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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
20章 趣味と実用性を兼ね備えたモノは奇怪な存在

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「か、カレー!」


 以前ユーフィアに言われ作った甘口のカレーの残りを鞄の中に常備していたのだ。


 炎国に香辛料は存在するが、生産量が少なく、一般的に食べられるまで行き渡らないのが現状だ。

 以前ユーフィアに切々とカレーが食べたいのに食べることができない切なさを語られたのだ。 


 この香ばしい匂いは食欲を即発される匂い。その匂いを感じ取ったクロードはシェリーに鋭い牙を向ける前に立ち止まり、獣から人の姿に戻った。


 それを確認したシェリーは目の前でカレーを一口食べる。


「うぁぁぁ。」


 クロードは膝から崩れ落ちてしまった。


「グレイさん。わかりました?」


 シェリーがグレイに声をかけるも、グレイは呆然として地面と仲良くしているクロードを見ていた。いや、グレイだけでなくスーウェンもオルクスもリオンも呆然と眺めていた。


 起動までに時間がかかりそうなので、新たなカレーを取り出して、地面に拳を突きながら『後で覚えていろってこういう事か!』なんて言っているクロードにカレーを差し出しながら


「食べます?」


 と聞いてみた。すると顔を上げたクロードは顔をしかめながら答える。


「こんなにいい匂いをさせて目の前で自分だけ食べるって、お前酷いよな。」


 いや、質問の答えではなく文句が返ってきた。その言いぐさにシェリーはイラッとして


「素直に食べたいと言えないのですか?」


 そう言って一歩下がる。カレーの香ばしい匂いが遠ざかったことでクロードは慌てて


「食べたい。」


 と言葉にする。その言葉にシェリーはカレーを差し出し、受け取ったのを確認すると距離をとる。先程からクストの視線を強く感じるため何か話でもあるのだろう。


 シェリーと立ち代わるようにクストがクロードの前に座り込んだ。二人は本当に良く似ている。


「シェリー、彼は上位種に進化した者になるのかな?」


 シェリーの隣に来たカイルが聞いてきた。


「違いますが、それに近い存在でした。獣人で上位種に進化した者はいないと思いますよ。」


「へー。あれで上位種じゃないのか。じゃ、獣人も普通に第二形態が存在すると?」


 第二形態・・・獣化を指してカイルが言っているのだとしたら


「普通なのでしょうか。現状ではトーセイのギルドマスターぐらいなのではないでしょうか。」


 ギルドマスター(キングコング)が今唯一獣化できる存在だとシェリーは答える。それが普通かと問われれば普通ではないのだろう。


「問題児!今度は何をしでかしたのですか!」


 怖い顔をしながら第6副師団長のルジオーネがこちらにやって来た。多分、王都内の何処かにいた所を呼び出されたのだろう。

 しかし、シェリーは答えず、ある一点を指す。

 シェリーが指した先を見たルジオーネから声が漏れた。


「え?爺様・・・でも若い?」


 彼もクストと同じくクロードの血を引き継ぐ者だった。やはり若いことに引っかかりを覚えるようだ。

 カレーを食べ終わってクストと話し込んでいたクロードがルジオーネが来たことに気が付き手招をしている。

 しかし、ルジオーネは爺様と呼んだ存在が目の前にいることに戸惑いを覚えているようで、近づこうとしない。だから、シェリーは背中を押す。


「本人ではなく。ただの世界の記憶です。聞きたいことがあるなら聞くことぐらいできますよ。」


 そう言ったシェリーをルジオーネは呆れたように見て言う。


「貴女に常識というものは無いのですか。死者はこの世に存在しません。」


「ですから、死者ではなく。ただの記憶です。」


 シェリーはそうはっきりと言葉にするが、ただの記憶が剣を持つことが、戦うことが、食べることが、できる方がおかしいのだ。


 ルジオーネの背中を見送っていると、やっと復活したらしいグレイが喘ぐ様に言葉を発した。


「さっきの黒い狼は何だったんだ?」


「クロードさんの獣化です。」


 シェリーは端的に答える。シェリーの言葉に今度はオルクスが聞いてきた。


「もしかして、俺も獣化ってやつが出来るのか?」


「獣人の方は誰しも持っている可能性だと思いますが、普通はそこまで至らないですよね。クロードさんに聞けばわかるとは思いますが、話し込んでますね。」


 3人の狼獣人が楽しそうに話している。しかし、あまり時間を取っていると天津の時の様に魔力量の消費が激しくなるという嫌がらせを受けそうなので、シェリーは3人の狼獣人のもとに向かっていく。


「そろそろ、こちらの話をしてもよろしいでしょうか?」


「なんだ?カレー分は働いたぞ。」


 そう言うクロードにシェリーは目線を合わすようにかがみ


「今度は目の前で牛丼でも食べましょうか?」


 と言った。その言葉にクロードは凄く嫌そうな顔になる。


「お前、性格悪いって言われないか?」


「言われたことは無いですよ。」


 問題児とよく言われているが、そこに性格の悪さが含まれているかは、シェリーの知ったことではない。


「クロードさん。前から言いたかったのですが、私は本気だったのですよ。私は最後のその時まで剣を振り続けなければならないのです。それがアリスの未来視。『黒を纏いし紅玉の君』アリスからの言葉が、貴方の未来視が、そうであったように。」


 シェリーはクロードを変わった言葉で呼んだ。そう呼ばれたクロードは鋭くシェリーを睨む。


「お前は誰だ。お前はアレを見たのか。」


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