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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
19章 神の威

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「私はそのダンジョンに行きませんよ。必要ありませんから。」


 シェリーはきっぱりと断る。あのダンジョンを本来の使用目的のために攻略しようとすれば、勇者が攻略したように1ヶ月以上はかかってしまう。

 そんなに時間をかけていれば、ルークの冬季休暇の時期に重なってしまうかもしれない。ルークが帰ってきたら一番に出迎えなければならないとシェリーは思っているので、そんなところには行きたくないのだ。


「シェリー、それは駄目だ。」


 カイルに否定されてしまう。ラースで悪魔と戦ってから、カイルは強くなることに意欲的になっていた。今までは、とても余裕のある感じでシェリーの側にいたが、一人で出かけて戻ってきたあとから、シェリーの魔眼を使って手合わせをすることを望んできた。

 多分、魔眼耐性を得ようとしているのだと思われる。アリスがいらないことを言うからだ。


「カイル。シェリーは必要ない言っているけど?」


 グレイがカイルにそう言うと、カイルは顔を歪め


「それでは駄目なんだ。取り敢えずこのダンジョンに行く。それが俺だけでも。」



 重い雰囲気になってしまったので、オリビアを連れてメイルーンに戻る事にした。


「シェリーさん。10日は長すぎですわ。早く番様のところへ連れて行って下さいませ。」


 フィーディス商会の本店に行くとオリビアがシェリーに詰め寄ってきて、早く連れて行くように言ってきた。


「シェリー・カークス。その姿どうしたんだ?」


「王太子様ご無事で何よりです。」


 オリビアの教育係を任されていた白に黒が斑に混じった髪をもつ白猫獣人の男性と真っ白い髪の白猫獣人の女性が出迎えてくれた。


「色々あったのです。あと、保管庫の件は対処してもらいましたので、今後は問題ないかと思います。」


「了解。」


「早く連れて行ってくださいませ!」


 オリビアが待ちきれないとばかりにシェリーの視線の前に入り込んできた。


「はぁ。わかりました。」


 オリビアに催促され、ため息を吐きながらシェリーは地面に魔石を落とした。そこにキョウから声がかかる。


「シェリー・カークス。ユールの旦那から伝言だ。『聖水の礼だ。西のダンジョンに行け。』だそうだ。」


 西のダンジョン?


「俺たち兄弟の本拠地だ。時間ができればエルトに来い。」


 エルト。港街エルトにダンジョンがあったのか。ユールクスがそんなことを伝言してくるということは、そこにアリスの何かが残されているということなんだろう。


「わかりました。」


 これ以上話を伸ばすとシェリーを睨んでいるオリビアが何かしてきそうなので、さっさと転移をすることにする。


「『転移』」


 転移をしたさきはミレーテのギルドにあった転移の間と同じ部屋と思えるところだった。しかし、ここはメイルーンの冒険者ギルドの転移の間だ。

 オリビアは待ちきれないと言わんばかりに、部屋のドアを開け放ち出ていった。


 ドアの向こうから、ざわめきが聞こえる。無視して帰ろうかと思い、転移の間から出ていくと、シェリーの耳に驚く声が聞こえてきた。


「にゃ!どうしたにゃ!シェリーちゃん、どうしたにゃ!」


 併設の食堂でウエイトレスをしているミーニャがシェリーに駆け寄ってきた。


「虐められたのかにゃ?元の色に戻っているにゃ。」


 金色の目が心配そうにシェリーを見てきた。


「色々ありましたが、虐められたわけではありません。」


「そうなのにゃ。ここでランチ食べるにゃ?」


 この国に来た頃のシェリーを知っているミーニャは髪が黒いシェリーの頭を撫でながら聞いてきた。

 久しぶりにここで昼ごはんを取るのもいいかもしれないと、食堂の方に足を向けるが、前を歩いているミーニャの声が『なんでまた増えているにゃ?』と小さく聞こえてきた。



 シェリーが食後のパフェを食べているときにニールがやってきた。ニールの腕にはオリビアがくっついている。


「シェリー、これはお前のせいか?」


 ニールはそんなことを言ってきた。


「これとは?」


 シェリーはわかっているが敢えて聞いてみた。


「俺の番のことだ。」


「連れて来たのは私です。」


「俺が言いたいのは、そう言うことでないことはわかっているだろう?一度そこの御人に会ったことがあるが、ここにいていい御方ではないだろ。そして、この方も」


 ニールはギルドの補佐官になる前は騎士団の方にいたと噂で聞いたことがある。そのときに王太子であったリオンに会ったことがあるのだろう。そして、王太子妃であったオリビアの特徴も記憶していたのだろう。


「私に神の威など知る良しもありませんよ。所詮私は世界の思惑に踊らされる人でしかありません。」


「神の威か。オリビアからは問題ないと聞いているが、炎国ではこの事をどうとらえられているんだ?」


 シェリーは炎王から詳しいことは聞いていないので、説明を求める様にシェリーはリオンを見る。


「問題はありません。今の私は身分を剥奪され、国外追放された、ただの鬼です。」


 そうリオンが答えた。そのリオンの答えにニールはシェリーに詰め寄り。


「他国でも問題を起こしたのか?」


「失礼ですねニールさん。私は何もしていませんよ。炎王との関係は良好です。」


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