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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
14章 黒の国

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 これが狂刀一歩手前の刀なのだろうか。どう見ても狂刀と言っていいのではないのだろうか。


「うるさいです。」


 シェリーはそう言いながら、刀に魔力を流し込む。シェリーの大量の魔力を流し込まれた刀は鳴くのをピタリとやめ、刀身の揺らめきも収まった。まるで、ただの黒い刀であるかのように。


「ハハハ。流石嬢ちゃんだ。ベン!用意できたか!」


 親方が声を掛けた方には、先程の大柄のベンが自分とかわらない等身大の鎧を広い広場の中央に設置していた。


「出来ました。」


 設置が終わったようで、ベンがこちらに来ながら、準備ができた事を言ってきた。


「あれで、試し斬りをしてみるといい。依頼主から重すぎて着れるかと文句があった鎧だから処分に困っていたんだ。」


「依頼主から絶対に斬れない鎧が欲しいって言われて、硬い鉱石を元に作ったんですけどね。流石に100キログラ(kg)は重すぎでしたね。」


 そう言っているベンはその100キログラ(kg)の鎧を軽々と持ち、設置をしていたはずだ。体格のいい鬼族にすれば大したことではないのだろう。


 シェリーはその斬れない鎧を前にして、ただ何も予備動作なく、右手に持った刀を左上から右下に向けて振り下ろした。

 シェリーの振り下ろした刀は硬い鉱石を元に作られたという鎧に弾かれることなく、粘土を斬るが如くに斬り落とした。


「斬れ過ぎますね。」


 2つに斬り落とされた鎧を見ながら、シェリーはそう感想を言った。


「何だ?ダメだったか?」


 親方が以外そうに尋ねる。


「いいえ。ただ、斬っている感触がないと思いまして。」


 と言いながら、シェリーは頭部の付いた上部を蹴り上げ、空中に放り出された鎧を数度斬り刀身を鞘にしまう。


「それで、これはいくらですか?」


 シェリーは親方の方を見ながら刀の値段を聞いているが、その背後には拳大の大きさに斬られた鎧だった物が、重力に逆らえずに落ちていっている。


「ドラゴンの素材はもう無いのか?できればそれがいい。」


 親方は現金ではなく素材と交換をしようと言ってきた。


「素材。というより、ドラゴンならありますが?」


 そう言ってシェリーは腰に付けてある鞄の口を開き、赤いドラゴンの頭部を掴み出した。解体をしていないドラゴンそのままならあると言っているのだ。


「おお!それと交換だ。解体はこっちでやるからいい。嬢ちゃんと取引をすると、この国にない素材が手に入るから良い。」


 親方は目を輝かせ嬉しそうにドラゴンの頭部を見ている。


 シェリーは頭部を持ったまま勢いよく手を振り上げ、ドラゴン本体を鞄から引きずり出す。広い広場の3分の1程を占める巨体が土埃を上げながら横たわった。


「嬢ちゃん。初代様を待たしちゃならんから、早く行くといい。ベン!皆を集めて解体だ!」


 親方は解体道具を取りに行くのだろうか、倉庫の中に戻って行った。


「なぁ。あのドワーフに俺の剣を作ってもらうことはできるか?」


 ここまで何も話さずに見ていたオルクスがシェリーに聞いてきた。


「気に入られれば、作ってもらえるかもしれませんが、今はドラゴンの解体のことで頭がいっぱいだと思うので、聞く耳はないと思います。突然どうしましたか?」


「あのドワーフは有名な鍛冶屋のファブロだろ?」


 シェリーは腕のいい鍛冶職人を炎王から紹介されただけで、彼がどういう人物かは知らない。


「有名かどうかは知りませんが、確かにファブロさんです。それがどうしましたか?」


「後でまたここに来ていいか?」


「それはご自由にどうぞ。」


 シェリーは一々そのような事を自分に聞かなくても好きにすればいいと言いている。しかし、その自由にという言葉は共に行動をしなくてもいいと言っているのだ。


「・・・その言い方だと俺が置いて行かれそうなんだが?」


 オルクスはシェリーの言葉の意味を正確に把握していた。


「はぁ。先程、あとでこの辺りの店に寄りますと言いましたよね。その間は自由にしてもらって構いません。別にギラン共和国に向かう商船は数日置きに出ていますので、問題ないでしょう。」


 炎国は島国であるため、転移が使えない者たちは船で行き来するしかない国だ。なので、商船として数日置きに出入りする船があるだけで、一般人が使用する客船などの定期便は存在しないのだ。


「問題あるから。俺を置いて帰るなよ。」


「俺も興味があるからオルクスに付いて行っていいか?」


 グレイもドワーフの作る剣に興味があるようだ。


「ご自由にどうぞ。」


「・・・シェリー、置いて帰ったら叔父上を連れて戻るからな。」


 グレイはもし置いて帰れば、シェリーが苦手意識を持っているオーウィルディアを連れて、メイルーンに戻るとシェリーを脅す。


「・・・はぁ。そんな事をされればクソ勇者も付いてきそうなので勘弁です。私が買い物をしている間は自由行動で構いません。さっさと中央に向かいます。」


 シェリーはそう言って細い路地の中に入って行った。その後ろでは数人の男たちがドラゴンに群がり解体を始めようとしていた。


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