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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
20章 趣味と実用性を兼ね備えたモノは奇怪な存在

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「佐々木と申します。ああ、貴方は名乗らなくていいですよ。」


 この世界にはない氏を名乗られ、クロードは目を見開く。


「お前も転生者か?俺以外にもいたのか。いや、アリスが居たんだ他にもいる可能性はあったのか。」


 クロードの独り言のような問いかけにシェリーは答える。


「ええ。私は『黒の聖女』とアリスから呼ばれています。貴方も一度ぐらい目にしたことがあるのでは?」


 目にした。シェリーがそう指すものはアリスの未来視のことだ。アリスの名を知っている・・・いや、アリスは対象者が必ず訪れる場所に言葉を残しているため、その名は必ず知ることとなる。

 一度目にすれば、目に留めてしまえば、その名を探そうとしてしまう。自分にとってより良い未来があるというなら、大切な者が幸せになる未来があるというなら、その未来を掴みたいがため、言葉を探してしまう。


「『黒の聖女』一番ヤバいやつじゃないか。それがお前か。でも、俺は女子供に手を上げないのがモットーだ。」


「ちっ!師団長さん副師団長さんこちらに来てください。グレイさん、オルクスさん好きなだけ質問攻めにしてくれていいですよ。」


 ここまで言ってもシェリーと戦うことにクロードは否定的だった。シェリーはクストとルジオーネを連れて元の位置に戻っていく。その代わりにグレイとオルクスがクロードの元に駆けていった。

 そして、シェリーはクストとルジオーネに向かって言う。


「今回のことは内密でお願いできますか?」


「ここまでしておいて内密ってなんだ。」


 クストが呆れたように言う。それに同意するように隣のルジオーネも頷いている。


「まだ、第6師団の中なので何とかなりますよね。」


「無理だ。第5師団の連中も混じっている。」


 シェリーは勢いよく振り返り、野次馬共を視る。その中に十数人の第5師団の兵と第5師団長のヒューレクレトが混じっていた。


「クソ変態共が何故混じっているのです。」


 シェリーは貶すように言葉を吐き捨てる。

 そのシェリーの態度にクストも遠い目をして


「ああ、今まで第6師団に第5師団を取り込んでいた形をとっていたからな。今でも訓練は合同でしているのだ。軍務的には問題ないからいいと思っていたのだが、嬢ちゃんが関わるとは思ってみなかった。」


「ちっ!箝口令を強いてください。」


「人の口に戸は立てられませんよ。」


 ルジオーネがそうシェリーに指摘するが、それが守れない軍人とはなんだ!

 苛立っているシェリーにシェリーしか聞こえない声が降っていた。


『目の前の青狼にヨーコのダンジョンに行くように言えばいいよ。もうちょっとだと思うよ。ユーフィアにはまだまだ頑張ってもらいたいからね。』


 あの謎の生命体からの言葉だった。個人的な啓示など初めての事だった。ユーフィアの存在を守る為にシェリーの目の前の人物が強くあることが必要なのだろう。

 しかし、シェリーが先程の言葉を言って素直に聞くとは思えない、特に番であるユーフィアのことに関してはシェリーが関わることに否定的である。だから、それを逆手に取って神言を別の言葉で言い換える。


「箝口令をここにいる者達に強いてくれるのなら、ユーフィアさんが好みそうな物があるところを教えてあげてもいいですよ。」


「何!それは本当か!」


 クストがシェリーの言葉に目の色を変える。そして、周りを見渡してから声を発っした。


「お前達、ここで見たものは絶対に口外するな。これは命令だ。漏らしたものは俺が直々に手を下すからな!」


 クストの戦いぶりをこの場で見ていた者達は一斉に首を縦に振る。クストに敵わないことぐらい一目瞭然の事だった。


 その言葉を聞いたルジオーネは呆れたようにため息を吐く。命令を下すこととなった理由が私利私欲にまみれていた。


「それで、ユーフィアが好みそうなものは何処にあるんだ。」


 クストが前のめりで聞いてきた。その勢いにシェリーは思わず一歩後ろに下がる。本当にツガイのこととなると人が変わったようになるのは何とかならないのだろうか。


「『愚者の常闇』の29階層に魔鉱石が採れるところがあります。それもかなり良質なものです。先日、ユーフィアさんが良質な魔石を興味深そうに見ていましたから、好まれると思いますよ。」


 シェリーが『好まれる』と言っている時点でここを立ち去ろうとしたクストをルジオーネが首根っこを掴み引き止める。


「団長。仕事があるのに勝手に何処かに行こうとしないでください。」


「いや、しかし、ユーフィアが喜んでもらえるものを・・・」


「はぁ。団長、『愚者の常闇』の29階層までたどり着けると思っているのですか?」


「あ、うん。大丈夫だ。」


「大丈夫ではないですね。」


 ルジオーネは訓練兼野次馬の兵達を見渡しながらよく通る声で命令する。


「今日の訓練は中止です。14部隊の者は荒れた地面を直してください。」


 そう言ってクストを連れてルジオーネは第6師団の詰め所内に戻って行った。

 その二人の背中を見送って、シェリーはクロードがいる場所をみるとカイル以外の4人がクロードの周りに集まっていた。


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