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「良好?」

「仲が良すぎると思います。」

「一国の王との関係と思われない仲の良さだったよな。」

「いつも、何かと理由をつけてシェリーに会わせてもらえなかったな。」

「二人しか分からない事をよく話していたよね。」


 5人からそれぞれ炎王とシェリーの仲の良さに対して愚痴を漏らす。


「いい取り引き相手ですから、当然です。それで、ニールさんは納得されたのですか?」


 シェリーはそう言いて、ニールとオリビアを見る。神の威など、シェリーには理解できない。特にあの謎の生命体のことなど。一体何を思ってオリビアとニールをつがわせたのか、理解できない。


「まぁ。国として問題が無ければそれでいい。それから、いくつか依頼を受けて帰れ。最近サボリ気味だろ?」


 ニールはシェリーに仕事をしろと言ってオリビアを連れて去っていった。ツガイがいようと仕事の鬼のニールは変わりようがないようだ。



 その夜、シェリーが寝てしまったあと、シェリーのツガイの5人が寝ているシェリーの部屋にいた。


「で、大事な話ってなんだ?シェリーが起きていると駄目なのか?」


 シェリーがニールから依頼を押しつけられている後ろで、カイルは4人に後で話があると言っていたのだ。


「駄目ということではない。シェリーも知っていることだ。いや、始めからシェリーは知っていた。俺たちが知らず、分かっていなかっただけだった。」


「どういうことです?」


 スーウェンが尋ねる。


「ここ10日で分かったことだ。いや、シェリーが前からダンジョンによく潜っていることは知っていたんだ。どうやら、探しものがあったらしい。」


「探しもの?」


「正確には未来視の言葉だ。スーウェンは知っているか?黒髪のエルフの少女の事を」


「ええ、知っていますよ。一般に存在しないことになっていますが、彼女は我々に多くの物を残していきましたからね。教会の刻鐘を作り出し、大陸全土に支配が及ぶと各地に転移が出来るように転移門なるものも作り出しましたからね。」


「その少女をエルフ族は殺したのか?」


「異端者として処刑したようです。その黒のエルフがどうかしましたか?」


「そのエルフの少女はシェリーの未来視を各地に残しているようなのだ。あの裏ダンジョンにもシェリーの未来を示して遺してくれていた。そこで言われた言葉がある。『黒の聖女が魔王に挑む未来は確定している。しかし、その行程は様々だ。お前達が弱いと黒の聖女の足を引っ張る。お前達が黒の聖女を捕まえておかないと一人で魔王に突っ込んで行く。(いず)れにしても黒の聖女は死ぬ。黒の聖女の生死はお前達次第だ。』と。」


「それはレベルを上げておけということか?」 


 オルクスがカイルの言葉を聞いて、そう言う。確かにそのまま捉えれば強くなれと聞こえてしまう。


「俺もそう思っていた。しかし、その考えは覆されてしまった。裏ダンジョンに入る前にラース公国のオーウィルディア殿から救援要請がきたのだ。次元の悪魔が出現したと。」


「次元の悪魔だって!確か、俺が国を離れる前に一体出現して、倒したって言ってなかったか?」


 グレイが驚きの声をあげる。


「今回は3体の出現で、そのうち1体が魔眼持ちだった。そこで思い知ったよ。アリスの言ったことは、ただレベルを上げていけばいいということではなく。悪魔と戦えるか、魔王と戦えるかということなんだと。」


「何があった?」


 リオンがそう尋ねる。炎王からレベルをあげるように言われ続けていたので、レベルを上げていれば、それだけでいいとさえ思っているのだ。


「はっきり言えば記憶が無かった。気がつけば地面に倒れていたんだ。何があったか理解できなかったが、シェリーの態度から俺はしてはならないことをしたのだと理解はできた。後で、オーウィルディア殿を訪ねて聞いたら、俺は魔眼に操られシェリーに剣を向けていたと教えられたよ。」


「「「「なっ!」」」」


「シェリーは知っていたんだ。魔王と戦って相打ちで自分が死ぬことも、番の俺たちが次元の悪魔に対してシェリーの足を引っ張る存在でしかないことも。だから、頑なに俺たちを拒絶していた。邪魔な存在はいらないと。」


「それで、どうしろと?いや、どうすればいいんだ?」


 リオンの問いにカイルはミレーテのギルドで見せたメモ用紙を再び見せる。


「それが、ここに繋がっていると思う。けれど、何がここにあるのかは分からない。シェリーは知っているけど、行きたくないみたいだからね。」


『教えようか?』


 シェリーとそのツガイしかいない部屋に第3者の声がした。声の元をたどるとそこには黒い猫がいた。いや、黒い猫だが、青い目が4つあり尻尾が2つある奇妙な生物だった。


「オリバーさん。」


 その奇妙な猫から出てきた声の主は、確かにここの住人のオリバーの声だった。


『君たちは本当にバカだね。シェリーが行きたくない理由なんて1つだけではないのかね。』


「ルークが関係するのか?」


『2月後に冬季休暇に入るからね。その時期は家に居たいのだろう。』


 そんなことかと普通は思うことなのだが、シェリーのルークに対する行動をみれば納得できるものだ。


「え?ちょっと待って下さい。ダンジョン攻略に2ヶ月かかると言っているのですか?」


 スーウェンが疑問を呈する。シェリーもオリバーもダンジョンに潜るとそれぐらいは戻ってこれないと考えているから、そのような言葉が出てくるのだろう。


『ダンジョンの攻略?何を言っているのだね。ああ、そこが何のダンジョンか知らないということか。グレイ君は知っているんじゃないのかね。』


 そう奇妙な猫に問いかけられたグレイは首を横に振り


「俺は重要なことを教えられていません。」


『ああ、そうだったね。君はラースではないから教えられていないか。あのダンジョンはラースを教育する為に使われるダンジョンだからね。魔眼を持つ魔物が生息しているし、精神攻撃をしてくる魔物もいる。そこで、耐性を得るまでダンジョンに居続けるということだよ。勇者の称号を持つナオフミでさえ1月掛かった。それなりに教育されたラースは2ヶ月だ。では勇者でもなくラースでもない君たちは一体どれぐらいの時間が必要なのだろうね。』



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