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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
21章 聖女と魔女とエルフ

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 シェリーは洞窟の中を歩いていた。人が2人並んで歩けるほどの幅の土と岩でできた洞窟だ。その洞窟の中でシェリーは明かりを持たずに歩いている。明かりは洞窟内に漂っている小さな淡く光る発光する物体が辺りを漂っているので必要はない。


 シェリーの後ろからはカイルとリオンが付いてきている。他の3人はというと、スーウェンは動くのもままならない状態であり、グレイは昨日の傷が癒えていなく痛みを感じているようだったのでオリバー作回復薬を飲ませれば撃沈し、オルクスは裏庭を見に行ったまま戻って来なかったので、カイルとリオンのみが付いて来ていた。


「シェリー、どこまで行くのかな?」


 シェリーが黙々と半刻(1時間)程歩いていたところでカイルが聞いてきた。この洞窟はシェリーの家の地下から続いている洞窟なのだ。

 シェリーは陽子を訪ねに行くと言っていた。王都から『愚者の常闇』ダンジョンに行くには南に50キロメル(km)下ったところにあるのだ。まさかそこまで歩いて行くつもりなのだろうか。


 カイルの言葉にシェリーはチラリと後ろを見て、口を開く。


「もう着きます。ダンジョンの方には行きませんから」


「ここはダンジョンじゃないのか?」


 リオンが周りを不思議そうに見ながら聞いてきた。


「ダンジョンと言われればダンジョンかもしれませんが、ここはただの通路です。裏道のようなものです」


「魔物がいるのに?」


 カイルが分かれ道の通路の先を見ながら言っている。先程からシェリーは迷わずに進んでいるが、いくつかの分岐を通り過ぎて行っているので、ダンジョンと言われた方が納得がいく風景の場所だ。

 しかし、先程からシェリーが選択する道には魔物が存在していない。


「魔物というか、ここに居るのは殆どがオリバーの偶発的産物です。それも陽子さんのダンジョンで扱いきれないモノがここにいるので、ゴミ溜めと言い換えた方がよかったでしょうか」


 ゴミ溜め・・・流石にそれはないのだろうか。


「ダンジョンで扱いきれない魔物ってなに?」


 カイルが遠目で見る限り普通の魔物にみえる。それがダンジョンで存在してはいけない物とは一体何だという疑問が湧いてくるのは当たり前だ。


「災害級と言えばいいですか?それともSSSクラスの魔物と言えばいいですか?いい例があの鎧たちです。Sランクの冒険者が一人で倒し難い魔物をダンジョンに据えるわけにはいきませんよね」


 シェリーの言葉に二人は『ああ』と言って理解を示してくれた。実質Sランクの実力があるリオンが満身創痍にされ勝てなかったモノだ。それがウヨウヨいるダンジョンなんて足を踏み入れることを普通は拒絶するだろう。そうなればダンジョンがダンジョンとして機能しなくなり、それはもう魔物の巣窟と言っていい代物になる。


 そんな話をしていると突如として広い空間にでた。森林と言えばいいのだろうか。先程まで薄暗い洞窟だったのだが、木々が適度な間隔で立ち並び、その隙間から太陽の光が差し込んでいるかのように明るい。木漏れ日が地面を照らし、草が光を反射している。洞窟から外に出たかのような錯覚を覚えるが、ここはダンジョンである。


 シェリーは草を踏みしめて道が無い道を歩いて行く。時々斜め上のマップを見ながら方向をずらしているので目的地を見失うことはない。


「なんか、チグハグなところだね」


 カイルは辺りを見回しながら言った。


「冬にしか見られない薬草もあるし、春に咲く花が咲いているし、季節感がないね」


 今の季節は秋だ。冬には早すぎるし春と言うには遅すぎる。ダンジョンだからと言うには季節が異なる植物が同時に存在しているのはおかしすぎる。しかし、シェリーは当たり前のように言った。


「ダンジョンですから」


 と。

 木々が途切れ、開けたその先は多種多様な薬草・・・毒草も混じっているが、普通は一箇所に存在しない植物が生えていた。


 シェリーは葉が星型になっている草を採り始める。エトワール草は普通は太陽が無い夜にしか採取できない薬草なのだ。太陽の光に当たると黒く枯れてしまうという特性があり、日が陰ると新たに生えてくるという変わった植物だ。

 しかし、ここはダンジョンなので太陽の光が当たる心配なく、常時採取が可能なのだ。




「ササッち!」


 指定された量の薬草を採り終えたところに、陽子が現れた。が、右手が空間の中に消えたままだった。右手に何かを掴んでいるのだろう。


「エンエンが来たから連れて来たんだけど・・・エンエン!観念してこっちにきなよ」


 そう言いながら左手も空間の中に消えていく。炎王を引っ張ってこっちに連れて来ようとしているようだ。


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