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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
20章 趣味と実用性を兼ね備えたモノは奇怪な存在
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 陽子の真後ろから声がして、振り向くと明らかに機嫌が悪いオリバーがいた。陽子は思わずキッチンの壁に張り付いて、顔をひきつらせて悲鳴を上げる。


「ひっ!」


「さっさと対処したまえ、騒がしすぎる。」


「そ、それは無理かなぁ・・・。」


 オリバーの機嫌が一段と悪くなっているのか、ものすごいキラキラした笑顔で


「するしかお前の選択肢はない。しないのなら「はい!只今陽子さんが対処します!」」


 オリバーの笑顔に反射的に背筋を伸ばして、話しているのを中断するように言葉をかぶせて慌ててキッチンを出ていった。


「シェリー。女神ナディアに来るように言われているのではないのかね。いつまでも待たすと催促に来ると思われるが?」


 今度はシェリーに矛先を向けてオリバーが言う。しかし、シェリーは答えず、珈琲を入れてオリバーに差し出す。

 シェリーからは言われなくてもわかっているが、行きたくないオーラが醸し出されていた。


 珈琲を受け取ったオリバーはそんなシェリーを呆れたように見て


「ルークはそこまで子供じゃない。シェリーが家に居なくても困りはしない。」


「私が嫌。一番にお帰りなさいと言いたいから、行きたくない。それに神の時間感覚は適当だからいいと思う。」


「そうやって、神の威にそぐわぬ行動を取るから逆に気に入られるのだよ。さっさと行って戻って来れば良いのではないのかね。」


 オリバーはそう言って背を向けて出ていった。

 神の威にそぐわぬか。大抵の者が神という者に遭遇すれば、その神言に耳を傾け、事をなそうとするのが普通なのかもしれない。しかし、シェリーは聖女としての仕事は素直に受け入れるが、それ以外のこととなると神だろうがなんだろうが、ルーク優先になってしまうので、神言を受け取っても無視をすることが多々あるのだ。

 それが神々からしたら興味を抱かせるものなのかもしれない。


 夕食の準備が終わったのでシェリーはキッチンから出て、ダイニングの惨状を目の当たりにした。

 ダイニングのテーブルも椅子も存在していなかった。外側に面した壁が破壊され、窓ガラスが枠ごと無かった。


 家の壁だった瓦礫に引っかかるよに赤い髪の物体が見えた。グレイが倒れているようだ。他の者が見当たらないことから、外にいるのだろう。


 シェリーはグレイを蹴って瓦礫から落とし仰向けにしてみると足の骨と腕の骨が折れていること以外、大丈夫そうなので放置することに決め、瓦礫の撤去をすることにする。


「『リカバリー』」


 いや、瓦礫を事が起こる前の状態に復元した。存在が跡形も無くなったダイニングテーブルも椅子も、破壊された壁や窓ガラスも元通りに戻った。


 しかし、床には骨が折れたままのグレイが横たわっている。


「シェリー。グレイを治してあげないのかな?」


 カイルがグレイの側に来て言ってきたが、シェリーはテーブルを拭きながら


「陽子さんに敵意をもったことが悪いのです。」


 と、淡々と答える。


「え?そんなことで、あの鎧に攻撃されるってこと?」


「陽子さんに害を与えてしまってからでは遅いではないですか。陽子さんを敵視した時点で排除対象です。まぁ、生きていようが死んでいようが、行動不能に陥れば攻撃対象から外れますので、グレイさんのように早々に痛みで気絶した方が良いのですよ。」


 シェリーはテーブルに夕食を並べ始めるが、好きなだけ取る方式なので鍋と大皿を並べるだけなのだ。

 スープの鍋に大きなおひつを端に置き、中央に先程揚げていた唐揚げ、ささみのサラダ、手羽先の甘辛煮、鶏肉のてりやき・・・全部鶏肉料理だった。

 ニールから押し付けられた依頼の中にコッカトリス牧場から脱走したコッカトリスの捕獲があったのだ。その依頼の報酬がコッカトリスの肉と卵であったため、今日の夕食が鶏肉になっているのだ。


「陽子さんご飯できましたけど、どうされますか?」


 シェリーがどこともなく声をかける。すると、遠くの方から『食べるぅー!』と聞こえて来たことからまだ対処中のようだ。


 シェリーは自分の夕飯を取り分けて席につこうとしたらカイルに抱えられてしまった。

 ちっ。


「グレイを治してあげてくれないかな?」


「なぜ、家で暴れる人を治療しなければならないのですか?」


「それはあの鎧が何か知らなかったからだよね。」


 確かに鎧がなんの為に存在しているか知らなければ、頭のない鎧や人が入っているとは思えない鎧が攻撃してくれば、攻撃対象にするだろう。


「ササッち!大変!死んじゃう!」


 壁から陽子の身体が生えてきて、焦ったように早口で言ってきた。


「いいのでは?天命です。」


「「駄目!」」


 陽子とカイルの声が重なった。



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