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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
15章 コルバートの魔女

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 シェリーは訪問者であるナヴァル公爵家の人達を応接室に突っ込んで、キッチンに戻って来た。グレイもマリアに捕まらない内にダイニングに入ってきたが幾分か顔色が悪い。


「シェリー大丈夫?」


 カイルが声を掛けてきたが、出来上がった食事をカイルに渡してシェリーは言葉を返さなかった。

 シェリーの機嫌が昨日に引き続き悪い事を察したカイルはそのまま黙って、シェリーの手伝いをする事にしたようで、渡された食事をダイニングに運んで行った。


 ダイニングの方ではオルクスがグレイに話し掛けている。


「なぁ。さっき話をしていたのって鉄牙のマリアだろ?おっかないのが来たな。」


「その頃の事は母に聞いただけで直接には知らない。」


「初代傭兵団長を務めていたのは30年前の事だからグレイはまだ生まれていないのか。」


「聞いたことがあるのはワイバーンを片手で捻り潰したとか、冬眠明けのスノーベアーを血祭りに上げたとかと言うのは聞いたことがある。」


 ギラン共和国では有名な人物のようで色々逸話があるようだが、シェリーは廊下側の入り口に視線を向ける。一体何の用事があると言うのだろう。

 カイルも気がついたのか配膳を終え、廊下側の入り口に向かって行った。カイルは扉を開け


「何か用かな?」


 扉の向こうに一人立っているユーフィアに声をかけた。あの過保護な二人からどういう理由を付けて抜け出したのかはわからないが、一人でいた。ただ、ユーフィアはノックをするのを戸惑っていたのに、こちらから声を掛けてきたので、固まっていた。


「あ、えーっと・・・。」


 ユーフィアはキョロキョロと視線をさまよわせている。


「シ、シェリーさんは?」


 どうやらシェリーを探していたようだ。シェリーはもう少し待つことが出来ないのかとイライラしながらキッチンから出ていく。


「何か?」


「あ、お食事作っているところ、ごめんなさい。クストが・・・。」


 何か言いにくい事があるのか言いどもってしまった。


「師団長さんが?」


「お、お腹が空いたと・・・」


 ユーフィアは顔を真っ赤にして言葉にした。


「は?」


「失礼なことは承知の上なのだけど、クストの分も用意してくれないかしら?」


「本当に失礼ですね。師団の詰所へ行けばよろしいのでは?軍の併設の食堂がありますよね。そこで、食事をされればよろしいかと思います。食事が冷めますので私は朝食を食べます。師団長さんの分は作りません。」


「今、マリアが押さえているけれど、ここに押しかけて来そうな勢いなの。今までの嗅いだことのない美味そうな肉の匂いがすると言って。」


 確かに嗅いだことのない匂いがするだろう。なぜなら、このダイニングに充満している匂いは黒毛和牛A5ランクのステーキ肉なのだ。これは昨日、炎王との取り引きで得たもので、この世界には存在しない肉だ。

 シェリーはため息を吐き、ダイニングテーブルのところに行き、一つの皿にナイフとフォークを置き、それを持ってユーフィアのところに戻って来た。


「新年までにビデオカメラの作成の依頼と交換です。」


 シェリーはステーキ肉とビデオカメラを交換しようと取り引きを持ちかけたのだ。もちろんこのビデオカメラは年明けにある剣術大会でルークの勇姿を撮影するためのものだ。


「そ、それはマルス帝国との契約があるので・・・。」


「写し魔道絵ですよね。あのカラーテレビが出始めた時のような画質の悪い映像を魔紙に読み込ませた動画。4Kぐらいになりません?それをスクリーンに投影すれば最早別物です。」


 ユーフィアにその様なことを言って通じるのかと言えば通じる。彼女の名は謎の生命体がこの世界の為に喚んだと言った者たちの中に名前が上がっていた人物だからだ。


「どうされますか?黒毛和牛のステーキと交換です。早く決めてくれます?」


「わかりました。作ります。」


 ユーフィアは黒毛和牛100gのステーキと引き換えにビデオカメラ作成を受けた。シェリーはその言葉に頷き、皿を差し出した。

 ユーフィアが出ていったあと、席につこうとしたシェリーにカイルが話しかける。


「あれ、シェリーの分だったでしょ?焼かなくていいの?」


「別に構いません。ステーキを朝から希望されたので焼いただけで、私はいりませんから。」


 昨晩はシェリーの機嫌が悪かったので、夕食は手抜きの肉丼だったのだが、その肉も炎王からの報酬でもらった肉だったので、この世界に無い肉質だった。その肉を肉の塊で食べたいと言われたため朝からステーキになったのだ。


「じゃ、俺のをあげるね。」

「俺のもやる。」

「私のも食べてください。」

「シェリー、あーん。」


 いや、朝からそんなに肉は食べられない。


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