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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
14章 黒の国

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 シェリーは後ろに振り向き、睨みつける。


「カイルさん、どういうことですか!なぜ、私のペンダントを勝手に取ったのです!」


 カイルの手にはシェリーがいつも付けている青いペンダントがぶら下がっていた。


「今頃、怒り狂っているか、落ち込んでいるかどちらだろうね。」


 カイルからはシェリーの質問の答えではない答えが返ってきた。今頃、転移寸前で垣間見たシェリーの姿をみて彼はどういう態度をとっているのだろうかと言っているのだ。


「理由を」


「きっとシェリーがどういう対応しても、彼は遅かれ早かれシェリーにたどり着くと思うよ。この魔道具あまり効いていなかったみたいだし、それに彼のジレンマが俺にはよくわかるからね。」


 そう、カイルもシェリーが番だとわかる前によく感じていた違和感だった。もどかしい、己が己では無いように感じると。


「ちっ。」


 シェリーは舌打ちをしながらペンダントをカイルから取り上げる。炎国の王太子に対してこのペンダントがなぜかあまり意味をなしていないことはわかっていた。


 ペンダントをつけて廊下側の扉の前に立ち、ノブに手を掛けたまま動かない。いつか見たシェリーの姿だ。扉を開け、魔術を放ち再び扉を閉めた。

 断末魔の叫び声が屋敷中に響いている。数日しか屋敷を空けていなかったが、日々始末しないとオリバーが作り出したモノが屋敷中を徘徊するらしい。


 自分の部屋に戻る為に二階に上がろうとしていたシェリーは玄関の扉を勢いよく叩く音に足止めをされた。


 帰ってきたばかりだというのに、一体誰が訪ねてきたのだ。シェリーは苛つきながら、玄関に向かい扉を開けた。

 玄関の前に立って扉を叩き続けていたのは薄い青色の髪に同じ色の翼が生えている炎国の外交官の青鳥人の女性だった。


「何か?」


「お願いします。炎国にもう一度来てください。」


 思ったより炎国からの使者が早く来た。


「嫌です。」


「奥宮の被害が酷くて手がつけられないのです。」


 何の被害とは外交官の女性は言わなかったが、王太子が暴れているのだろう。


「そちらで、対処してください。炎王に頼めばいいでしょう。」


「初代様は自業自得だと言って、王后様方と避難されてしまいました。」


「炎王が言うとおり自業自得なので、私は知りません。お帰りください。」


 外交官の女性はシェリーにすがり付き


「お願いします。炎国ではあの方を止められるのは初代様だけなのです。」


「そのようなこと私には関係ありません。ああ、そろそろ陽子さんとの取り引きの時期ですよね。ついでに、陽子さんのところのSクラスの魔物を倒して、お土産にすれば、炎王も快く対処してくれるでしょう。」


「私にそんな魔物が倒せるはずないじゃないではないですか!」


「あれは放置して構わない。」


 青い鳥人の女性の後ろには転移してきた炎王が立っていた。


「しょ、初代様!しかし・・・」


「言ったはずだ自業自得だと、佐々木さんの機嫌の悪さに気づかずに、俺と同じ地雷を踏んでしまったのだからな。」


「ジ、ジライ?」


「ああ爆裂(ボム)っていうのだったか。メリナ帰るぞ。佐々木さん悪かったな。」


 炎王はそう言い残して外交官の女性を連れて帰って行った。



 その頃リビングでは


「マジで置いて行かれたじゃないか!」


 グレイがカイルに文句を言っていた。どうやらカイルはシェリーの転移に気がついていたために一人分しか展開しなかった陣に無理やり入り込んだが、隣にいたグレイとスーウェン、そして後に立っていたオルクスはシェリーに置いて行かれていた。

 今ここにいるということはスーウェンの転移で戻って来たのだろう。


「シェリーの機嫌が治らない内にルーク君の事を言われてしまったからね。」


 カイルは仕方がないと言っている。


「しかし、あいつの顔見たか?あれ、ヤバいよな。」


 シェリーが転移をした後のことをグレイは言っている。


「へぇ。そんなにヤバかったのか?俺が転移するときに見たときの顔は信じられないって感じだったが?」


「炎王も慌ててお前たちも早く帰れと言う言葉を残して、女性達を連れて転移してましたよ。」


 炎王のその言葉でスーウェンも転移をしたのだろう。


「でもなぁ。番だとわかった瞬間に目の前で消えられるのは相当きついぞ。」


 オルクスは番の存在を感じた後に何も感じ無くなってしまった虚無感は身に沁みているようだ。


「しかし、あのまま俺たちがいたら、八つ当たりされていたぞ。あいつ、俺よりレベル高そうだったし、絶対に無理だ。それとカイル。あいつを挑発しすぎだ。」


 グレイがカイルを睨みながら文句を言う。


「ああ、あれか。気に食わなかったから仕方がない。」


 シェリーはイライラと目の前の王太子に気を取られていたが、シェリーの手をニギニギしていたり(大体いつものカイルの行動なのでシェリーは気にしていない。)、髪の毛に口付けをしたり(これもいつものことなので無視をしている。)して王太子に仲の良さを見せつけていたのだ。


「確かに『俺のシェリー』発言にはイラッとしたな。」


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