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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
17章 不確定な未来と不穏な未来の予兆

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「それは、彼女も上の街を知っているということか?」


 上の街。ユールクスが再現した街のことか。


「ユールクスさんに知らない街と言うものに興味を抱かせた人だということは言えるでしょうが、あの街を知っているかどうかは知りません。」


 あの国であの街に住んでいる人なんて人口の7割と言ったところか、映像では見たことはありるかも知れないが、知っているかどうかはシェリーに判断することはできない。


「私があと言えるのは、アリスはエルフに処刑された。それだけです。」


「ん?相当、神という存在を嫌っていたようだけど?」


「それですか?神と言うものはそのようなものです。」


「あ。うん。」


 シェリーと共に行動していて、神という存在を間近に感じることが多くなったカイルは納得してしまった。


 そして、何もなかった部屋の床に5つの陣が浮かび上がった。表ダンジョンの1階層から4階層まで転移できる陣と入ってきた冒険者ギルドに繋がる入口に転移できる陣だ。


 シェリーはギルドに繋がる入口がある転移陣に乗ろうとしたが、カイルに引き止められてしまった。


「シェリー、待って。」


「何ですか?」


「もしかして、このままラース公国に向かうつもり?」


「そうですが、何か問題でも?」


「少し休憩して行こう。ほとんど、丸一日走り通しだったし、上の階層で休めるところで休んで行こう。」


「問題ありません。」


「先程のアリスって人が魔眼持ちの次元の悪魔がいるって言っていたことは、この後の戦いはキツくなると思うけど?」


 シェリーは少し考え


「わかりました。」


 そう言って4階層へ転移する陣に乗り込んだ。



 その頃、表ダンジョンの4人は8階層の密林の中にいた。


「ったく。ここのダンジョンはどうなっているんだ?5階層が灼熱の砂漠に6階層が5階層から入った遺跡の中で、7階層が乾燥した荒野で、8階層が密林って何だ!暑いところばかりじゃないか!」


 グレイが文句をタラタラ言いながら、巨大な蟻の魔物を斬っていた。


「先程からウジャウジャ出てきやがって!」


 だから、ダンジョンマスターに依頼されたのだ。


「6階層は涼しかったですよ。死臭が酷かったですが。」


 スーウェンは風の魔術で蟻の関節を切り裂いている。


「ああ、うまいもん食いてなぁ。」


 オルクスは向かってくる蟻を淡々と斬っている。


「余計に腹が減るから言うな。」


 リオンも仕事を処理するが如く、刀で蟻共を伏していっている。


「あと、22階層を8日で終わらすの無理じゃありません?」


 スーウェンが蟻を倒すのに飽きてきたのか、辺り一帯を炎で包み密林ごと焼き払っている。


「無理だよな。」


 グレイはその光景に手を止めて見入って、ため息を吐いた。


「無理だな。」


 リオンは明後日の方向を見ながら呟いている。この階層の残りはどれぐらいの広さがあるのだろうと思っているのだろう。


「グレイ。いい加減にシド総帥の手帳を見せろ!効率が悪すぎる。」


 オルクスがグレイに詰め寄ってきた。


「そうだよな。10日以上掛かったら絶対にシェリーに置いて行かれるよな。」


 そのシェリーは4人を置いてラース公国に行こうとしているなんて、思ってもいないことだろうが、10日以上掛かれば、『そんなに暇じゃないので』と言われ、置いて帰られるのは確実だ。


 仕方がなく、グレイは3人にシド総帥の手帳を見せた。


「5階層は飛ばしていいって書いてありますよ。遺跡に直進するって。」


「7階層はゾンビの湧き出てくるポイントだけでいいじゃないか!」


「おい、蟻は元から数が多いから無視をしろと書いてあるが?」


 スーウェン、オルクス、リオンがグレイに詰め寄って聞いている。


「いや。だってさ。少しでも経験値欲しかったし、今、レベル2つ上がったところだし・・・。ごめん。」


 3人の冷たい視線を浴び、己のエゴのために言わなかったことを謝った。


「これで、レベルが2つも上がったのですか?」


 今まで、多くの魔物を倒していたが、一向にレベルの上がらないスーウェンが驚きながら言う。


「グレイ。レベルいくつだ?俺なんか全然上がらないぞ。」


 オルクスも経験値2倍でも上がらないところまで来ているのに、グレイのレベルが上がっていることに眉を潜める。


「こんなザコでレベルが上がるなんて羨ましい限りだ。」


 リオンは羨ましいと言いながらもバカにしている視線をグレイに向ける。


「48だよ。低くて悪かったな。一国の公子のレベルなんて、高くある必要なんてなかったんだよ。」


 確かに、(いず)れ再び世界を統べることを夢見ている父親に強くあることを求めたれたスーウェンや、傭兵として各地を回っていたオルクス、炎王に言われレベルを上げることを強要されたリオンと違い。ただの公子としてとしか教育されていないグレイは高レベルである必要はなかったのだ。


「まぁ。必要ないと言われれば必要ないのでしょうね。」


 グレイの言葉に一定の理解を示すスーウェン。


「グレイが育った時が平和だったということか。」


 魔王という驚異が去った後に育ったグレイに力は必要なかったことをオルクスは言っている。


「俺は国を守るためには力が必要だと教えられてきた。弱いのは己の怠慢だとな。」


 炎国には炎国の事情があるのだろう。

 ただ言えることがあるとすれば、ラースでもないグレイにミゲルロディアは大公の座を譲るつもりはなかったとだけ、記しておく。


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