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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
18章 一人の有意義な時間は

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 まさか、シェリーのツガイに対する態度を神から口出しをされるとは思わないことだった。それもリオンがお気に入りだというウエール様からの啓示をオリバー経由で言われるなんて、なぜ、直接言わないのかとシェリーは憤る。


『ウエールが怯えちゃってるよ。ほら、前にテロスにスクリューアッパーしているの間近で見ちゃってから君が恐いらしいよ。』


 謎の生命体からの言葉がシェリーの頭に響いてきた。そんのことで神が只人(ただびと)であるシェリーに怯えるなんてどういう事だ。あれはテロス様が悪いのだ。


「シェリー。神を殴るなんて恐れ多いね。」


 やはり、オリバーは謎の生命体の言葉を聞くことができるようだ。


「あれはテロス様が悪いから、私が殴っても許されるはず。それから、食料保管倉庫に偶発的産物が入らないようにして欲しいのだけど?フィーディス商会からクレームが来たけど、何が遭ったか知っているよね。」


「尻尾を噛まれていた彼を助けて治療してあげたのに、クレームを言われるなんて心外だね。」


「配達に来て、異形に噛まれるなんて恐怖以外のなにものでもないと思う。とにかく入らないようにして。あと、あの猫は何?」


「これかね?」


 そう言いてオリバーはテーブルの上に陣を描き、シェリーが先程見た黒い猫を召喚した。


「そう、それは何?猫だけど猫じゃない生物。」


「偵察用の魔導生物だ。ある程度は思考する機能も付けている。」


 とうとう、オリバーは知性を持つモノを作ってしまったようだ。何を偵察するつもりなのかは知らないが、恐ろしいことだ。


「自分の作ったモノに噛まれないように管理はきちんとして欲しい。」


 オリバーの作るものはなにげに恐ろしいのだ。ただのスライムに見えてもレーザー光を発する個体もいたのだ。この猫もどきも何を仕込まれているかわかったものではない。


「そこは問題ない。ごちそうさま。」


 オリバーはそう言って立ち上がりダイニングを出ようとしたが、何かを思い出したように立ち止まりシェリーに一通の封筒を差し出した。


「これが届けられていた。」


 シェリーが封筒を受け取ったのを見届けてオリバーはダイニングを出ていった。猫もどきはそのままでいいのだろうか。


 シェリーは封筒の裏の差出人を見る。イーリスクロム・シーランとサインがされていた。


 ああ、アリスの未来視の時が来たのか。



 封筒の中身は戻り次第、軍本部を訪ねて欲しいという内容だった。

 日付も時間の指定もなかった。確かにいつ戻ってくるか分からない人物に対しては無駄なことだろう。


 嫌な事はさっさと済ますに限るとシェリーは出かける準備を始める。と言ってもいつもどおりの冒険者のくたびれた服に着替えるだけなのだが、それに青いペンダントと付けて外に出た。


 秋の涼やかな風が吹き抜けていく。あと2ヶ月もすれば雪が降る季節になるだろう。

 シェリーは東に向かい西第一層門まで歩いていく。遠くにみえる第一層門には見覚えのある人物が立っていた。子供に悪影響を及ぼしかねない人物だ。普通に原隊復帰できていることにシェリーは疑問に思ってしまう。


「あ!お前。ここに何の用だ。」


 門兵として西第一層門に立っていたのはヒューレクレト・スラーヴァル第5師団長だった。師団長がよく西区に配備されているのはシェリー対策なのだろうか。


「陛下からのお呼び出しです。」


 シェリーはそう言いながら、国王陛下のサインがされた封筒を見せる。


「お、おお。陛下から・・・今度は何をしたんだ?」


「何もしていません。通してくださ。」


「あ、ああ。」


 ヒューレクレトは若干納得してない感じの返事をしながら、鉄の大きな門の横にある人が通れる小さな門を開けてくれた。


 シェリーはヒューレクレトを横目に門をくぐって行く。ここなら小さな女の子がフラフラ来ることもないらか最善の配置なのかもしれないと納得することにした。


 そして、シェリーはそのまま軍本部に向かっていく。時々シェリーの横を貴族が乗った馬車が通り過ぎて行くが、奇妙なモノを見るような視線を感じる。いつものことだ。普通ならくたびれた服で第一層内をうろつく者などいない。

 しかし、そんなシェリーの少し先で止まる馬車があった。


「シェリーさん。どちらまで?お送りしましょうか?」


 窓から顔を出して声をかけてきたのは先日家に訪ねてきたユーフィアだった。馬車の中から「奥様はしたないです。」とマリアの声が聞こえている。


「いいえ。すぐそこの軍本部までなのでいいです。」


「すぐそこ?軍本部は4区画先ですよ。さぁさぁ。乗って下さいな。」


 ユーフィアは馬車の扉を御者をしている人に言って開けてしまった。近い内にユーフィアに連絡を取るつもりだったので、構わないかとシェリーは思い馬車に乗せてもらうことにした。


「軍本部なんて何かあったのですか?」


 ユーフィアがシェリーに聞いてきた。ユーフィアはこれから出かけるのか、帰りなのかはわからないが、薄い青色の訪問用のドレスを着ていた。


「いいえ、お呼び出しを受けただけです。」


 そう言ってシェリーは封筒の裏のサインを見せる。国王陛下のサインを見たユーフィアは目を大きく見開いて、何かを言おうとしたが、先にユーフィアの隣に座っていた侍女が口を開いた。


「兄から呼び出しなんて貴女なにをしたのかしら?」


 兄・・・侍女をよく見ると金髪に碧の目その頭にはマリアより大きな三角の耳が生えていた。イーリスクロムと同じ狐獣人の女性だった。


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