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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
21章 聖女と魔女とエルフ

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「魔力の圧縮・・・」


 カイルは右手の手のひらを上に向けて呟いた。シェリーの言った事を実践しているのだろう。


 シェリーはふとあることを思い出し足を止める。そして、陽子に向かって言った。


「陽子さん。近々第6師団長さんがここに来ると思うので対応してくれませんか?」


「ん?ユーフィアちゃんの旦那さん?どうしたの?」


 陽子は首を傾げてシェリーを見る。この国の英雄として実力があるクストが今更ここに来て何をするのかと言う疑問なのだろう。


「神からの啓示です。ユーフィアさんの為に今のままでは力が足りないようなので、ダンジョンに行くように言われました」


「そっかぁ。そうだよね。まだまだ黒わんこ君の足元にも及ばないしね。来たらちょっと遊んであげようかな?」


 陽子がニヤニヤと笑っていると隣から突如として爆風が吹き荒れた。木々がなぎ倒され、地面がえぐり取られ、道がなかった森に3メル(メートル)程の幅の地面がむき出しになった真っ直ぐな道が出来ていた。


 シェリーは右手を前に突き出したままのカイルを見ると、やってしまった感で苦笑いを浮かべている。


「竜の兄ちゃん、流石だね!ササッちのあんな適当な言葉でできてしまうなんて」


 失礼な。

 しかし、もう少し圧力を上げれば天津の様に発火するところまでいくだろう。

 そう、天津が使用する『龍の咆哮』とは、ただ単に濃縮した魔力を対象物に叩きつけるものである。魔術やスキルなどでなく実戦で極めてシンプルにいらない物を削ぎ落とし強力に攻撃するというもの。この事から天津が戦い抜いた当時の戦いの苛烈さが垣間見えるというものだ。


「すまない。破壊してしまった」


 カイルはダンジョンの風景を壊してしまったことに謝っているが、陽子はニコリと笑い


「いいよ。いいよ。これぐらいどうとでもなるから。それに丁度いい道が出来たよね。スヴュート草はこの先の泉の側にあるんだよね」


 先に進もうと足を進めようとしたところで、後ろから草をかき分けて来る足音が近づいてきた。

 リオンと炎王がカイルの魔力が大きく動いたことで慌ててこちらに来たのだろう。


「何があった?」


 炎王がこの風景を変えた原因であるカイルに尋ねる。しかし、カイルは苦笑いを浮かべたまま答えない。代わりに陽子が炎王の前に行き


「エンエン!竜の兄ちゃん凄いよ!あまつちゃんの技の劣化版までササッちの適当な言葉でできるようになったんだよ」


「なんだよ。あまつちゃんの技って」


「え?知らない?」


 陽子はてっきり母親である天津の技を炎王が知っていると思い言ってみれば、炎王は不可解な顔をして、陽子を見る。それに対して陽子も不可解な顔をする。


「ということはエンエンは出来ないの?」


「だから、何の話だ」


 炎王は陽子では話にならないと、シェリーを見る。シェリーは説明しろという視線を受け、ため息を吐き、そして言葉も吐き出す。


「はぁ。炎王。リオンさんからどのような話をされました?」


 全く違う事をシェリーは言い出した。それに対し炎王はリオンをチラリと見て目の前の変わってしまった風景を見る。


「自信喪失ってやつだ」


「そうですか。以前天津さんに会わせたように私はこの世界で強者と呼ばれる者達の残滓から教えを請うことで、戦いを学んできました」


「何の話だ?」


 全くもって今の現状でもリオンのことでもない話をしだしたシェリーを炎王は目を細めて見る。しかし、シェリーは淡々と話続けている。


「リオンさんは強者を目の前にして何処か諦めの境地なっているようですね。貴方は始めから強者だったからわからないかもしれませんが、リオンさんがそうなったのは貴方の所為ですよ」


「あ?俺が始めから強者だったと?佐々木さんは俺の何を知っていると言うんだ!」


 炎王はシェリーの言葉に苛立ちを顕わにした。シェリーは炎王から睨みつけられても、炎王の目を見て話続ける。


「初めてSクラスの魔物を倒したのはいくつですか?」


「12の時だが、それがどうした」


「それが、強者と言わずに何なのですか?」


 シェリーは呆れたように言葉を漏らす。


「・・・」


 言われれば、そうなのかもしれないと炎王は遠い目をしている。


「リオンさんは魔力があるのに使用しないのはなぜですか?貴方が無駄だと切り捨てたのですか?貴方と比べれば殆どの人が虫ケラ同然ですよ」


「いや、そこまで言っていない」


「では、魔術創造スキルで魔術を使っているから普通の魔術の使い方がわからなかったと?」


「「「は?」」」


 炎王はシェリーに指摘されたことが当たっていたのか顔を背けている。そして、カイルとリオンと陽子が信じられたいと言うふうに炎王を見る。


「はぁ。魔力の使い方なんて色々あるのですよ。天津さんの技もいい例です。」


 そう言ってシェリーは右手を前に出して魔力を纏わす。高密度に魔力を纏わしていくと赤い炎が生み出されていた。


「これはただ単に魔力のみで構成されている事が炎王にはわかりますよね。更に高密度すると、青い炎になります。このまま解き放てばどうなりますか?」


「辺り一帯が破壊の炎に包まれるだろな」


 炎王は青く変化した炎を見つめながら答える。そして、物語の一節を紡ぎ出した。


「『水龍の炎は神聖なる蒼き浄化の炎、それは人々を驚異から守る為に振るわれる』これの事だったのか」



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