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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
17章 不確定な未来と不穏な未来の予兆

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少し時は戻り、オーウィルディアside


 オーウィルディアはラース公国の公都グリードに戻ってから忙しく過ごしていた。

 兄であり大公であったミゲルロディアが床についてから政務は実質止まっていたのだろう。しなければならないことが、山積みだった。

 そこにシェリーが黒い魔物がシーラン王国まで入り込んでいるから、そちらで始末しろと言ってきたのだ。


「ねぇ。ナオフミ。」


「嫌や。」


「本当はわかっているんでしょ?」


「分からへんし、分かりたくもあらへん。ビアンカと別れるなんて嫌や。」


 話だけを聞いていると別れ話を持ち掛けられている恋人同士の言葉だが、ソファで向かい合っている二人は方や黒髪黒目の青年で方や桃色の髪に同じ色の目を持った大男だ。 


「はぁ。別れろと言ってないわよー。ナオフミだけで国境沿いの魔物を討伐してきてって言っているのよ。その方が早く済むでしょ?」


「嫌や。」


 先程と同じ言葉をナオフミは繰り返す。そんなナオフミをオーウィルディアは呆れた目でみる。


「シェリーちゃんが言っていたのよ。魔王が復活するって、ナオフミのせいでその時期が早まったとも言っていたのよ。だから、次元の悪魔がいつ出現してもいいようにしておきたいのよ。」


「それは悪いと思おてるけど、大体オリバーが悪いんや。俺のビアンカを連れ去って行くからや。だから、ビアンカと離れるのは嫌や。」


 自分がやらかしたことで、魔王の出現が早まっていることは、シェリーから聞いてナオフミは知っているが、自分が悪くないと言い張る。そして、何がなんでも番であるビアンカと離れて行動することに否定的であるようだ。


「はぁ。討伐戦の時もビアンカと一緒に行動していて、問題になっていたことがあったでしょ?あの子が何日も野宿なんてできないわよ。」


「大丈夫や。俺がなんとかするさかいに。」


 何を根拠に言っているのかわからないが、自信満々だ言い切った。まぁ。長年共に暮らしていたナオフミはビアンカがそういう事を苦手としていることは重々承知しているだろう。


「分かったわ。二人で行ってくればいいけど、ビアンカに連絡したら直ぐに出られるようにしてくれないかしら?あたし一人じゃ低級の次元の悪魔1体しか相手にできないわ。」


「おおきに。直ぐに行って、直ぐに戻ってくればいいんやろ?」


 ナオフミは軽く言うがラース公国の南側全てがイアール山脈となっている。そんなに気軽に黒の魔物の討伐が完了するものではない。



 数日後、オーウィルディアの元に緊急の報告がもたらされた。


「その情報に間違いないのかしら?」


「俺の感知能力が当てにならないと?」


 オーウィルディアの前には黒い外套を纏い、深くフードを被った人物がいる。


「別に貴方の能力を疑ってはないわよ。あの戦乱の中で貴方の力のおかげで命拾いしたことが幾度もあったもの。」


「だったら何だ?俺を態々雇っておいて、疑うような言い方は」


「だから、貴方の能力は疑っていないと言っているじゃない。次元の悪魔が3体も出現したということよ。流石にあたしだけじゃ無理よ。ナオフミとビアンカに戻ってもらわないと、対処できないわ。歩きながらでいいから、分かったことを報告してもらえないかしら?」


 そう言ってオーウィルディアは立ち上がり、大公が使用する執務室から廊下にでる。


「出現したところは焦土化した地域の海側だ。地図を照らし合わせると今が人がいない町のようだが、近くに中核都市が存在している。」


「海側の中核都市?ペラトールかしら?あそこは重要な施設があるから、被害を出すわけには行かないわ。」


「ああ、確か地図にはそのような名前が書いてあったな。」


 幾度か廊下の角を曲がり、突き当りの部屋までたどり着いた。オーウィルディアはその部屋の扉を開けようとしたところで、中から話し声がしていることに気がついた。


『何か問題でも?』


「問題です。」


『ちっ。こっちも色々問題があるのです。レベル1ぐらいいいじゃないですか。』


 中から聞こえて来た声は、この部屋にある魔道具の管理者とシェリーの声だった。慌てて、オーウィルディアは部屋の中に入る。入って一番に目が行くのは、正面の壁一面に世界地図が描かれていることだ。ラース公国の地図でもなく、この大陸の地図でもなく、魔の大陸を含めた世界地図が存在しているのだ。

 オーウィルディアはその地図に示されているピンク色の光の場所を確認する。ラース公国の公都グリードに複数と南の国境沿いに一つ、シーラン王国の王都メイルーンに一つ。そして、ギラン共和国の首都ミレーテに一つ。


「シェリーちゃんがミレーテにいる?それなら、ちょっと代わりなさい。」


 そう言って、今シェリーと話している人物から赤い魔石を奪い取る。


「シェリーちゃん。今、ギランにいるのよね。」


『そうですが、なんですか?オーウィルディア様。』


 なんて運がいい。討伐戦の時に共に戦った者達が、ミレーテで冒険者としていたはずだ。彼らに頼んでこちらに来てもらえないか交渉ができる。あのナオフミより話が分かる者たちだ。

 しかし、先にそこのギルドマスターに話をつけなければならない。


「リュエルに代われないかしら?」


『ギルドマスターですか?今はダンジョンにいるので無理です。』


「そうなの?『王の嘆き』にいるの?Sランクの『青の炎』が借りれないかと思ったのだけど・・・。」


 シェリーがダンジョンにいるのなら、今すぐに対応をしてもらうのは無理なことだ。オーウィルディアは事情を説明しながら、やはりナオフミに頼るしかないのかと諦めかけたとき


『1日持ちますか?』


「1日ね。」


 まだ、なんの悪魔が出現したか確認できていないが、魔眼持ちだと1日押さえられるかどうか。しかし、3体はキツイのが本音だ。


「ギリギリかしら?はぁ。こんなことになるとわかっていれば、ナオフミを公都に留めて置いていたのに。」


 愚痴が漏れてしまった。


『いないクソ勇者を当てにしても仕方がないです。1日で裏ダンジョンの掃除をしますので、魔眼の使用許可もらえますよね。その後、ヴァンジェオ城に転移します。』


 シェリーからおかしな言葉が出てきた。


「え?裏ダンジョン?掃除?どうい『ブチッ』ことなのー!って切られたわ。」


「くっ。ふふふっ。クソ勇者。確かにクソ勇者だ。」


 オーウィルディアと共にこの部屋に入ってきていた。黒いフードの者が肩を揺らせながら笑っていた。


「珍しいこともあるものね。ディスタが笑うなんて。聞いていたと思うけど、悪魔を1日引き止めるのを手伝ってもらうわよ。」


「あ?俺がか?それに先程の口の悪い人物は誰だ?戦力になるのか?」


「戦力になるわよ。あたしと戦っても引けを取らない強さは持っているわ。誰かって言うのは、ラースの一族ってことは教えておくけど、興味があるのなら本人から聞きなさい。」


「興味はないが、一人ラースが増えたぐらいで、3体の悪魔の駆逐は無理だろ。」


「大丈夫よー。シェリーちゃんが来るってことは、確実に竜人の彼が付いて来るだろうしね。」


「竜人だと?」


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