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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
16章 英雄の国

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 シド総帥は再起不能に陥り『今日はふて寝する。ダンジョンのことは他を当たれ』と言って、ふらふらと会議室を出て行ってしまった。


「ちっ。ここから行けないのならギルドまで戻らなければいけないではないですか。」


 シェリーはまた来た道を戻らなければならなくなったことに苛立ちを顕にした。


「え?戻るのか?ここにダンジョンの入り口があるのだろ?」


 オルクスがシェリーに尋ねる。確かギルドマスターもここの入り口を開けてもらうといいと言っていた。


「シド総帥閣下が開けてくれないことには入れませんので、ギルドの入り口に向かいます。」


「「「「は?」」」」


 シェリーは冒険者ギルドにもダンジョンへの入り口があると言っている。


「シェリー。それはダンジョンの入り口が2ヶ所あるってことか?」


 オルクスがシェリーに聞くが


「そもそも、なぜダンジョンの入り口が一箇所しかないことが前提なのですか?それにこの国全域が『王の嘆き』のダンジョンですのに入り口が一つなはずないでしょ。」


 どうやらダンジョンの入り口は複数あるようだ。


「本当にこの国全域なのですか!10日でダンジョンの魔物の排除なんて無理ではないですか。」


 スーウェンは当たり前な事を言う。一国の大きさが一層毎に50階層あると言っているのだ。一日5階層分(イコール)国5つ分に相当する広さの魔物の駆除をしなければならない計算だ。


「10日かかろうが、一ヶ月かかろうが、経験値倍になるのですが、ダンジョンに行くのですか?行かないのですか?」


 ダンジョンのことでグチグチ言われていることにシェリーは苛ついているようだ。


「「「行くに決まっている!」」」


 グレイとスーウェンとオルクスは言い切り、シェリーを膝の上に乗せているカイルはニコニコと笑いながら


「俺はシェリーと裏ダンジョンの方に行くからね。一人にしてフラフラと何処かに行ってしまうとダメだからね。」


 シェリーに付いて行くようだ。


 ダンジョンに向かうため立ち上がり、部屋を出て行こう扉を開けたところで、数人の傭兵団の者たちと先程オルクスの一撃で膝を付いていた金狼獣人の青年が立っていた。

 シェリーはさっさと言われた依頼を終わらせたいと思っていたのに、また邪魔されるのかと怪訝な表情になる。


「何か?」


「オルクス・ガナート!俺と勝負しろ!」


 どうやらオルクスに用があったようだ。それなら問題ないとシェリーは


「オルクスさん。しつこそうなので、相手してあげたらどうです?」


「嫌だ。シェリー、それは俺を置いて行くつもりだろ?」


 オルクスはシェリーの性格を大分理解してきているので、直感的に置いていかれることがわかったようだ。


「あ、そうだ。この辺りに冒険者用の品物が置いてある店があったよな。」


 グレイが思いついたように、ここに来る前に見た店のことを言い出した。


「そこで、ダンジョンに行く用の物が揃えられるんじゃないのか?俺とスーウェンが買いに行ってくるから、オルクスは相手してあげたらどうだ?ここに来るのは久しぶりなんだろ?」


 確かに引き継ぎもなしに突然辞めたオルクスには必要な時間かもしれない。女神ナディアが示したのだからこれも必要なことなのだろうと諦める。


「はぁ。わかりました。あと、ナディア様。グレイさんを遣って言うのは程々に。」


「うぇ?」


 女神ナディアの神言を受けた自覚がないグレイは驚き、シェリーの耳にだけ『あら、ユールクスのダンジョンに何も準備なしに行くはかわいそうでしょう?』と聞こえた。



 シェリーは傭兵団の建物の裏にある訓練場に来ていた。シェリー自身冒険者ギルドに一人向かっても何も問題なかったのだが、それは4人から否定されてしまった。カイルはシェリーの横に立っており、訓練場の中央には、オルクスと金狼の青年が向き合っている。

 そして、ここにはいないグレイとスーウェンはこの近くにあるこの国で一番老舗のフィーディス商会の首都西支店に行ったのだが、ふとシェリーは思い出す。


「あ・・・。」


「シェリー。どうかしたのかな?」


 カイルが尋ねてきたが、グレイがいるからまぁいいかと思うことにした。


「何もありません。」


 そう言って、シェリーは訓練場の中央に視線を向ける。向かい合っている二人の立ち姿は相反していると言っていい。金狼獣人の青年は今にでもオルクスに噛みつかんばかりに、腰の剣に手を添え威嚇している。逆にオルクスは飄々とした感じで、腰に手をあて審判として中央にいる人物と親しく話しをしている。


「おい!いつまで喋っているんだ!」


 しびれを切らしたらしい金狼獣人の青年が二人の会話に水を差す。


「はぁ。後で時間をください。」


 審判の男性はため息を吐きながら、オルクスに時間を作ってくれるように頼む。やはりいきなり傭兵団をやめたことで、問題があるようだ。


「ああ、わかった。で、そういえばシド総帥の子供の名前はなんだ?」


 オルクスは目の前に本人が居るにも関わらず、審判をしている人物に尋ねた。


「なぜネールに聞く!俺はリルラファール・ガレーネだ!」


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