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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
20章 趣味と実用性を兼ね備えたモノは奇怪な存在

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「先程の話は何のことですか?」


 アンディウム(仮)が去って行く後ろ姿を見ていたシェリーにスーウェンが聞いてきた。

 この国の聖女となることを了承した時にいたのはシェリーのみで、シェリーのツガイたちはその場に居なかったので知る由もないことだった。

 その事については誰にも話していなかったことに気がついたシェリーは重大なことを道端の石ころを拾った事を話すように抑揚無く言う。


「ああ、条件付きでこの国の聖女となる事を了承しました」


「「「は?」」」


 グレイとスーウェンとオルクスの声が重なる。今まで散々否定してきた事柄を覆してシェリーは了承したと言ったのだ。それは驚きもするだろう。


 カイルはアリスの言葉を聞いていたため、シェリーの選択に理解を示していた。

リオンはシェリーは聖女であるのに3人の反応に何を言っているのだと言わんばかりの視線を投げかけている。


「え?どういうこと?あんなに否定していたのにどうしてなんだ?」


 グレイがシェリーに聞いてきた。しかし、シェリーはその質問には答えず、そのまま歩み始める。


「シェリー、答えてあげないのかな?」


 カイルからもシェリーに尋ねられるが、無視をする。ただ家に帰るために足を進めた。

 シェリーは平面上はいつもどおり無表情だが、心の中はフツフツと煮えたぎっていた。あの黒狼クロードの言葉がシェリーの中に渦巻いていた。


『女子供に本気出すわけないだろ』


 女だろうが子供だろうが命を掛けなければならない時もある。馬鹿にしている。

 クロードは優しさから言っていたのだろうが、長い間この世界でよくそんな甘い考え方をして生きてこれたものだ。


 いや、だからこそ、ここまでの者たちを育てられたのだろう。

 筋肉ウサギのグアトールの一族もそうだが、異質までまでにも強大な力を持ったフォルスミス(キングコング)・フラゴル、獣人としては突出した魔力を持ったイーリスクロム・シーラン、そして、己の血族の末裔であるクスト・ナヴァル。


 世界(白き神)が人々の悪意の成れの果てに対して勇者以外に用意した布石。


 だからこそ、この国の英雄と呼ばれる者達を育てることができたのだろう。



 しかし、しかしだ。シェリーには生暖かい優しなど不要。他の者達(亡者)はシェリーの行動に一定の理解を示してくれていた。だからシェリーにきちんと向き合ってくれた。




 無言のまま家に帰り着き、そのままリビングに入りシェリーの後ろを無言で付いてきた5人にソファに座るように促し、シェリーはキッチンに入ってお茶の用意をしてリビングに戻り、6人分のお茶をだす。


 そして、手を前に突き出し魔力を込める。


「『亡者招来(死者の召喚)』」


 シェリーの目の前には先程いたクロードがいた。不機嫌そうにシェリーを睨みつけている。


「今度はなんだ」


 一言目がこれだ。シェリーは指をさし、ソファに座るように促す。

 そして、好きな物を食べるようにと、亜空間収納の鞄からドサドサっとお菓子を出した。


「こ、これはポテチ!ポッ○ーも!おい、これどうしたんだ!どう見ても向こうの世界の物だよな」


 シェリーがローテーブルの上に出したものはこの世界にはないプラ包装の袋に入ったお菓子である。これはどこから手に入れたかと言えば、もちろん炎王との取引で手に入れた物である。


 しかし、それには答えず淡々とシェリーは話す。


「5日後の為にオリバーに作ってもらいたい物を相談したいので、好きなだけクロードさんと話をしていいですよ」


「おい、俺の質問に答えろよ」


 喚び出しておきながら、クロードに対して何事も言わないシェリーにクロードが言い寄るが、シェリーは鞄からキット○ットを取り出す。


「チョコレートの方がいいのですか?それとも食べないのですか?」


「食べる食べるが・・・はぁ。お前絶対に性格悪いよな」


 そう言ってクロードはソファに座る。それを見たシェリーはそのままリビングを出た。そして、地下に降りようと足を進めれば、後ろから腕を掴まれてしまった。

 振り返れば、心配そうな顔をしたカイルがいる。


「シェリー。何が駄目なのかな?」


「駄目?」


 シェリーはカイルの質問の意味がわからなかった。


「嫌なことは嫌と言ってくれないとわからない。何がシェリーの機嫌を損ねているのかな?」


 ああ、機嫌が悪い理由を聞いているのか。何が、機嫌の悪い理由かと問われれば、一番はクロードの言葉だと言える。そして、言葉を駆使して理解してもらおうとしたが、自分の力を理解できない者にこれ以上掛ける言葉はないということだ。


「駄目ではないですよ。私は私で歩んで行くだけですから」


「それは、シェリーの横には誰も居ないということだね」


「始めから言っていますよね。必要ないと」


 そう言ってシェリーはカイルの手を振り切って、地下へを降りていった。


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