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「そうですか。せめて、身の回りの事はご自分でできるようにしておいてくださいね。」


 シェリーはオリビアの為に呼び出されたというキョウに言った。


「俺たちはなぜオリビア様がそのような事を言いだしたか知らないのだが、あんたは知っているのか?」


 知らないのに教育係に任命されたようだ。


「知っていますが、個人的なことなので、私が言うことではありません。」


「あんたはそういうヤツだよな。ああ、ココからココまでがあんたが頼んだ商品だ。」


 倉庫の端にある一角を指して積み上げられた箱を目線で示す。

 シェリーはそれに手を触れ亜空間収納に入れていった。積み上げられた箱を入れ終わったシェリーはキョウに札束を差し出す。


「毎度あり!そう言えば配達に行ったヤツがもう嫌だと言っているそうだ。」


 キョウは札束を受け取り、又聞きで聞いたことをシェリーに伝えた。しかし、それは首都西支店のノインから聞いていたシェリーは知っているとキョウに伝える。


「それも聞いています。対処します。」


「何があったんだ?各国を渡り歩いているドースが嫌だと言うなんて相当な事なんだろ?」


「大したことはありませんよ。家に発生する偶発的産物に飲み込まれたのではないのでしょうか?」


 愚者の常闇のダンジョンでよく見かける光景が、オリバー作偶発的産物が上から降ってきて攻略者を飲み込んでいる姿だ。仲間が居れば助けてもらえるが、一人だったら、助かりようがない光景だった。


「なんだよ。人を飲み込むような偶発的産物ってそんなもの家に発生しないだろ。」


「平和な家に生まれることができてよかったですね。」


 シェリーは店の外に出るために、もと来た道を戻って行く。


「普通の家だ。はぁ。取り敢えず対処してくれるというのを伝えておくか。あと、王太子殿下もこの国に来ていると聞いたのだが、知らないか?」


 王太子・・・その身分は剥奪され放逐されるためにこの国に連れてこられたのだが、わざわざ、そんな事をシェリーが言うべきではなく、今の現状のみを伝える。


「ダンジョンに潜っていますが、生きているのか死んでいるのかは知りません。」


「何!なんで王太子殿下がダンジョンに潜っているんだよ。あれか!あんたのせいか?」


 シェリーに対するリオンの異常行動を指しているのだろうが、ツガイということだけで、そこまで酷い影響は与えることはできないだろう。


「何でも私のせいにしないでいただきたい。」




 そして、用が済んだとばかりにシェリーは転移をして、家のリビングに戻って来た。


「シェリー。」


 共に戻って来たカイルがシェリーの手を取りながら声をかける。


「5日ほど側を離れるけど、どこも行かないよね。」


「さぁ?仕事があればでかけますし、多分アリスが言っていたように呼び出しがあれば行きますから何処にも行かないということはありえません。」


 この家から出ないということはありえないということだ。


「じゃ、なるべく家にいるか。ペンダントを取るかどちらかにして欲しいな。」


 カイルは安全な家で過ごしてくれるか、番であるシェリーが何処にいるかわかっておきたいのだろう。


「はぁ。私はルーちゃんがここにいる限り、ここに居ます。外でペンダントを取ることはありません。」


「うん。それはわかっているけど、シェリーの側を本当は離れたくないんだ。ここに居ればオリバーさんの結界もあるし、ダンジョンマスターの彼女の守りもあるけど、外で何かあって助けられないのは嫌なんだ。」


「私にはするべきことがあります。ただそれだけです。」


 シェリーはカイルに懇願されるも、自分の仕事が優先されると言い切った。


 カイルは未だにシェリーの側を離れるかどうかを迷っていた。しかし、ラースで気を失って目覚めてからのシェリーの態度がシェリーが番だと分かったあの日に戻ったような錯覚を覚えてしまった。シェリーから突き放されている感をひどく感じる。

 少しずつ 少しずつシェリーの番に対する闇を晴らそうとしていたが、どうやら己は何かをしてしまったようだという答えに行き着いた。

 一度オーウィルディア氏を訪ねて何があったかを聞き出さねばならないのだが、シェリーを一人にしておくことに、不安が心の中を占めている。きっとアリスという未来を告げた少女の言葉が頭をよぎるからだろう。


 『お前達が弱いと黒の聖女の足を引っ張る。お前達が黒の聖女を捕まえておかないと一人で魔王に突っ込んで行く。(いず)れにしても黒の聖女は死ぬ。』


 カイルはシェリーを抱きしめて


「無理はしないで欲しい。」


 それだけ言って、リビングを出ていき、そのまま玄関を出ていった。


 カイルに無理をするなと言われたシェリーだが、無理も何も自分がすることは何も変わることはないのだ。

 取り敢えずオリバーに起きたら用があるので、連絡をくれるようにと書き置きをして、シェリーは自分の部屋に戻って行った。



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