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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
17章 不確定な未来と不穏な未来の予兆

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 箱の中身を確認した炎王は満足した様子で一言二言シェリーと話し、転移して帰って行った。


「無視はツライ。」


 黒いフードを被った人物がいじけてしまった。オーウィルディアが慰めているから大丈夫だろう。カイルを置いてギランに戻ろうかとシェリーが考えているとカイルが気がついたようだ。


「頭が痛い?何故だ?」


 どうやら操られていた時の記憶がないようだ。これも聞いていた通り。


 だから、シェリーはあった事実のみを述べた。


「そこのいじけている黒いフードがカイルさんを蹴りました。」


「おい!その前を言え!それじゃ俺が悪いみたいじゃないか。」


 黒いフードの人物は復活したようだ。確かに事実は事実だが、黒いフードの人物が全て悪いことになってしまう。


「ん?その声はディスタか?」


 カイルはその人物に心当たりがあるのか、名前を口にする。カイルにディスタと呼ばれた人物は黒いフードを取って、カイルの前に跪いた。その姿は、青い髪の間から竜人の角が生えていた。どうやら、カイルと同じ竜人のようだ。


「お久しぶりでございます。カイザール殿下。」


「確か、一番上の兄上から大陸の情報を集めて来るように言われていたと思ったが、まだ、国に戻ってないのか?」


「いえ、一度討伐戦後、大陸の情勢が安定したため、戻ったのですが、興味深いことが起こりそうだからと大陸の方に戻されてしまいました。」


 どうやら、セイルーン竜王国の第1王子に仕えている人物のようだ。


「興味深いこと?」


「そのことに関しては教えていただきませんでした。しかし、カイザール殿下はなぜラース公国にいらっしゃるのですか?」


「シェリーがいるからだ。」


 カイルにそう言われたディスタは眉間を押さえながら


「まさかシェリーというのはそこの口の悪い女っ・・・。」


 ディスタの周りが圧力がかかったように陥没した。カイルがディスタに向かって威圧をしているのだろう。


「シェリーは俺の番だ。言葉には気をつけろ。」


「っ・・・申し訳・・・ございません。」


 威圧から解放されたディスタは大きく息を吐く。しかし、ディスタはもう一つ聞かなければならないことがある。


「そこの(おん)・・・女性が殿下の番だと言うことは理解できましたが、魔眼に耐性のない殿下がこの場にいることが危険だということをご存じでしたか?」


「どういうことだ?」


 カイルはそう尋ねながら考える。悪魔を一体倒した後から目が覚めるまでの記憶がないことに関して、何かが起こったのかと。カイルは魔眼持ちが居ると聞いていたのに一切その存在の記憶がなかった。


「あなた、魔眼の悪魔に操られていたのよ。」


 オーウィルディアがその続きを話す。


「あの戦いで一番の死因が魔眼による同士討ちよ。だから、魔眼に操られてた人の意識を刈り取るのが一番いいのだけど、竜人のあなたが操られると、ただ人でしかないあたしたちじゃ対処できなかったわ。

 同じ竜人のディスタがいてくれて助かったわ。それに炎王を連れてきてくれたシェリーちゃんに感謝ね。」


 そうオーウィルディアに言われ、カイルはシェリーを見る。いつもどおり無表情に変わりはないが、目がいつもより冷たいような気がする。


 カイルの頭に黒いエルフのアリスの言葉が降ってきた。番が弱いと黒の聖女の足を引っ張るとはこういうことか、レベルが低い高いだけではなく、悪魔に対して戦えるか魔王に対して戦えるかということだ。


 カイルはシェリーの元に行き、シェリーの目線に合わす。


「シェリーごめんね。俺、頑張るから捨てないで」


「前から言っていますが、私にツガイは必要ありません。」


 ツガイは必要ない。以前から言われている言葉だが、今まで以上に心に突き刺さる言葉だ。


「キッツー!ウィル。あれ、キツすぎないか?俺だったら生きていけないぞ?番に必要ないって」


 さらにディスタから追い打ちの言葉が背中に突き刺さる。


「シェリーちゃんだからね。シェリーちゃん、ヴァンジェオ城に戻らない?あたし疲れちゃたわ。シェリーちゃんのご飯久しぶりに食べたいわ。」


 固まってしまっているカイルに同情の視線を向けながら、オーウィルディアはシェリーに食事を作って欲しいとさり気なく提案してみた。


「『女神の涙』をもう一つもらえるならいいですよ。」


 シェリーもオーウィルディアが出し渋った『女神の涙』を報酬として提案する。


「はいはい。シェリーちゃんのおかげで被害が最小に押さえられたから、2個を報酬として渡すわ。炎王様にも後で何か渡しておかないとね。何がいいかしらね。」


 そう言いながら、オーウィルディアはヴァンジェオ城に転移をした。



炎王side


「おかえりなさいませ。エン様。」


 炎国に転移で戻った炎王は番であるリリーナに出迎えられていた。


「ああ、ただいま。」


「無事にリオンたちを送り出されてたのですね。」


「・・・あー。無事じゃなかった。着いた早々佐々木さんに見つかってしまった。」


「まぁ。エンさんの運は酷く悪いですからね。お疲れ様でしたね。お茶を用意いたしましょう。」


 緑の白髪の女性が炎王の運の悪さから、そんなこともあるだろうと普通に円卓に座ることを勧める。


「エン!お土産ある?」


 青い白髪の少女が両手を差し出しながら聞いてきた。


「ヴィーネさん。いつも言っていますが、お土産よりお帰りなさいと言うことが先です。」


 リリーナにそう指摘され、『おかえりー。おみやげー。』と言い直しているが、あまり変わりなかった。


「ああ、佐々木さんの仕事を手伝ったから、報酬を渡された。ミルフィーユだ。」


 炎王はそう言いながら、どこからともなく空間から箱を取り出し、円卓の上に置いた。


「あ!ミルフィーユ。ヴィーネ。好きなの。」


「お仕事のお手伝いですか?お怪我はありませんか?」


 リリーナに尋ねられ、炎王はため息を吐きながら言う。


「怪我はないが、本当に佐々木さんは仕事に忠実だと言うことがわかった。結果さえ得られれば、使えるものは使うし、使えないモノは切り捨てられるのだろうなぁ。彼ら大変だろうな。リオンはやっていけるかなぁ。最低限レベルは上げておけと言ってたのになぁ。」


 炎王はギラン共和国の方角を見ながら出されたお茶を一口飲んだ。


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