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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
16章 英雄の国

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 ミレーテの冒険者ギルドの二階には高位ランクの冒険者だけが受けられる依頼であったり、くつろげるスペースがあったりするのだが、今はそこには受付の女性しかおらず、冒険者は誰もいなかった。


 そのくつろげるスペースの一角を占領する。


「ラースの。ユールクス殿の依頼は完了したのか?」


 ギルドマスターが聞いてきたがシェリーの機嫌はすこぶる悪いので


「は?シド総帥閣下が二度寝すると言ってダンジョンの扉を開けてもらえなかったので、ここまで戻って来たのですよ。」


 シェリーは全てを端折ってシド総帥がサボっているように報告した。


「あんのバカ。仕事しろよ。で、ここのダンジョンの扉を開けてればいいのだな。で、初代様はどうなされたんで?」


「ああ、色々あって、まぁ・・・。」


 炎王はチラチラとシェリーを見ながら言葉を濁した。大体推測はできる。あの炎国の外交官が飛んで来る程の被害だ。その責任をとって放逐して、あとは好きにすればいいと言って、ギラン共和国まで連れてきたのだろう。後は陸続きなのでどうにかなるかという案だったのだろうが、放逐する前にシェリーに見つかってしまったのだ。


「炎王。はっきりと言ってください。」


 シェリーは炎王にはっきり言うように促す。


「番である佐々木さんのところに行って・・・あ、うん。ごめん。」


 シェリーが思っていたとおり王太子がシェリーのところに行ってもらうことが目的だったようだ。シェリーが炎王を睨み付けると言葉を止め謝った。


 シェリーは隣で先程から震えているアマツに声をかける。


「どうしますか?」


 しかし、アマツは何も話さず首を横に振るだけだった。アマツは内心迷っていた。目の前に人物に声を掛けたい。しかし、己は所詮死人だというジレンマに襲われていた。シェリーいや、佐々木にもアマツのジレンマ理解できる。今更死人である自分が生きている人の前に出てきてどうなるのかと、でも、会いたい。


「炎王。私の質問に答えてくれたのなら、今回のことは許します。」


 そのシェリーの言葉に炎王はホッとため息を吐き


「何を答えればいい?」


「天津さんのことをどう思っていますか?」


 今回のことと全く関係のない質問に炎王は驚いた表情をして固まった。しかし、長くため息をはきながらポツリと言葉にした。


「良くわからない。」


 長い間をおいて再び口を開く。


「俺は会ったことがないからな。全て人から聞いた話しばかりだ。だから、わからない。ただ・・・一度会うことができたのなら聞いてみたかった。なぜ、俺を捨てたのかと。いや、わかってはいるんだ。龍人は龍人の子供を側に置くことができないってことぐらいわかっているんだ。一人だけ龍人の子がいるんだが、側に居られない。殺したい衝動にかられるんだ。だから、わかってはいるんだ。」


 龍人の子は人の中に混じって暮らせるように成人するまでは人と変わらない姿だといことを目の前の人物から聞いたことがある。同じ種族なのに自分の血族なのに排除しようとする本能が表に出てしまうそうだ。だから、龍人という種族は数が少ない。互いが成人すればその本能は押さえられるらしい。龍人というのは変わった種族だ。


「ふふふ。私も同じ事を思ったわ。自分の子は捨てずに育てるんだって思っていたのにいざ生まれて見るとそうじゃないと思い知らされる。捨てたくて捨てたんじゃないの。」


 外套のフードを取ったアマツが泣きながら笑っていた。炎王は目の前の人物を見て完全に固まってしまった。


「アマツさま。」


 ギルドマスターがアマツの姿を見て名前を口に出す。炎王はアマツからシェリーに視線向け、唸るような低い声を出してシェリーに問う。


「佐々木さん。一体何をした。」


「いつも通り、天津さんと手合わせをしただけですが?」


「いつも通り?だと?」


 シェリーの横でアマツは首を縦に振って頷いている。


「佐々木さん。天津は死んだ筈だ。俺の目の前にいる龍人は誰だ?」


「千年前に亡くなった天津さんです。」


「だから!佐々木さんは何をしたんだ!」


 炎王は目のにアマツがいることが気に入らないらしい。隣にいるアマツがビクリと炎王の殺気に反応するがシェリーはいつも通り淡々と


「世界の記憶から再現しただけです。魂と肉体の再構築。だから、正確には天津さんであって天津さんではありません。」


「再構築。聖女となるとそんなことも可能なのか。」


「それに今回炎王が私に会うつもりが無かったように、天津さんを炎王に会わすつもりはありませんでした。後はユールクスさんのダンジョンを見てもらって、解除するつもりでした。」


「目の前の天津は生者そのもの・・・それは、佐々木さんは死者を生き返らすことができるというのか?」


「・・・条件によります。天津さんは生き返らせたわけではありません。世界が決めが天命に逆らう事ができるのは世界の楔から放たれた者のみです。」


「例えば?誰だ?」


「例えば神々のいたずらで存在するモルテ王。例えば2度死に2度蘇った大魔女エリザベート。例えば勇者に殺された魔導師オリバー。そして世界から喚ばれた私、シェリー・カークスと目の前にいるエン・グラシアール。」


「俺が?しかし、アリスが・・・。」


 最後の方は小声になり、聞こえなくなってしまった。


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