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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
16章 英雄の国

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「はぁ。参ったなぁ。佐々木さんは本当になんでもありだ。」


 炎王は天井を仰ぎ見る。そこは木の板が張られているだけで、何もないのだが、その先の何かを見ているのだろう。


「何でもは無理です。それに炎王ほどではありません。」


 俺には死んだ人を生き返らす事はできなかったと、そう言いながら、炎王はシェリーを見て隣に座るアマツを見る。


「なぁ。天津と少し話をしたいのだがいいか?」


「構いませんが、私から離れすぎると強制解除されますよ。」


 所詮、アマツはシェリーのスキルでこの世界に再構築された存在だ。シェリーの魔力が及ばないところまで行けばスキルが強制解除され、アマツの存在は世界の記憶へと戻される。


「そこのテーブルぐらいなら大丈夫か?」


 炎王は3つ離れた二人掛けのテーブルを指す。


「それぐらいなら。」


 炎王もアマツに対する思いは複雑なところがあるのだろう。炎王とアマツは席を離れ、別のテーブルに場所を移した。

 その姿をシェリーもまた複雑な思いを持って見る。あの子達が大人になれば死んだ自分を受け入れてくれるだろうか。いや、きっと炎王がこの世界に馴染み、アマツという存在を受け入れたからに違いない。この世界で親子となった彼らと世界を経立てた佐々木とは立場が違うのだ。


「シェリー。」


 カイルに呼ばれ振り向けば、アマツが座っていたシェリーの隣にカイルが座っていた。


「シェリーには俺が側にいるからそんな顔をしないで。」


 カイルにそんなことを言われてしまった。一体どんな顔をしていたというのだろうか。


「俺もいるからそんな泣きそうな顔をするな。」


 グレイもカイルの反対側に来てしゃがみこんでシェリーを見上げて言った。泣きそう?頬に手を当てても別に泣いてなどいない。


「ご主人様、私もいますよ。」


「シェリー、俺も側にいるからな。」


 スーウェンもオルクスもシェリーに声をかける。


「ラースのはモテモテだな。なんか変な魔術でも使ったのか?」


 そんなシェリーを見てギルドマスターはシド総帥と同じ感想を言った。


「ギルドマスター。暇ならダンジョンの扉を開けておいてください。」


 どうも二人の話は長そうだ。炎王とアマツは楽しそうに話をしている。羨ましい限りだ。恨めしい限りだ。

 ギルドマスターは、ラースのは怖いから言うことを聞いておくと言ってこの場を去って行った。失礼な白豹だ。


「シェリーさん。今からダンジョンに向かわれるのですか?私はどこでお待ちすればよろしいでしょうか。」


 今まで黙って隣のテーブルに座っていたオリビアが聞いてきた。どうやら、シェリーを待って一緒にシーラン王国に向かうつもりのようだ。今まで炎国という島国を出たことがなかったオリビアが他国に対する知識がそこまであるとが思われない。それなのに番がいるというだけで、国を飛び出すというのは凄い行動力だ。


「オリビアさんは他国に対する知識はどれほどありますか?」


 シェリーはオリビアの質問には答えず、質問に質問で返した。


「え?外交に問題ないぐらいでしょうか。」


「ということは市井についての知識はないと思っていいでしょうか。」


「はい。」


「では、炎王に頼んで市井での生活を教えてもらってください。まだ、この国のほうがいいでしょう。」


 この国は英雄も黒を持ち、炎王も黒を持っていることで、黒に対する拒否反応が少ない国だと言っていい。鬼族の彼女が市井について学ぶなら、この国が適しているのだ。


「わかりました。初代様に尋ねてみます。」


「私はシェリーと一緒にダンジョンに行くからな。」


 リオンは今まで炎王が座っていたシェリーの正面の場所に座って言ってきた。シェリーはそんなことを言っているリオンを視た。彼のレベルは丁度100だ。あの女神ナディアから鬼族とは別の化け物と言わしめたリオンだ。レベルは100だが、他のステータスが100とは思えない程高い。種族的なこともあるだろうが、あの謎の生命体から与えられた力も大きいのだろう。

 しかし、裏ダンジョンに連れていくかといえばNOだ。彼もシェリーの足手まといでしかないのだ。


「表ダンジョンなら良いですよ。ダンジョンマスターからダンジョンの掃除を頼まれていますので、魔物を倒せば経験値が二倍という契約をしています。」


「経験値が二倍か凄いな。もちろん行く。」


 シェリーが表ダンジョンに行くとは言っていないのに、行くことを了承してしまった。その言葉を聞いたシェリーのツガイたちはリオンに憐れみの視線を送る。リオンはきっと表ダンジョンと言う言葉の意味を問わなかったことを後で後悔することになるだろうということは、4人にはわかってしまっていた。


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