかな?シェリーはどう思う?」


 ダンジョンの攻略と言うものを楽しむ為に寄り道をしながら進むものありだろうとカイルが言っているが、内心難しいのではないのかと思っているようだ。


「ここの裏ダンジョンを普通に攻略ですか?そんな事をするのは奇人と噂高かった賢者ユーリウスぐらいでは?」


 シェリーも同じく裏ダンジョンを探索するのは普通はしないという意見だ。珍しい素材が取れることは勿論だし、魔物の素材も高額で取り引きされるのだが、今回はアルテリカの火と最終ボスで得た報奨しか手に入れていない。いや、魔物を倒した後にドロップしてくる素材や寄り道をして素材を採取していると命の危険が伴ってくるので、全て放置したのだった。


「おまたせしました」


 受付けの女性が今回の報酬に関する契約書と先程口にしていた座席券を持って来た。


「カイル様。こちらが今回の報酬となります。ご了承いただけましたら、サインをお願いします。それから、これが座席券となります。会場の入り口でお渡しいただければ係の者が案内いたします」


 カイルがシェリーを膝の上に乗せたままサインをしているテーブルの上に6枚のコイン様の物を置かれた。数字が刻まれたコインだ。どうやらこれが座席券という物らしい。


「報酬は振り込ませていただきます」


 そう言って女性はカイルがサインをした契約書を持って元の受付けの席に戻って行った。


「やっぱり俺には裏ダンジョンは無理だったよな。程んど休みなしで20階層攻略するだけで、凄く疲れた」


 腰を下ろしてとても疲れたように項垂れたグレイが言う。


「皆さんお疲れだと思いますので、ゆっくり休んでください」


 そう言ってシェリーはカイルの膝の上から降りる。そして、少し歩を進めながら


「私は帰りますの·······」


 目的の物が手に入り、直ぐに使えるように加工をしてもらおうと一旦家に戻るため、シェリーは自分だけ転移で家に帰ろうとしたところで、オルクスに目の前に立たれ、疲れたと項垂れていたグレイに腕を掴まれ、構築しようとしていた転移陣をスーウェンに魔術干渉され、さり気なく気づかれないように床に落とした転移の魔石をリオンに壊され、ニコニコしているが、笑っていない目をしているカイルが立ち上がった。


「一人になるのは駄目だって言っているよね」


「ちっ!」


 一人で家に帰ることを阻止されてしまった。





 秋晴れの雲ひとつ無い青い空が頭上に広がっているのを、シェリーはため息を吐きながら眺めていた。

 周りは熱さを感じるほどの熱狂に占められ、人々は中央にいる者たちに声援を送っている。


 あれからシェリーは一人で帰ることは許されず、ミレーテで一晩泊まり、本戦が始まるというので朝から、会場に連れてこられてしまった。予選を勝ち残った8名でトーナメント戦を行い、その勝者がオルクスに対する挑戦権を得るというものだった。

 しかし、シェリーはここに来てから一度も中央に目を向けることは無く、空を見上げていた。


 この国は色々残滓が残されている。この場所は普段は中央区の広場となっている場所だった。なにもない人々が憩いの場とするようなところだった。

 しかし、今はどうだろう。何もなかった場所には簡易的作られた階段状の金属製の足場にどう見てもプラスチック製の座席が並べられていた。形的には闘技場の様に円状になっており、中央には舞台のように一段高くなっているところがあった。


 この国ができた当初から形は違うが祭りは存在していたということはコレを誰が作ったかなど明白だ。街並みに合わせた石造りのコロッセオ風ではなく、簡易的だが敢えて近代的な要素を取り入れた造り。残滓だ。それとも故郷への妄執というべきか。ああ、吐き気がする。



来ていただきましてありがとうございます。


な、なんといつの間にか50万PVに達してました。


誤字脱字も多く(気づけば直していますが····)話が進んでいる様で進んでいない『番とは〜』を読んでいただいている読者様には感謝しかありません。ありがとうございます。


これからもコツコツ投稿してまいりますのでよろしくお願い致します。m(_ _)m(平に平に)

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