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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
15章 コルバートの魔女

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「やっぱり、腹が立つ。ねぇ。どうせ観ているのでしょう?」


『何かな?』


 シェリーの頭の中にあの謎の生命体の声が響く。


「頭の硬いエルフにはきちんと上の者から言い聞かせた方がいいと思うのですけど?直接言ってくれません?うざいと。」


『え?僕が言うの?最近よく働いたからそれは遠慮しておくよ。』


「する必要のない仕事がありましたよね。それに関係することだと思うのですが?」


『えー。それはそれ、これはこれ。』


 目の前のエルフにもイラッとくるが、最たる原因の神にもイラッとくる。


「ちっ!・・・あっ。」


 シェリーは入り口の扉に目を向ける。流石に朝から騒ぎ過ぎた。


「ユーフィアさん。結界を張って自分の身は自分で守ってください。」


 突然シェリーはユーフィアに警告をした。先程のエルフの長の威嚇には何も言わなかったシェリーが身を守るように言ったのだ。


 そして、入り口の扉が溶け出した。ドロドロと木製の扉が溶岩の様に溶け出した。その溶けた扉の向こう側には金髪青目の美しい青年がにこやかに立っていた。

 シェリーは思わず1歩2歩と下がり、オリバーから距離を取ろうと足が動いてしまう。


「シェリー。帰ってきた早々、朝から騒ぎ過ぎじゃないのかね。人の睡眠を邪魔をしないで欲しいのだが。」


「ご、ごめんなさい。」


 シェリーは素直に謝った。今回の事はシェリーが悪いわけではないのに、言い訳をせずにただ素直に謝った。 

 その言葉を聞いたスーウェンが慌てオリバーに頭を下げ


「騒がしくしてしまい申し訳ありません。父がどうしてもと言って、付いて来てしまったために騒がしくなってしまいました。」


 オリバーはスーウェンの横にいる深い緑の髪に青い目のエルフに視線を向ける。


「ああ、ハイエルフのなり損ないか。」


 オリバーは言ってしまった。堂々とエルフの長に言ってしまった。


「たかが人族の癖に我を愚弄するのか!」


 そう言い、エルフの長はオリバーに魔力の塊をぶつけるが、オリバーは何も感じないように、にこやかな顔で


「俺もそこにいるシェリーもただの人族じゃない。聖人だ。お前と違って神に選ばれた上位種族だ。下等生物。」


 シェリーが言われた言葉をオリバーはそのまま返した。いつから聞いていたのだろう。

 下等生物と言われたエルフの長は顔を真っ赤にして怒りを顕にし、魔力で巨大な陣を形成していく。こんな狭いところで高位な魔導術を使おうというのか。


「神の言葉も聞けぬ者が聖人だと笑わせてくれる!我ら種族自体が神に選ばれたのだ!」


「種族自体がね。何を根拠に言っているのだね。あと、俺の祖は色んな神に愛されていたようだったから、未だに神々が語りかけてくる。お前とは違う。白き神に見放されたお前たちとは違う。」


「煩い!煩い!煩い!見放されてなどいない!」


 シェリーは美しい陣が形成されていくのを眺めながら、美人が喧嘩しているのも絵になるものだなと思っていると、オリバーの視線がシェリーに向いていることに気が付く。オリバーがニコリと笑いかけたのを見てシェリーは嫌な予感がし、逃げ道を探すが時は遅く。


「先程、シェリーがお前に神の言葉を直接聞かせようとしたが、その神に拒否されていたようだが?」


 オリバーのその言葉にエルフの長の視線がシェリーに向く。

 確かに謎の生命体と話をしたが、独り言の小声でしかない。それも謎の生命体の声さえも拾っていたようだ。だから、オリバーは侮れない。

 大魔女エリザベートを祖とし、暴君レイアルティス王の血を受け継ぐ者。グローリアの王族の色を持たずに生まれてきたが故に王族から抹消された者。色というくだらないものを気にしなければ、グローリアの王になっていたであろう者。

 本当に彼の怒りは買いたくない。


「神の言葉を!何を言われた!何を言った!」


 エルフの長の怒りと共に魔力が増幅し、巨大な陣が完成されてしまった。


「答えよ!答えなくばここで死ぬが良い。メテ「『二ヒールム』」・・・。」


 エルフの長が魔導術を発動しようとしたところにオリバーがかぶせるように魔導術を施行した。強大な陣をオリバーは無に返してしまった。いや、陣も魔力も全て虚無に飲まれてしまった。


「本当にエルフという生き物は相容れないものだ。」


 己の魔導術を一瞬で虚無に飲まれてしまい呆然としているエルフの長をオリバーは殴りつける。


「ぐっ。」


 殴られたエルフの長は部屋の端まで飛ばされた。そのエルフの長のところに、にこやかな表情で足音をカツカツとさせながらオリバーは近づいていく。


「ここは俺の家だ。勝手に壊さないでもらいたい。」


 起き上がろうとしていたエルフの長を蹴りつける。部屋の壁にヒビが入るほどの衝撃だ。


「大体、シェリーをシャーレンに連れて行くだ?ビアンカの時も散々揉めたが、お前たちは聖女をなんだと思っている。ラースをなんだと思っているんだ?」


 そう言いながらも蹴り続けている。にこやかに何気なく蹴っているようだが、壁が最早崩れかかっていることをみると相当の力が与えられているのだろう。

 それはそうだろう、レベル200超えのオリバーの蹴りだ。いくら魔導師だからといっても侮れない。


 動かなくなったエルフの長を見てオリバーは


「シェリー、治しなさい。」


「はい。」


 寝不足で機嫌の悪いオリバーには逆らわず素直にシェリーは従う。


「『聖女の慈愛』」


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