150 閑話3
アイラ side
注:アイラ視点の話はとある物語の根幹を中心とした話となっておりますので、王都に着いてからはさらりと流しています。少々、言葉が拙い感じですが、アイラの表現力と思っていただきたいです。
あたしはアイラ・クォード。クォード男爵の四女として生まれたの。そして、あたしは乙女ゲームのヒロインなのよ。
『ラビリンスは恋模様』っていうゲームの中身はクソゲーって言っいいほどなんだけど、絵がめっちゃ好みだったのよね。
このゲームは王立エピドシス魔術学園に突如できたダンジョンを攻略していって、攻略対象を攻略しようっていう感じなんだけど。難しすぎるのよ。そんな問題わかるか!って何度スマホをベッドに投げ捨てたか。
しかし、続編をしたければ、最初の攻略データが無いと続編が出来ないというクソ仕様。
でも、続編はしたい。友達に見せてもらった神絵を手に入れたい。オリバー・カークスの『君の瞳を桃色に染めたい』のイラスト最高ーだったの。
『ラビリンスは恋模様 1』は何とかクリアしたけど、ここまでのヒロインの情報が金髪のみで名前も分からない。続編をプレイした人のみがヒロインの情報を知ることが出来るようになっていたの。
そう、アイラ・クォード。金髪。青目。聖魔術が使えるシーラン王国の聖女。
あたしは聖女になるべく生まれて来たのよ!
しかし、続編はクソゲーから鬼畜ゲームに変わっていた。死ぬ。これでもかっていうぐらい死ぬ。黒髪の黒目の男に金髪青目の子供が殺されていくという事件を解決していく途中で死んでいく。これ、オリバーまでたどりつかなくない?
でも、ルーク・カークスのデータを持っていないと、オリバーまでたどりつかないのよ。
狐獣人の第2王子だと王妃ルートだし、ウサギ獣人だと公爵夫人だし、蛇人だと何故か他国に移住している。黒髪の人族だと、冒険者として旅にでる。ルーク・カークスは心中している。このルークルートで唯一生き延びる方法がオリバー・カークスルートに入ることらしいけど、分岐までにゲームオーバー。
だから、あたしはここでは間違わないからね。ルーク・カークスルートはなし。絶対無い。
狐かウサギか蛇だよね。冒険者は大変そうだからダメ。でも、大団円だととても凄いことになるらしい。興味はある。
この男爵家で出てくるご飯が美味しくない。田舎だからかもしれないけど、いも、イモ、芋しか出てこない。もう、見るのも嫌。
貴族は12歳になると教会で魔力を測ってもらえるの、それで聖女になれるのだけど、それまでは親元で暮らさないと孤児扱いにされると聞いたから12歳まで我慢してあげるわ。
見ていなさい。12歳になったら都会に行って美味しいもの食べて、イケメンを捕まえてやるんだから。
結局、13歳で教会で魔力量を測りに行くことになった。あたしは12歳になったら直ぐに教会に行くと思っていたのに、2日経って、6日経って、1週間たっても行かないから両親に聞いてみた。
普通は魔力量を測ってもらわないらしい。よっぽど魔力が溢れている人や軍属する人が測るらしい。後は、跡継ぎの者のみ、なぜなら教会に多額の寄付金を払わなければならないらしく、こんな田舎の男爵でしかない両親はそんな多額の金を用意を出来ないと言われた。
あたしはごねた、大いにごねた。それで1年後、やっと教会に行って聖魔術が使えるということを証明できた。教会にいるエルフは顔はいいんだけど、何かと態度が冷たいのよね。
でもこれで2年後に王立エピドシス魔術学園に行くことができ、攻略対象と会うことができるわ。
その数日後、厳つい感じの人達が来て、王都に来てほしいと言われたので、答えはもちろん。
「いいわ。その代わり生活の保証をしてよね。美味しい物も、きれいな服も用意してよね。」
行ってあげるんだから、それぐらいは国で用意してくれるわよね。両親はと言うと何故かホッとした感じで、あたしの荷物を渡してきた。何それ、ここは泣いて別れを惜しむところじゃないの?
王都に着いたけど、確かにきれいな服にはなったけど、教会の人達が着ている服じゃない!もっと可愛い服を用意でいないの?
食事も美味しくない。
確かに芋地獄から解放されたけれど、このお肉は何の肉なの?硬すぎて噛んでも噛んでもゴムみたいなんだけど、パンも机を叩いて音が出るパンってなに?これは食べられるの?スープに付けて食べろって?そもそも、手でちぎれないなんだけど?スープも塩味で出汁の味なんて全くしないし、美味しくない。
はぁ。王都と言ってもあんまり変わらないじゃない。イケメンに期待していたけど、周りは女性のエルフばっかり、それも鼻で笑って馬鹿にしてくる。
昨日、厳つい感じの人がやってきて、スライム討伐に行って欲しいと言ってきた。
はぁ?この前、どこぞの村人の治療って言っていたじゃない。まぁ。まだ治癒魔法が使えないから助かったけどね。
スライムと言えば青色のゼリー状の物体に、にやけた顔があるやつだよね。そんなの簡単じゃん。ゲームの始めの方に出てくるモンスターだよね。楽勝楽勝。
スライム討伐の場所に行くまでに色々問題があったけど、ちゃんと目的地に着いたわ。
あのエルフの女どもは『こんな馬車で行くなんてバカですか。』なんて言ってきたけど。
馬車で行かないとどうやって行くのよ。車もないって言っていたし。王都に来たときも窓を目隠しされていたけど馬車だったし、でも、こんなに揺れた記憶はないけど、きっと教会の馬車が古いのよね。
扉が開いたので降りようとしたら、足が引っかかってしまった。なんで、誰も助けてくれないのよ。
顔を上げればそこにはイケメン達がたくさんいた。これがあたしの護衛なのね。聖女のあたしってやっぱり大切だよね。
今思ったけど、攻略対象達よりこっちのイケメン達の方が良くない?やっぱ、ヒロインはこうじゃなくっちゃ。
でも、ここから何かがおかしくなり始めた。今までも自由に移動は出来なかったけれど、部屋に閉じ込められてしまった。
絶対にあのブサイクな女が何かを言ったに違いない。
あの女を見ていると前世で口うるさく仕事をしろと言ってくる先輩面していた女を思い出す。そんな沢山の仕事ができるはずないじゃない。馬鹿じゃないの。だから、罰があたって病気で死んだけどね。本当に清々した。あの女が居なくなって主任には媚を売っとけば仕事なんて楽勝だったし、でも主任の奥さんに刺されてしまうなんて、ついてなかった。
ヒロインとなれば何でもあたしの思う通りになるはずなのに、何故、あたしはこの気味の悪い男に捕まっているの。怖い。怖い。怖い。
何を間違った?ゲームはまだ始まっていないはずなのに、何でバットエンドになっているの?
何が悪かった?痛い。痛い。イタイ。
やめて!もう、やめて・・・。
『金髪の少女は学園の正門の前で大きな校舎に圧倒されながら歩いていた。
「今日からここが私の通う魔術学園なのね。」
今日から親元を離れて初めて一人の生活が始まる。ドキドキとワクワクが合わさった緊張感で胸がいっぱいだ。
呆けた顔で校舎を見ていたため、前を行く人物に気づかずにぶつかって倒れてしまった。
「大丈夫?今度はよそ見をせずに前を見て歩こうね。」
目の前には金髪碧眼の狐獣人の男子生徒が手を差し伸べてくれていた。』
あ、選択肢を間違えていた。
________________
補足1:オリバーの『君の瞳を桃色に染めたい』イベントの後は、きっと物理的に目の色を変えられていたことでしょう。そして、恐ろしいことになっていました。
補足2:このアイラが活躍するはずだった2年後の話を『乙女ゲームの世界じゃないの?』で短編として書いています。
主人公が消えた乙女ゲームはどうなったか・・・。




