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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
19章 神の威

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 シェリーはまぶたに朝日を感じて目を開ける。目の前には金色の目が・・・爽やかな朝を迎えることが出来たのがあの一日だけだったなんて、5日は誰も居ない生活を堪能できるはずだったのに、そんな事を思いながら体を起こそうとするが、体が動かなかった。


「起きたいのですが?」


「もう少しこうしていたいな。」


 今日はミレーテのギルドマスターとの約束の日だ。だから、さっさと行ってフィーディス商会にいるオリビアを回収して戻ってきたいと思っているのだが、カイルが戻ってきてから今日まで殆どと言っていいほど側を離れない。

 たぶん一番の原因がシェリーをツガイとして認識できてしまっていることなのだろう。しかし、シェリーが冒険者ギルドに行くことを止められ、買い物に行くことも止められてしまうのは些か干渉しすぎではないのだろうか。


「今日は約束の日ですので、出かけます。」


「駄目だ。」


「カイルさん。私の行動に干渉しすぎですよね。「イルでしょ。」はぁ。」


「私の行動に制限をかけるというなら、オリバーに命令して、国に強制送還しますよ。」


 シェリーの隷属であるオリバーはシェリーに命令されれば、それに従わなければならない。シェリーがカイルをセイルーン竜王国に転移させろと言えば、それに従うのだ。

 カイルはシェリーを抱きしめ


「シェリーが見知らぬ人に好意を持たれるのが嫌なんだ。シェリーを外に出したくない。」


 なんだ、そんな事かとシェリーは思う。結局、オリバーが対処できないと言うのなら、この祝福を受け入れていくしかないのだ。黒髪も。見知らぬ人の好意も。


 見知らぬ人から敵意を持たれるよりまし、見知らぬ人からいきなり攻撃されるよりまし。

 そう、シェリーは思い、神の祝福を受け入れる事にしたのだ。


「私は成すべき事があります。それを邪魔する人は必要ありません。」


 幾度も耳にしている言葉をカイルは聞いて、シェリーを離した。


「シェリーに嫌われるのは心が壊れそうだ。」



 シェリーは準備を終え、ギラン共和国の首都ミレーテの冒険者ギルドの転移の間に転移をした。カイルが戻って来てから外に出ることがなく、久しぶりに外に出たシェリーだった。転移の間の扉を開け、部屋の外に出ると朝早くから依頼を受けるためにギルドに来ていた冒険者から一斉に視線を向けられた。

 以前のような誰だコイツという視線ではなく、好意的なのだろうか。第5師団に連行された時を思い出すようなゾワゾアする視線だった。


 しかし、シェリーは不快感を表情には出さず、そのまま二階に上がっていった。シェリーが二階に上がると一階からのざわめきが大きくなる。


「あの美人は誰だ?」

「あんな高ランクの人っていたか?お近づきになりたい。」

「食事に誘ってもいいかな。」

「結婚前提に付き合いたい。」


 なんて言葉が聞こえてきた。

 シェリーはため息を吐き、2階の受付の女性に声をかける。


「ギルドマスターを呼んでください。約束の7日目ですので、サインをお願いしますと」


 そう、シェリーが声をかけるも、受付の女性はシェリーを見て顔を真赤にして固まってしまった。

 ちっ。思いっきり祝福が弊害となっているじゃないか。


「ギルドマスター!約束の7日目です。サインを下さい。」


 女性が動きそうにないので、シェリーはいつもどおり直接声をかけることにした。


「なんだ、ラースのか?」


 奥の扉から白い豹獣人の男性が出てきた。


「彼らはまだ戻って来ていな・・・」


 ギルドマスターもシェリーを見て固まってしまった。これでは話にならないと、シェリーはギルドマスターに近づいていき、腹に一発パンチを入れた。


「いっってー!いきなり殴ることないよな。」


「サインをしてください。」


「この黒髪はどうした?いや、勇者の色か。しかし、美人だな。確か、勇者も聖女も容姿がいいとは噂に聞いていたが」


 そう言いながらギルドマスターのリュエルはシェリーの黒髪を触るが、カイルにはたき落とされた。


「どういう心境だ?」


 リュエルがそう聞くもシェリーは同じ言葉を繰り返す。


「サインをしてください。」


「だから、まだ戻って来ていない。執務室に入って待っているといい。お茶と菓子をだそう。」


 リュエルがシェリーに向かって微笑む。もう少し普通の祝福にできなかったのだろうか。好意というものも、ほどほどがいいものだ。シェリーの横にいるカイルから不穏な空気が漏れ出している。


「結構です。」


 シェリーがきっぱりと断る言葉を放ち、先にフィーディス商会の方に行こうと踵を返すと、目の前にオルクスが肩で息をしながら立っていた。いつの間に後ろに立っていたのだろう。


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