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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
15章 コルバートの魔女

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 シェリーはキッチンで2つの鍋の前に立っていた。一つはオリバー用の目が痛くなる程のスパイス増し増しのカレーとユーフィアに言われた甘口のカレーである。


 このスパイスが漂う空間にいるのが、カレーを作っているシェリーとシェリーの横で手伝っているカイルとキッチンの入り口でカレーができるのを心待ちにしているユーフィアのみである。


 ユーフィアと共に来た夫である第6師団長のクストと侍女のマリアの姿はここには無い。同じく、グレイとオルクスの姿もここには見当たらない。

 獣人である彼らにとってシェリーが作るスパイス増し増しカレーの匂いに耐えきれなかったのだ。

 その4人はどうしているかと言うと裏庭で手合わせをしているようだ。


 シェリーは出来上がったオリバー用のカレー鍋の蓋をして、風の魔法で空気の循環を行いキッチンとダイニングに充満している匂いを外に追い出し、ユーフィアに声をかける。


「カレーを食べたら帰ってくださいね。詳しい話は後日でお願いします。その時は前日までに連絡をください。」


 なぜ、突然訪問してきた客にカレーを作っているのかわからない。


「え?ええ。ごめんなさい。ビデオカメラと携帯電話を新年までに作りますから。」


 黒毛和牛のステーキとビデオカメラ。

 カレーと携帯電話。

 この取り引きは同等の取り引きとなっているのだろうか。この世界にはない物ではあることは確かである。


 シェリーはカレー皿にご飯とカレーをよそって行く。


「炊飯器があるのですか!」


 ユーフィアが目を輝かせて見ている先にはシェリーがカレーをよそっている後ろにある大きな丸い入れ物だ。見た目には鍋に蓋が付いているような物だが蓋を開けるとそこには炊きあがった白いお米が大量にあった。以前は普通の鍋の大きさの物だったのだが、ツガイという居候が増えた為にオリバーに言って業務用の炊飯器並の大きさの物を作ってもらったのだ。


「ありますが?それがどうしました?貴女はご自分でそれぐらい作れるでしょう?」


 そう言いながらもシェリーは次々にカレーをよそっていく。ここには3人しかいないのに8人分のカレーを。


「お米の水加減と火加減がわからないので作れないのです。」


 どうやら、ユーフィアは根本的にお米の炊き方を知らない為に自分で炊飯器を作れなかったようだ。


「ギラン共和国の商人は食材も売っていますが、その食材に対するレシピも売っていますよ。カイルさんこれを運んでください。」


「えー!!」


 ユーフィアの心からの悲鳴を聞きながら、シェリーはため息を吐く。相変わらず、魔道具の事以外は全然ダメだなと。


 食事の準備が出来たところで4人が裏庭から戻ってきたようだ。廊下から話し声が聞こえてくる。

 どうやら、シェリーが部屋に充満していたカレーの匂いを外に追い出したことで、食事が出来上がったことがわかったようだ。


「シェリー。腹減った。」


 そう言いながらオルクスがダイニングに入ってきた。その後ろからは項垂れた様子のグレイが入ってくる。このメンバーで一番レベルが低いのはグレイなのでこってり絞られたのだろう。


「あの匂いは耐えられないがこの匂いはうまそうだ。」


 グレイの後からクストが入って来て、放心状態のユーフィアに近づいて行く。


「ユーフィアどうした?また、嬢ちゃんに何か言われたのか?」


「奥様!どうされましたか?」


 マリアもユーフィアに声をかける。


「あったのよ。」


「「何が?」です?」


「レシピがあったのよ。レシピが売っているなんて!」


 そんなことを言っているユーフィアを横目にシェリーは席に座ろうとしたが、オルクスに抱えられてしまった。いつものことだが、食事は一人で食べたい。


 シェリーは斜め上を見ながら、スーウェンが誰も居ない応接室に転移してきたのがわかった。思ったより早かった。ここに戻って来なくても良かったのだが、頭の硬いエルフ共をどう説得したのか、オリバーから言われたことを実行してきたようだ。 


「食事には間に合いましたね。」


 そう言ってスーウェンが入ってきた。その言い方だと、食事をするために無理やり戻って来たように聞こえてしまう。



 食事が終わりユーフィアは魔道具の作成を約束してクストと帰って行ったのだが、シェリーの目の前にはユーフィアの侍女であるマリアがいる。

 そう、まだ金狼族である彼女との話が残っているのだ。シェリーはここにいる必要は無いように思えるのだが、マリアがここに居るように言ったので彼女の正面に座っている。


「ラースは認識しているということでしたが、それは大公閣下の許可では無いということですね。」


「ラース公国から正式に発表されていないことなので、私には答える権利はありません。」


「それは勇者と聖女様がグリードに入られたことと関係がありますか?」


「答えられません。ラースは認識しているそれだけです。」


「グレイシャルが4千年ぶりに女神の寵愛を受けた子であるというのに国の外に出すのですか?」


 ラース公国の歴史が5千年あると言う中で4千年ぶりの女神からの加護を受けた者がグレイなのである。女神の加護を受けた者がラースにいることで国が繁栄すると伝わっているのだ。

 いや、現に4千年前に女神が降臨して言ったのだ。加護を与えた者が国にいることで国が繁栄するはずだったと。



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