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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
21章 聖女と魔女とエルフ

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「話が進みそうにありませんので、シェリー・カークスさんにお尋ねしても宜しいでしょうか?」


 ヴァランガ宰相がシェリーに尋ねる。ヴァランガとしてはシェリーの方がまだ扱いやすいと思っているのだろう。


「なんです?」


「ナヴァル公爵夫人の出席を希望した理由を答えていただけますか?」


「ちっ」


 シェリーは思わず舌打ちをする。今回の会談までの準備期間があまりにも少なすぎたことで、話し合いに支障をきたしている。

 無理矢理ユーフィアの事柄を入れ込んだシェリーだが、こういうときではないと正式に公式文書として残らないだろうと踏んでのことだ。

 有耶無耶にはさせないという意思の現れだ。


 シェリーはイーリスクロムともう一度話し合いの場を持てないだろうかと広報のサリーに頼んでみたが、二転三転する今回の会談の準備に追われているということで、話し合いの場が持てなかったのだ。

 いつもはフラフラとしているイーリスクロムと遭遇するのに肝心な時には会うことができないなんで、使えないクソ狐だ。




 しかし、先にユーフィアの話となるとシェリー的には不都合なのだ。目の前の人物はきっと以前スーウェンから聖女と紹介された者はと別人だと思っているはずだ。

 グレイはその事により問題が起こりそうだ言っていたが、シェリーはそれを利用しようとしていた。うまく事が運べばシェリーの思惑通りに行くはずだと考えての行動なのだ。


「ユーフィアさんがいることで何か不都合でもあるのですか?あなた方曰く、所詮人族なのでしょう?」


 そう、シェリーは何も知らないフリをする。人族であるユーフィアがエルフに対して行った事も、同じく人族であるオリバーが行った事も何も知らないフリをする。


 人族と蔑んだ者を恐れるのかをいう意味を込めて目の前の人物に視線を合わす。


 その様に言われてしまえば、プライドの高いエルフ族はそれ以上ユーフィアの事に関して口は出せなくなるだろうと。


「まぁ、よいでしょう。魔女が何もしないのであれば、文句はありません」


 案の定、エルフの族長は矛先を収めた。


「「レイグレシア様!」」


 エルフの族長の言葉に両隣から不満そうな声が上がるが、手を上げて両隣の二人を諌める。


「それでは改めまして──」


 プライドの塊と言っていいエルフ族に意見を変えさせたシェリーに驚きつつ、ヴァランガ宰相はやっと話し合いを始められると安堵し、再度挨拶から始めた。




 話し合いは順調に進んで行った。事前にエルフ族にシェリーの意見を伝えていたようで、ほぼシェリーが先程言っていた内容で意見がまとまりそうだが、ただ一点『国の要請には応じない』ということがエルフ側としては受け入れられないようだ。


 それはそうだろう。言い方を変えればシャーレンが要請し、聖女を囲い込む事が出来ないということだからだ。


「ですから、冒険者ギルドを通してなら依頼を受けますと言っているのです」


「それは困りますね」


 シェリーの言葉にエルフの族長は受け入れられないと言う。冒険者ギルドは国の影響を受けない独立した組織だ。そこを通して依頼を出すということは、シャーレンで囲い込むことが出来ないということだ。それはレイグレシア個人としてもエルフ族としても受け入れられないことだ。


「何が困るのでしょうか?仕事として依頼をされれば要請を受けますよ」


 エルフの族長は冷笑を浮かべシェリーの言葉を聞いているが、両隣のエルフはイライラとした雰囲気が漏れ出している。

 シェリーが生意気にも自分の意見を押し通そうとし、自分たちの長であるレイグレシアの意見を否定していることに苛立っているのだ。


「困りますね。国として頼むこともあります。それに、聖女なら我が国に来ていただかないといけませんから」


 エルフの族長は意見を変えることはないようだ。

 しかし、シェリーは目の前の人物は馬鹿なのだろうか思い始めた。気づいていない。全くもって気がついていない。

 聖女を囲い込むことしか考えていないのだろうか。


 始めは気が付かなくても、目の前にシェリーが座っているのだ。途中で気がつくだろうと思っていたのだが、全くその様子がない。


 もしかして、目が見えていないのだろうかと本気で考えてしまう。オリバーの暴力が致命的だったのかとも。


「下等生物の人族風情が!我らに意見するなど千年早いわ!そもそも聖魔術が使えるかどうかも証明していないではないか!」


 我慢の限界にきたのか、紫の髪の男性がテーブルを叩きながら立ち上がり、シェリーに噛みつくように言う。


「そうじゃ、お前ごときがレイグレシア様に意見するなどありえないのじゃ」


 青髪の女性がシェリーに見下すような視線を向けながらテーブルを叩く。

 どうやら、両隣の二人も同じらしい。盲目なのだろうか。


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